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もはや“オートマ”も風前の灯火!? 自動車から変速機が消える日はくるのか

掲載 更新 52
もはや“オートマ”も風前の灯火!? 自動車から変速機が消える日はくるのか

 現在、日本で市販されているEVにおいて、1速固定の変速機構ではないクルマは、ポルシェ タイカンのみ。

 ハイブリッド車であっても、有段トランスミッションを持つクルマはほんのひと握りで、レクサス LSやLC、クラウン(トヨタFR向けマルチステージTHS II)と、シーマ、フーガ、スカイライン(日産FR車用インテリジェントデュアルクラッチコントロールハイブリッド)といった、ごく一部の高額車に限られている。

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 クルマの電動化のなかで、存在感を失いつつあるトランスミッション。将来、ハイブリッドを含む電動車がもっと主流となったとき、トランスミッションがなくなってしまうのだろうか。

文/吉川賢一
写真/HONDA、池之平昌信、LEXUS、Porche AG

【画像ギャラリー】本稿で登場したポルシェタイカン&タイカンターボS写真20枚+α

ギア変速の必要がないモーター駆動

エンジンは回転数が低いとトルクが上がらないため、走行条件に応じた複数のギアが必要となる。モーターは、回転数がゼロから高トルクが得られるため、ギアによる変速の必要がない(写真はバッテリーEVの日産 リーフ)

 回転数をある程度上昇させないと所望のトルクが発揮できないガソリンエンジン車の場合、トルクが強く出る回転領域(トルクバンド)に入るよう、発進時や登坂時には低速のギアを使い、速度が乗り始めたら中速のギアにシフトアップ、さらに高速走行になれば高速ギアへとシフトアップが必要となる。その際、少なからず、変速ショックを伴う。

 対して、ゼロ発進時から最大トルクを発揮できるモーター駆動の場合、もっともトルクが欲しい発進時や登坂路から、市街地などの中速域、高速道路などの高速領域まで、変速をせずに走行することが容易にできる。

 これは、高速走行になるほど、必要なトルクが少なくなることが関係する。例えば、3段変速の自転車でギアを3速に入れた状態だと、ゼロ発進時よりも、スピードが乗っている時の方が、踏力は少なくて済む現象と同じだ。

 さらに、BEV(=Battery Electric Vehicle=バッテリー動力のみで駆動するEV)の場合、現在の現実的な最高速度は140km/h程度で、ガソリン車のように200m/h弱でアウトバーンをカッ飛んでいくような使い方は、電力消費が激しすぎるため、向いていない。

 BEVに向いているのは、市街地・郊外などでストップアンドゴーしながら平常走行するシーンであり、トランスミッションがなくても、実用速度領域をカバーできるようつくられているBEVに、多段トランスミッションは必要ない。

 また、「省スペースで済む(バッテリーレイアウトに使える)」、「整備がしやすい(トランスミッションの整備が不要)」というメリットもある。

 こうした背景から、当面は、国産のBEVは1速固定のものが主流となるはずだ。

HVも国産の主流は変速機「なし」 高級車はどうなる?

ホンダ フィット。ハイブリッドはトランスミッションが介在しないe:HEV。7速DCTを採用した先代モデルから刷新された

 また、ハイブリッド車のなかでも、最高速度140km/h程度を想定した、e-POWER(日産)やe:HEV(ホンダ)、THS II(トヨタ)を積んだコンパクト~ミドルクラスハイブリッド車は、有段トランスミッションになることでのデメリット(レイアウト、メンテナンス性、コスト等)を避けたいという狙いがある。

 超高速までカバーするのではなく、使われやすい速度領域を狙ったうえで商品化されている。そのため、これらのハイブリッド車においても、日本の道路事情がよほど変わらない限り、今の姿のままいくだろう。

 しかしながら、冒頭で触れたような、多段トランスミッションをもつ高級ハイブリッド車は、ちょっと事情が異なる。

 これらのクルマには、燃費向上や加速強化といったパフォーマンス以外にも、加速のサウンドやフィーリングといった、「感性」に訴えるような魅力性能を重視する必要がある。

 モーター駆動のシームレスな加速は、一度慣れると「退屈」になりがちだ。そのため、高級ハイブリッド車たちは、燃費効率と加速強さを上げながらも、如何にして、他社に対して差別化を図り、魅力として売り込むかを考え、多段トランスミッションとしているのであろう。

レクサスのマルチステージハイブリットは、10速ATを模した変則制御を行っている。高速走行時のエンジンの回転数が可能なかぎり低く抑えているため、低燃費かつ静かな走りを実現した

 トヨタ レクサスのマルチステージハイブリッドは、10速ATを模した変速制御を行っている。10速に入った後は無段変速となり、エンジンの回転数を可能な限り低く抑えるように設計されている。

 また日産の1モーター2クラッチのハイブリッドシステムも、気持ちのいい加速フィールを目指したという。この手の複雑なシステムには、コストが多くかかるが、顧客の満足度を考えると、譲れないシステムなのであろう。

 このような有段トランスミッションもつ高級ハイブリッド車は、将来的には、プラグインハイブリッド車やBEVへと置き換えられ、姿を消すかもしれないが、個人的には、メーカーエンジニア達が拘った究極のハイブリッド車たちには、生き残っていてほしいと思う。

海外のBEVに2速トランスミッション化の流行が!?

2019年に登場した、ポルシェのBEVタイカン

 ポルシェ タイカンが、業界初となる自社製「2速トランスミッション」を備えて登場したことは、ちょっとしたニュースになった。

 前述したとおり、低速から高速走行まで、モーターと1速の固定ギアで対応ができるはずだが、ポルシェによると、その狙いは、「加速の強さと最高速度を両立し、さらには航続距離を伸ばすこと」だという。

 タイカンの最高速度は260km/hにも達する(※タイカンターボS)。560kW(761ps)を発揮し、0-100km/h加速は2.8秒。まるでガソリンターボ車のようなパフォーマンスだ。

 ここまでの高性能を、他の自動車メーカーが追うとは考えにくいが、航続距離を伸ばせる可能性があるならば、導入を考える可能性は多いにありうる。

後輪のアクスル上に配置されたトランスミッションは、初期加速用の1速と、高速走行時用の2速を持つ

 実際に、ドイツの自動車サプライヤZFでは、BEV用の2速トランスミッションの開発を発表している。航続距離の延長に振ることもできるし、同等の航続距離であれば、バッテリーの小型化もできる、としている。

 問題は導入コストだが、VWグループや、ステランティスグループといった単位で導入すれば、ぐっと身近なものになるはずだ。

 こうした流れを考えると、トランスミッションは無くなってしまうことはなく、むしろ海外のBEVにおいては、採用が進んでくることも考えられる。ただ、膨大なコストがかかるため、国内メーカーがすぐに動くことは考えにくいであろう。

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