YMライフハック研究所
このクルマの正体を一目で言い当てられたとしたら、相当な目利きに違いありません。一見すると、有機的な曲線と格子のグリルはピニンファリーナのフェラーリを思わせます。リヤに目を転じれば、スラントするテールエンドやトランクあたりにはオースティン・ヒーレーの面影も。そして、サイドからプロフィールを眺めると、ようやく英国の名門、MGが作ったオープン2シータースポーツ「MGA」ではないかと察しがつくはず。とはいえ、このクルマはスタイルチェンジだけでなく、トヨタの4気筒エンジンに換装という手が込んだもの。一体、どんなバックストーリーがあるのでしょう。
→【画像11枚】一目で言い当てられたら相当な目利き?! MGAスペシャルの細部を見る
●文:ヤングマシン編集部(石橋 寛) ●写真:RM Sotheby’s
アメリカは”英国車マニア”多し!
この1956年製MGAはご覧の通り左ハンドルで、最初から北米仕様だったもの。そもそも、アメリカは英国車マニアが数多く存在しており、1950年代どころか1930/1940年代の英国車も元気に走らされています。
当然、オーナーズクラブも州の数ほどあるわけで、このクルマもごたぶんに漏れず北米MGレジストレーションクラブのプレートが確認できました(#6574)。もっとも、クラブに登録されてからモディファイされたのか、その後なのかは詳らかにされていません。
オーナーは、テキサス在住の有名なカーコレクター、ジーン・ポンダー氏。ちなみに、彼はこれまで一流オークションに1000以上の出品をして、成約率100%というレアな人物。
コレクションはクルマだけに終わらず、ビンテージの自転車やジュークボックス、あるいは懐かしのピンボールマシンなど広範に及ぶもの。
なお、ポンダー・コレクションの特徴は、たいていのクルマが赤いということだそう。フェラーリやランボでオリジナルのレッドを探すのはたやすいかもれませんが、戦前のメルセデスのようなクラシックモデルとなると話は別。
そんなクルマを120台以上コレクションするとは、さすがアメリカだけにスケールが違いますね。
―― パッと見ではイタリアの小さなカロッツェリアが作ったバルケッタ風にも見えるポンダー・コレクションのMGAトヨタスペシャル。
カスタムMGAはポピュラーなのか
MGAは1955年にMGからリリースされたスポーツカーですが、シャーシは先代モデルの金属製ラダーフレームを受け継ぎ、その上にオープンボディを架装したというオールドスタイルな設計。
それゆえ、ボディだけをモディファイするのは難しいものではないようで、実際メーカー自身が空力性能を追求したルマン24時間耐久向けのボディを架装するなど、わりとポピュラーな様子。だいたい、オリジナルのグリルを外して口を開けるだけでも印象がガラリと変わるデザインですからね。
ポンダーMGAの場合はグリルどころか、ボディそのものをカスタマイズしてあります。前述のように、フェンダーから先端のヘッドライト、そこに続くボンネットラインからのグリルはあたかもフェラーリ330GTかのようです。フロントフェンダーのシャークフィン風ダクトなど、確信犯としか言えないディテールかと。
また、リヤエンドに続くボリューミーなフェンダーラインもオリジナルに見えて、微妙にラインが違う気がします。オーバーライダーがより似合うよう、ふくよかなテールへと叩き直されているのも見逃せません。
また、ハンマートーンも美しいダッシュパネルをはじめ、きれいにレザートリムがなされたインテリアなど、いくらマニアのコレクションといってもため息がもれるほどの出来栄え。4万1800ドル(約600万円)で落札とは、バーゲンプライス以外のなにものでもないでしょう。
―― このアングルになってようやくMGAらしき片鱗が見えてきます。赤いボディカラーはポンダー氏のお気に入り。
―― ふくよかなフェンダーとおちょぼ口にも似た格子グリルは、ややもすればフェラーリ330GTや250GTにも見えてくるから不思議です。
―― タイヤハウス後ろのシャークフィンを模したダクトにご注目。こういう細部へのこだわりこそ、完成度を高めるものに違いありません。
トヨタの名エンジンへとスワッピング
ポンダーMGAの魅力はボディやインテリアの仕上がりにとどまりません。ボンネットの下にはBMC製Bタイプエンジンに代って、トヨタのR型エンジンが載せられているのです。
ご承知の通り、Rエンジンは1950~1990年代まで継承されたユニットで、4気筒1.5~2.4リッターが作られ、時代に合わせてOHV、SOHC、DOHCがラインナップされました。
ヘッド形状を見た限りでは2R、あるいは3Rかと思われ、オリジナルはOHV8バルブのシングルキャブ、1490ccの2Rで70ps、1897ccの3Rでは90psを発揮するもの。BMCの1.5リッターエンジンだったなら70psと2Rと同等なので、ここは3Rの可能性が高いかもしれません。
が、このトヨタエンジンをレストレーションしたのが北米屈指のトヨタファクトリー「LCエンジニアリング」と聞けば、「2Rのカリカリチューンじゃね 」との想像も膨らみます。
なにしろ、SUシングルキャブにかわってウェーバーのツインキャブですから、バイク好きのみなさんにもその性能差はおわかりでしょう。
とはいえ、ポンダー氏はこのMGAについてさほど多くを語っていません。オークションの落札者だけが、その深淵でエキサイティングな乗り味を確かめていることでしょう。
それにしても、MGAにトヨタのOHVエンジン、フェラーリ風のボディとは見習いたいほどのカスタムセンスではあります。
―― BMCのエンジンに代って、トヨタを代表する4気筒Rユニットを搭載。ヘッドの赤は後からペイントしたものと思われます。
―― ウェーバーのキャブをツインで装備となると、エンジンフィールは痛快なものになりそう。ちなみに、スペイン製の刻印が読み取れます。
―― LCエンジニアリングは北米でも指折りのトヨタファクトリー。カリッカリにチューンされている可能性アリ!
―― タンレザーのトリミング、シートの出来栄えは往時の英国車然とした素晴らしいもの。これで600万円ほどというのはお買い得でしょう。
―― エンジンの欄がトヨタスペシャルとなっているので、おそらくこのプレートは後付け。とはいえ、気分は高まりますよね。
―― フェラーリ330GTC(1966年)
たぶん、ネタ元はこちらの1966年のフェラーリ330GTCかと。フロントまわりの造形や、シャークフィンといったディテールをいただいているのでしょう。
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みんなのコメント
どう見ても330GTCには見えない。
他の方も書いてるように顔はACエースに似てますね。
フェラーリなら50年代のバルケッタ辺りでしょう。