■「エンジンブレーキ」って一体何?
春になると景勝地や観光地にクルマで出掛ける機会が増えるでしょう。そして、景色が良い景勝地などはたいてい高地にあって、行くまでの道中は山道を走ることが多いものです。アップダウンが激しくクネクネと曲がっており、普段は平坦な舗装路しか走っていない人にとっては運転に気を遣うものです。
走り慣れていない山道では、とくに下りはフットブレーキを多用しがちになります。全体の9割以上がATという日本では「AT限定免許」を取得した人も多く、「速度を落とす=フットブレーキを踏む」としか認識していない人もいるようです。
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しかし高低差のある山道やワインディング路においては、フットブレーキを多用しすぎることでブレーキが熱を持ち、必要な制動力が発揮できなくなるトラブルが発生しやすくなってしまうのです。
そこで必要なのは「エンジンブレーキ(エンブレ)」です。どうやったらエンジンブレーキを活用できるのでしょうか。
エンジンブレーキとは、エンジンの抵抗をうまく活用した速度調整のテクニックのひとつです。教習所でも「下り坂では積極的にエンジンブレーキを活用しましょう」と教わったかと思います。
クルマは、エンジン(最近ではモーターも)の回転数とトランスミッション(変速装置)によって伝達される駆動力で、タイヤを回しています。
上り坂でアクセルを緩めれば重力によって速度は落ちますが、下り坂になると状況は逆転し、エンジンとトランスミッションが生み出す駆動力以上にタイヤが回転してしまうことがあります。
そこでアクセルを離すと、エンジンとトランスミッションが「我々が出力した速度より回っていますね」と抵抗を生み出し、ブレーキを使わなくても減速することができます。これがエンジンブレーキです。
最近のハイブリッド車やEVなどは、パワーユニットがエンジンではなくモーターとなっており、この抵抗する力を発電にも活用しています(回生ブレーキ)。ハイブリッドやEVなどもアクセルから足を離すとグンと速度が落ちるのも「エンジンブレーキ」と同じ原理が働いているわけです。
エンジンブレーキを使うことのメリットはいくつか考えられます。そのあたりを都内のスポーツカー専門店スタッフのK氏に解説してもらいました。
「エンジンブレーキは、下り坂での有効性はもちろん、スポーツ走行でも欠かせないものです。
特にサーキットなどではいかにコーナーを攻めて、速度を落とさずにストレートの速度に繋げていくか、コンマ1秒を争う状況では最低限のブレーキで周回するかが重要ですので、エンジンブレーキを活用するのが当たり前になっています」
ほかのメリットとしては、エンジンブレーキを活用することで、フットブレーキへの高負荷を抑制させつつ、速度コントロールできるということがあります。
これによりブレーキの多用で起こる「フェード現象」や「ベーパーロック現象」などのトラブルも抑制できるといいます。
現在のクルマは油圧式ブレーキが主流で、ブレーキペダルを踏むと「ブレーキフルード」と呼ばれる液体を介してブレーキ内のピストンに力が伝わって「ブレーキパッド」を動かし、タイヤと一緒に回っている「ディスクローター」を挟んで摩擦力で制動させる仕組みになっています。
ただし、フットブレーキを多用し続けているとブレーキパッドが高熱になり、摩擦剤の熱分解で発生したガスが干渉してブレーキがきかなくなるフェード現象や、ブレーキの摩擦熱でブレーキフルードが沸騰し気泡が発生することで油圧がうまくかからず、ブレーキがきかなくなるベーパーロック現象などのトラブルが発生してしまうのです。
だからこそブレーキの摩擦力だけでなくエンジン(パワーユニット)の抵抗を上手に使うことが、安全な走行に欠かせないといいます。
■MTモードを使ってエンジンブレーキをかける方法とは?
スポーツ走行でも有効なエンジンブレーキですが、やはり一般的には下り坂での使用がメインとなるでしょう。ましてやAT車ではどのように使えば良いのでしょうか。
「MT車を運転できる人はご存知だとは思いますが、通常下り坂では少し低めのギアで走行してエンジンブレーキを活用しています。
ところがAT車だと『Dレンジ』に入れたまま走行し続けている人が多く、加速するにつれてどんどんシフトアップしてしまいます。
最近のATは進化しているので、かなり自動でエンジンブレーキをかけてくれますが、それでもフットブレーキに頼り過ぎてしまう傾向があるようです」(スポーツカー専門店スタッフ)
そこで活用したいのが「MTモード」。最近のATの多くに装備されている機能です。
「現在のATはMTモードが進化しより細かな制御ができるのですから、使用しないのはもったいないです。
下り坂が続くシチュエーションでこそ積極的にMTモードを活用し、下り坂の傾斜やカーブの曲がり具合などに応じて適切なエンジブレーキがきくギアまでシフトダウンしてください。
スポーツ走行はもちろんですが、一般道でも必要に応じてMTモードを用いれば、エンジンブレーキを上手に活用できると思います」(スポーツカー専門店スタッフ)
また、速度を落とそうとアクセルから足を離してしまうとトラクションがうまくかかっていないため、クルマは不安定な状態になります。
そんな状態では下り坂のコーナーで旋回してもうまく曲がらず、慌ててフットブレーキを使ってさらにクルマの挙動が乱れる原因にもなりかねません。
「少し低いギアを選びエンジンブレーキを活用しつつ、適度にトラクションをかけ続けることで、クルマの挙動は安定します。
このテクニックは首都高のようなコーナーの多い高速道路(有料道路)でも非常に有効ですので、積極的に活用してほしいです」(スポーツカー専門店スタッフ)
※ ※ ※
AT車であってもシフトレバーを「L」や「2」といった低いギアに落としてエンジンブレーキをきかせることもできますが、宝の持ち腐れになっているMTモードを上手に活用するのが良さそうです。
MTモードは、Dレンジに入っているシフトレバーを横に倒して前後に動かすとシフトアップ・シフトダウンができるほか、車種によってはハンドルの奥にパドルシフトが付いており、右と左でシフトアップ・シフトダウンを操作することが可能です。
AT車でもエンジンブレーキを積極的に活用することで、走りにメリハリが生まれ、安全な走行ができるのではないでしょうか。
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みんなのコメント
「ATのDの下(2、1、Sレンジなど)はどんなときに使うの?」
下手したらそんな人が多いんじゃないかな?