Abarth Scorpionna Drive
アバルト スコーピオンナ ドライブ
アバルトが女性による女性のためのドライビングスクールを行なう理由
アバルトの“女子会”ドライビングスクール
アバルトはすでに2012年から日本で「アバルト ドライビング アカデミー(ADA)」というオーナー向けの運転教室を展開している。初心者向けの「Base(バーゼ)」、中級者向け「Tecnico(テクニコ)」、上級者向け「ブート キャンプ(Boot Camp)」など、クラス別に分けたユニークなレッスンを全国各地のサーキットで行なってきた。
「女子会、いらっしゃってみませんか」
かねがね女子力の低下に危機感を覚えていた私がFCAジャパンの広報からいただいた電話に取る物も取りあえずかけつけたのは、アバルトが2019年から新たに実施している「スコーピ“オンナ”・ドライブ」。これまでのADAとはひと味違う。イベント名はサソリを意味するスコーピオンとイタリア語のDONNA(ドンナ)を組み合わせた造語を冠する、女性による女性のためのドライビングスクールだ。
インスタで知って申し込む
今回体験取材に伺ったのは第2回目の「スコーピオンナ・ドライブ」で、舞台は奈良の名阪スポーツランド。ちなみに第1回目は2019年7月28日、筑波サーキットの特設コースで実施したのだが、規定枠を大きく上回る約200名の申し込みが事前にあったという。その際惜しくも抽選で外れてしまったから、今回の奈良に挑戦したという方もいらっしゃっていた。
名阪スポーツランドに集まった女性ドライバーは20人。アバルトオーナーが半分、もう半分はアバルトに興味のある方々という構成で、特設コースにはオーナー車と教習用に用意されたアバルト124スパイダーや595がずらりと並んでいる。
「インスタで通知が流れてきたから、それで申し込んだんです」
595コンペティツィオーネのオーナーの女性は、綺麗なネイルをした手元に本格的なドライビンググローブを握りしめながらそう言った。月に一度はサーキット通いをしているという。
オートバイ乗りやカート好きなど、エンスー度の高い参加者がいる一方で「サーキットに足を踏み入れるのは初めて。こういうスクールに来るのも初めて。もう、緊張しちゃって・・・」と不安げな表情を浮かべる参加者もいた。
経験も年齢も生活拠点もバラバラの参加者たちが、朝のミーティングを終える頃には長年の知人友人のように打ち解け笑いあっているのを見るにつけ、「なるほどこれが女子会のチカラか」と感心してしまう。「えーどのディーラーで買ったんですか?」「あのスポイラーとかステキですよねえ」 美味しいレストランや可愛いアクセサリーの話をしているときそのまんまの雰囲気で、アバルトやクルマの話に花を咲かせてしまうのだ。
ドリフトの元日本チャンプが先生
インストラクターを務めるのはドリフト競技の元日本チャンプ、石川沙織選手をはじめ、石川愛選手、村里早織選手の3ドライバー。こぼれるような笑顔のしなやかで優しい先生方だが、ドリフトのデモランで見せた二枚目っぷりには参加者から黄色い声があがった。
レッスンは基本的に午前、午後のジムカーナ走行を通してクルマの基本特性を学び取るというプログラム。まずはコクピットドリルからスタートした。正しいドライビングポジションの取り方、シフトチェンジのタイミング、ブレーキの踏み方など説明は微に入り細をうがつもの。
「これは走行モードを切り替えるスイッチ、いわば“やる気スイッチ”です」
アバルトに搭載するSPORTモードとはオーバーブーストのロックが解除されて最大トルクが20Nmアップし、スロットル開度に対するエンジンレスポンスも鋭くなってESCの介入も遅くなるプログラム変更機能だが、その説明もじつに分かりやすい。
女性の方が上達が早い
コクピットドリルの後はコースウォークを行って経路の確認。1周30秒前後のコース設定で、パイロンタッチは+2秒、ミスコースは+5秒、コースはみ出しは+2秒とのペナルティ説明に「大丈夫かなぁ」と不安の声がぼつぼつ漏れ出す。
走行は助手席にインストラクターが乗った状態で行ない、操舵タイミングやペダルの踏み込み量、視線の運びに至るまで逐一アドバイスを受けながらタイムアタックに挑んでいく。
「女性は素直にこちらのアドバイスを聞いてくれるので、伸びしろも大きい。質問もどんどんしてくださるし、お喋りを通じてどんどん理解が深まっていくんです」
りんごちゃんの愛称で呼ばれる石川選手が説明する。
「サーキットで安全に走れるようになると、普段の運転も丁寧になるんですよ」
りんご先生の言葉とおり、第1スティントでは毎月サーキットに通うオーナードライバーの方とスクール初心者の方との間で10秒以上のギャップがついたのだが、このタイム差がスティントのたびに面白いほど縮まっていく。
クルマ談義に自動車用語は必要ない
会場の雰囲気はとにかく明るい。アグレッシブな走りには「すごーい」と歓声があがり、まだまだ行けそうなドライバーには「もっと行けるよ!」と声援が飛ぶ。タイムが上がれば「超楽しい」し、ニコニコ笑顔で悔しがる姿に「超カワイイ」。
クルマ愛好家の男性陣にしてみたら、自動車用語のボキャブラリーはたしかに少ないかもしれない。でも感性に差は無いのだとしみじみ思う。「595と乗り比べてみると、124の方がオートバイに近い気がした」「ステアリングは切るより戻すときのほうが難しい」「595は抑え込む感じ。124はヒラヒラ舞うような感じ」 まさしくクルマ談義である。
この日最後のスティント。荷重移動を上手に使いながら快音轟かせてアグレッシブに走る124の姿に、あれ?と思った。取っていたメモを見返したらやっぱりそうだ。サーキットもスクールも初めて、1度目の走行枠でおずおずこわごわ手探りで運転していた124の彼女が見違えるみたいに走っている。
レッスン後に行われたインストラクターによるドリフトデモの同乗走行では、たぶん一番“同乗慣れ”している私でさえアシストグリップ握りっぱなしでぎゃあぎゃあ騒いでいたのに、124の彼女はスマホ片手に先生のドラテクを余裕たっぷりに撮影していた。女性は変わる。女性は強い。
アバルト女子のポテンシャル
「スポーツカーを作って売るメーカーには責任があるんです」
世界に名だたる高性能モデルを作る名門メーカーがオーナー向けに実施しているドライビングスクールの取材へ行ったとき、だだっ広いテストコースの一角でそのエンジニアは言った。安全で速く楽しく走れるクルマを作るのは当たり前。そのクルマを安全に速く楽しむための場所と機会と運転技術を提供することまでが我々の仕事なのです、と。
いま、あらゆるメーカーが世界中でドライビングスクールを実施している。メーカー別に個性や雰囲気はとりどりだけど、どのスクールにもピリリとした緊張感と非日常的な高揚感はつきもので、今回のスコーピオンナ・ドライブもそれは変わらなかった。
ただひとつ、他のイベントには無いものがある。底抜けに明るくて逞しい彼女たちの笑顔だ。
マリア・テレーザ・デ・フィリッピス、レラ・ロンバルディ、ディビナ・カリカにエリザベス・ジュネック。ミシェル・ムートン、アンヌ・ドゥ・ロシュシアール・ユゼス侯爵夫人、ヴィオレット・モリス、ダニカ・パトリック、ジョバンナ・アマティ。私が幼少の頃から憧れに憧れた女性ドライバーは数限りない。食い入るように見つめた雑誌のページの中にいた、彼女たちの明るくて逞しい笑顔を思い出した。
アバルトオーナーの10%は女性が占めているという。そのパーセンテージがもっと増えたら、クルマの世界はきっともっと明るくなるはずだ。
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