フルモデルチェンジしたマツダの新型「CX-5」は、完成度の高いSUVだった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがまずは車両の詳細を報告する。
新型マツダCX-5 Lの特徴
1.新たなる時代の幕開け2.開発コンセプト3.高い静粛性4.パワートレインの刷新とマイルドハイブリッドの恩恵5.乗り心地と操縦安定性の両立1.新たなる時代の幕開け
横浜の海風が心地よく吹き抜ける中、マツダR&Dセンター横浜にて新型マツダCX-5の公道試乗会が開催された。
初代モデルが誕生して以来、CX-5はマツダのグローバル販売台数において約28%、国内市場においても約25%を占める、まさに屋台骨とも言える絶対的な基幹車種へと成長を遂げた。
重要性は計り知れず、フルモデルチェンジにあたって開発陣が背負ったプレッシャーは想像に難くない。
しかし、目の前に姿を現した新型CX-5は、そうした重圧を微塵も感じさせないほどに堂々たる風格と、洗練された美しさを漂わせていた。
先代モデルが築き上げた輝かしい実績と高い評価を継承しつつも、マツダが掲げる「Emotional Daily Comfort SUV」の新たなコンセプトのもと、日常のあらゆるシーンにおいてドライバーと同乗者の双方に深い感動と心地よさをもたらすクルマとして、新しい次元へと進化を遂げていた。
試乗の舞台は、横浜の市街地から大黒ふ頭へといたる、多彩な路面状況と交通環境が入り混じるコース。ストップアンドゴーが頻繁に繰り返される市街地、道幅が狭く見通しの悪い裏路地、そして海風を切り裂きながら高速巡航を行う首都高速道路と、新型CX-5の真価を問うにはこれ
以上ないほどのシチュエーションかもしれない。
マツダが提唱する「人馬一体」の哲学が、この最新のSUVにおいてどのような形で具現化されているのか。期待に胸を膨らませながら、新型CX-5の運転席へと向かった。
ドアを開けた筆者を迎え入れたのは、精緻に作り込まれたインテリア空間。エンジンに火を入れる前から、このクルマが乗る者の感性に深く寄り添おうとしていることがひしひしと伝わる。マツダが長年にわたって追求し続けてきた「クルマと人との深い絆」が、新型CX-5のあらゆるディテールに宿っていた。
2.開発コンセプト
新型CX-5の開発にあたり、マツダは具体的かつ現実的なターゲットカスタマーの姿を描き出している。
それは「子育て世代」。根っからのクルマ好きでワインディングロードの走行を好む父親、子育てを機にペーパードライバーから運転を再開した母親、そして週末に家族での遠出といった、現代の日本において普遍的でありながらも、クルマに対して多様な要求を抱くファミリーの姿だ。
十分な荷室容量の確保はもちろん、子どもから大人までがストレスなく乗り降りできる乗降性の高さ、そして家族全員がくつろげる居住空間の創出が追求された。
車内のインフォテインメントシステムには、新たにGoogleを搭載。これにより、スマートフォンで日常的に使用しているYouTubeなどのアプリケーションをそのまま車両のディスプレイで楽しむことが可能となった。
さらに、小柄なドライバーでもリラックスして運転できるドライビングポジションの最適化や、手荷物を容易に取り出せるコンソールの進化など、細部にいたるまでユーザー目線での改良が施されている。日常の生活道路を使って保育園へ子供を送迎する、一見するとありふれたシーンにおいてなど、新型CX-5の真価が発揮されるかもしれない。
3.高い静粛性
クルマの快適性を語る上で、静粛性(NVH:ノイズ、バイブレーション、ハーシュネス)の向上は決して避けては通れない重要なテーマだ。新型CX-5は、本領域においても先代モデルから進化を遂げた。
開発陣が目指したのは、単に物理的な音量を下げることだけではなく、「フラットな周波数特性」だ。
車速の上昇に対して音圧がリニアに変化するよう緻密にチューニングされており、高速走行時においても不安を煽るような唐突なノイズの増大を抑え込んでいたのは印象的だった。
さらに、局所的な音の発生を防ぎ、音の到来方向を均一化し、長時間のドライブにおける乗員の疲労感を最小限に食い止める工夫も凝らされている。
具体的な風切り音対策としては、Aピラーの形状を根本から見直し、風を滑らかに沿わせることで音源となる空気の渦の発生を抑制。また、ドアミラー後方の気流の向きを整え、同様に渦の抑制に成功している。
これらの空力的なアプローチに加えて、吸遮音材の配置と材質も見直された。音の発生源と伝播経路を精緻に解析し、最も効果的に音を遮断・吸収できる部位に、従来よりもさらに高い性能を持つ新たな吸遮音材を最適に配置したという。
確かに試乗時、市街地の低速走行時から高速道路でのクルージングにいたるまで、あらゆる速度域において静粛性が高かったのは印象深い。前席と後席に座る乗員同士が、声を張り上げず自然な声のトーンで会話を楽しめ、かつ音楽の細やかなニュアンスまでもクリアに味わえ。
そして、静寂に包まれた車室内には、エンジンが発する心地よいサウンドがドライバーの意図に呼応して適度に響き渡り、走る歓びをより一層引き立ててくれる。
静粛性の高さは、同乗者への思いやりであり、プレミアムSUVと呼ぶにふさわしい上質な移動空間を新型CX-5にもたらす。
4.パワートレインの刷新とマイルドハイブリッドの恩恵
新型CX-5の走りの心臓部たるパワートレインには、先代モデルでも高い評価を得ていた2.5リッターの直列4気筒直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.5」に、新たにマイルドハイブリッドシステム(M Hybrid)が組み合わされた最新のユニットを搭載。
マイルドハイブリッド化は、単なるカタログ燃費の向上を目的としたものではなく、マツダが追い求める「人馬一体」のドライビングフィールをさらに高い次元へと引き上げるための戦略的な技術的選択だ。
モーターによるアシストは、特に発進時や低速域での加速において絶大な威力を発揮。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間から、モーターが瞬時にトルクを立ち上げ、自然吸気エンジン特有の心地よい吹け上がりと相まって、スムーズかつ力強い加速を楽しめる。
確かに交差点での発進や、ストップアンドゴーが連続する渋滞路において、走り出しの軽やかさはドライバーのストレスを軽減し、運転に対する自信と安心感を深めてくれた。
さらに、エンジンとトランスミッションの協調制御は、先代モデルよりもさらに緻密化。ドライバーのアクセル操作の意図を瞬時に読み取り、ミリ秒単位で最適なギア段とエンジントルクを選択する。
しかも加速の質が滑らかな点も印象的だ。マツダが長年にわたって磨き上げてきた内燃機関の技術と、最新の電動化技術の調和がうかがえる。
5.乗り心地と操縦安定性の両立
クルマの動的質感を決定づける重要な要素のひとつが、サスペンションを中心としたシャシー性能。
先代のCX-5は、SUVでありながらスポーティでしっかりとしたハンドリングフィールを備えていた反面、ユーザーからは「荒れた路面や継ぎ目において硬さや突き上げを感じる」「低速域でのステアリング操作が重い」などの声が一部で寄せられていたそうだ。
マツダの開発陣はこれらのフィードバックから、新型CX-5において「乗り心地」と「操縦安定性」の、相反するふたつの性能を両立させる技術的課題に挑んだ。
解決の鍵となったのが、スプリングとダンパーの役割の抜本的な再配分だ。従来の手法では、ハンドリングを向上させるためにスプリングを硬く設定し、乗り心地を確保するためにダンパーの減衰力を調整するアプローチが一般的であったが、新型では逆のアプローチが採られた。スプリングのバネレートを柔らかく設定し、路面からの衝撃をより吸収させ、荒れた路面での突き上げ感を排除したのである。
しかし、単にバネを柔らかくしただけではクルマの動きがルーズになり、操縦安定性が損なわれてしまう。ダンパーの外径サイズを従来の51mmから55mmへと大型化し、内部構造を新設計し、ダンパー性能そのものを向上させた。
理想的な減衰特性によって、ステアリングを切った瞬間にダンパーが素早くしっかりと踏ん張り、タイヤを地面に押し付ける力を確保。柔らかいスプリングでありながらも、先代と同等以上のシャープで正確なハンドリング性能を維持するのに成功したという。
実際、マンホールの段差や舗装の荒れた凹凸道であっても、乗員に伝わるショックはマイルドに丸められ、車体は常にフラットな姿勢を保ち続けようとしていた。
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