これまで数多くのクルマが世に送り出されてきたが、その1台1台に様々な苦労や葛藤があったはず。今回は「ニューモデル速報 第53弾 新型セドリック/グロリアのすべて」から、開発時の苦労を振り返ってみよう。REPORT:ニューモデル速報編集部
新型セドリック/グロリアの開発を率いることになる三坂泰彦(主管)は、販売企画部(当時)に勤務し、ディーラーから上がってくるクルマに対する要求をまとめて開発部門に伝達する立場にあった。しかし、あまりにも注文をつけるため、スカイラインの開発で有名な桜井真一郎から「それなら自分でやってみたらどうなんだい」と冗談を言われたこともあったという。
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そんなある日、上司に呼ばれた。人事異動だと予想し「ディーラーに出るんなら近い方がいいなぁ」と思っていたが、まさかの乗用車両開発担当の主管を命じられた。昭和60年1月のことだった。
三坂は、これまでのセドリック/グロリアが主張してきた、重厚で豪華な日本を代表する高級車というイメージを一新し、主役となる4ドアハードトップは躍動的でスポーツマインドを持ったものにしたかったという。
着任の直前、ハードドップのスタイリングを従来の感覚を踏襲した大きく見せる印象の強いもので新鮮味に欠けるとして、デザイナーに「クルマ本来の姿を考えてみると、止まっている時に立派に見えることじゃない。動いている時に美しくなくてはいけないんじゃないか。追い越してゆく後ろ姿が美しいことが非常に大切である」とし、ダイナミックで躍動的で美しさを持つものを作って欲しいと提案した。すでに社長の承認を得ていたにも関わらず……。
そのほかにも、これまで高級路線を打ち出していたが、実際に大企業の公用車として使われるのは全体の6%以下と少ない一方で、30~40代のオーナーが多いことや、約2割がサラリーマンであることに着目し、自分で運転することが楽しいと強調した方が多くの人に喜ばれるはずと考えた。
その結果、セドリック/グロリアのメカニズムには、日本初のV6ツインカムターボエンジンや低回転と高回転で切り替わるマフラー、新方式のエアサスが与えられた。また、全車種の後輪に独立懸架を採用したのだが、これは計画の初期にはなかった案であり、役員会からは開発の必要性に対する疑問が挙がったという。しかし、三坂はオーナーが自分で操縦して楽しく走るには良い足回りが必要だと説得した。
これまでクルマの開発にノータッチだった三坂だが、開発を担当する前に行なっていた市場調査から、そこで得られるデータは過去の状態を語るにすぎず、新しい商品を作る時には参考にはなるが全てではないことを知っていた。新製品を魅力的に感じてもらうためには、ユーザーの生の気持ちを開発陣が把握しなければならないと考えていた。
そこで、社内の各部署を横断して集めたメンバーで「セドリック/グロリア委員会」を結成し、商品力小委員会では設計や実験の担当者に直接ユーザーの家を訪問させてクルマについて聞き出させた。しかも、他社のクルマを持っている人の家に、飛び込みで。難しかったが、その代わりに勉強になることがたくさんあったという。
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みんなのコメント
確かに財政的には厳しい状況なんだろうけど、だからと言ってこのままでは上がらないでしょう。
今の日産にはときめかない。