2度のイベント落選をバネに車幅1930mmのワンオフフェンダーを製作。深リムを極めた実用カスタム
雪山にも行けて普段使いもできるクルマという条件を満たしたのが、300台限定のGDB型スバル「インプレッサRA-R」だった。当初は家族の足としてノーマルで乗っていたが、妻の専用車導入により制約が消滅する。イベントでの落選をバネに片側90mmのワンオフフェンダーを製作し、深リムを収める圧倒的なワイドボディへと進化させた中村さんのカスタムの軌跡を追う。
車内に自作の8点式ロールバーを溶接。10年かけて日産「スカイライン」を北米仕様へ化けさせたオーナーの本気度
雪道も普段使いもこなせる4WDとして限定300台のRA-Rを選ぶ
「1年間、どこでも普通に乗れるクルマが欲しかったんです」
中村さんが2007年式のGDBインプレッサを選んだ理由は意外なほど現実的だ。もともとFRやFF車にも乗ってきたが、冬になれば雪山へスノーボードに出かける。次の愛車に求めた条件は、雪山にも普通に行けることだった。
奥さんと相談しながら選んだのが4WDのインプレッサだ。雪道を走れる、普段の足としても使える、そして走りも楽しめる。条件にドンピシャだったのが、300台限定で生産されたGDB最終型のRA-Rだった。納車から約2年間はほぼ完全なノーマル状態で使用した。
家族の足から一転! 奥さんの「もう嫌」から始まったカスタム熱
雪山へも通い、日常の足としても乗っていたが、7~8年目あたりで状況が変わる。奥さんから不意に「もうこのクルマに乗るのは嫌」と言われてしまったのだ。車高調での低さやスポーツシートの乗り心地なのかは真偽不明だが、奥さん用に軽自動車を購入することになった。
つまり、インプレッサにかかっていた家族の足としての制限がなくなったのだ。「じゃあ、いじろうかなって」と笑うように、ここから本格的なカスタムがスタートする。
スタンスネーション落選をきっかけにカスタムへ本格的にのめり込む
当初のプランは至って控えめで、ホイールを交換してサイドステップを変更する程度だった。
ところが2015年頃、行きつけのショップで他のユーザーがスタンスネーションにエントリーする話を耳にする。「面白そうだなと思って自分もエントリーしてみたんですが選考落ち」という結果だった。しかし諦めるどころか逆に火がつき、ギャラリーとして会場へ足を運ぶ。
実際にエントリー車を目の当たりにして、自分に何が足りないかを体感した。「かなり影響を受けました。自分のクルマもここに並べたいって思うようになりましたね」。そして前後バンパーを社外品へ変更するも、ふたたび落選する。「どうすれば選ばれるんだろう?」。そこで導き出した答えが、「他にないクルマを作る」だった。
9カ月をかけて片側90mmワイドのワンオフフェンダーを製作する
最大のポイントとなったのが、ワンオフ製作のオーバーフェンダーだ。製作期間は約9カ月におよぶ。左右ともに約90mmワイド化し、完成した車幅は1930mmだ。GDBインプレッサとしてはもはや別物ともいえる、迫力のワイドボディへと姿を変えた。
「真似されたくないんですよ。一品モノが好きなので」
そもそもオーバーフェンダーを作った理由には、過去の愛車だったS13シルビアも関係している。「昔S13に乗っていて、深リムを履きたかったんです。でも純正フェンダーだとそこまで深いリムは履けなかった」。
当時から抱いていた深リムへの憧れが、今ならできると背中を押した。インプレッサといえば、スポーツ系1ピースを合わせるのが一般的だ。ならば逆に誰もやっていない方向へ振ってみる。その答えが極太の深リムを飲み込むワイドフェンダーだった。「インプレッサで深リムを履くイメージってあまりないと思うので」。
結果、現在の足元に収まるのはRAYS VOLK RACING 21Cだ。サイズは18×11.5J インセットマイナス20である。GDBのボディから想像する以上の極太サイズをワンオフフェンダーで包み込み、普通じゃないRA-Rが完成した。
ワイドだけど、やり過ぎには見せたくない
ワンオフフェンダーだけを見るとかなり攻めた仕様だが、中村さんがこだわったのはただ派手にすることではない。「カスタムをしているけど、さりげなく付いているイメージで作りました」。純正フェンダー部分も加工し、ワンオフフェンダーとの干渉を避けながらホイールとのツラを追い込む。
フロントにはVOLTEXバンパーと、その下部にショップ製作によるワンオフのカーボン風フラップを追加した。サイドステップはVARIS、リアバンパーはエムスポーツ製を備える。他にもカーボンアイテムを多用しており、SEIBONボンネットやVARIS製トランクを採用した。
リアウイングはVOLTEX、ルーフもLaunスポーツ製カーボンパネル、サイドミラーもクラフトスクエアを装着するなど抜かりはない。マフラーもワンオフを備えており、純正の左シングルから左右ダブル出しへと変更している。担当したのはカスタム仲間でもある104STYLEさんだ。
車高短の弱点をアラゴスタカップで攻略
ワイドボディに11.5Jの21Cとなれば、当然車高も低い。足元にはトラスト車高調をベースにアラゴスタカップを組み合わせ、スイッチ操作で前後を約50mmリフトアップできる仕様とした。これならコンビニやガソリンスタンドなど、入口に段差がある場所でも対応できる。
「普段行かない、知らない場所でも使えるんですよ」。とはいえ導入当初はその便利さを理解していなかった。
「最初は付けているのを忘れて、ガツガツ擦ってしまって」
マフラー製作を担当した104STYLEさんから、「なんでカップを使わないの!?」と指摘されることもしばしばあったそうだ。攻めたスタイルを維持しながら普段使いも捨てない。1年中普通に乗れるクルマを求めていた中村さんらしさが表れている。
外装だけでなくインテリアにも手が入る
外装だけでなくインテリアにも手が入っている。シートはレカロSPGを左右に2脚装着した。助手席側はオークションで入手した中古品だが、そのまま取り付けるのではない。運転席側と揃えるために生地を剥がし、塗装と張り替えを行っている。
センターには純正の追加メーターを装備し、左から水温、油温、油圧、ブーストを表示する。またAiMのデジタルメーターも備えるが、「最終的にエンジンとCPをやったときにリンクさせるつもりで付けています」と語る。将来的なステップアップを見据えた仕様だ。他にもイベントで見つけたGReddyのネオンLEDサインなどを飾り、遊び心を演出している。
RA-Rだから、エンジンにはまだ手を出さない
ここまでボディや足回りを進化させながら、エンジンには大きな変更を加えていない。理由は明快で、もともとRA-Rだからだ。「普通のより速いので、エンジンが逝かない限りは触らなくてもいいかなと思っています」。インタークーラーやラジエター、マフラーなどは交換済みだが、CPはノーマルのままだ。
そのため「逆にデチューンになっているかもしれない」という状態である。将来的には改善することも視野に入れている。ただ中村さんが欲しいのは、単純な最高速やカッ飛ばすためのパワーではない。「カッ飛ばすというより、瞬時のチカラが欲しいんです」。その瞬時の力を持っていることこそ、RA-Rを気に入っている理由でもある。
落選から始まった、アワードへの道
9カ月をかけて作り上げたワンオフフェンダーに、ボンネットとトランクをカーボン化した。ボディラインを大幅に変更し、再び挑んだスタンスネーション。今度は見事選考を通過し、しかも初エントリーでアワードまで獲得してしまった。
二度落選したクルマが、ワンオフ製作を経て選ばれる側へと変貌した瞬間だった。そこからさまざまなイベントへ積極的にエントリーを重ねて現在に至っている。今後について聞いてみると……。
「お金との相談ですね。もっと進化させたいです。自分が納得するまでやりたいんですけど、そうすると尽きないかもしれません」
落選から始まったカスタムの道は、これからも終わることなく続いていく。
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みんなのコメント
「さりげなく」という言葉の意味がどうも一般的な日本人とは違うようだ