現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ユーザーには見えないクルマがほとんど! EVの「バッテリー劣化度合い」を示す「SOH」ってなに?

ここから本文です

ユーザーには見えないクルマがほとんど! EVの「バッテリー劣化度合い」を示す「SOH」ってなに?

掲載 34
ユーザーには見えないクルマがほとんど! EVの「バッテリー劣化度合い」を示す「SOH」ってなに?

重要なのは「SOC」ではなく「SOH」

EVについては、自動車好きの間でも賛否両論といった状況なのは、ご存じのとおり。そして、EVが批判される要因のほとんどは、バッテリーに充電した電力によって走るという基本的な部分に起因するものが多い。EVに対するネガティブな評価をまとめると「バッテリーが問題だ」といえるだろう。

ぶっちゃけ買ってはいけない中古EVもある! バッテリーの劣化度合いを確認する術とは?

たとえば、エンジン車や水素燃料電池車の燃料補給に比べて、EVは充電時間が長いといった意見は、現状のバッテリー性能に対する批判ともいえる。

また、ハイブリッドカー(HEV)が普及したてのころから、よくいわれてきた電動車に対する不満として、「バッテリーが劣化する」といったものがある。バッテリーが劣化すると本来の性能(航続距離や最高出力)が出ないばかりか、そのリペアには多大な費用がかかる。そのため、トータルでみると電動車は経済的でないといった批判は、ある意味で定番だ。

たしかに「HEVのバッテリーを交換したら50万円以上かかった」、「EVのバッテリーは200万円以上するから長く乗れない」といった都市伝説的ウワサを見かけることは多い。ただし、実際に何十万円、何百万円も出してバッテリーを修理したというオーナーの不満を目にすることは、ウワサを見かけるほどは多くないのも事実。

なぜなら、電動車のバッテリーは、自動車メーカーの長期保証対象となっているからだ。

メーカーや車種によって保証期間は異なるため、ご自身の愛車の保証内容については各自で確認してほしいところだが、概ね「8年・16万km・70%」というのがバッテリー保証の基準となっている。

保証期間は新車販売から8年以内、走行距離は16万km以下、そしてバッテリー容量が70%を切ると保証の対象になるというのが、多くのEVにおける保証内容となっている。

ここで覚えておきたいのは「70%」という数値が示すものだ。

日常的にEVを使っているときにパーセントで表現するのは充電率であることが多い。これは現在のバッテリー能力に対して、どれだけ充電しているかを示すもので、業界的には「State of Charge」の略称で「SOC」と表現されることが多い。

しかし、SOCの数値ではバッテリーの劣化を知ることはできない。SOCの数値は、バッテリーの電力残量を実効電力量で割ったものであり、劣化によって使える能力が落ちたことは基本的に考慮しないからだ。極論すると、劣化によってバッテリーの能力が半減した状態でも、普通充電をつないでじっくりと充電すればメーター表示のSOCにおいては100%まで充電できる。しかし、それは新車時の100%と同じ電力量が入っているという意味ではない。

そして、バッテリーの劣化度を示す基準となるのが「State of Health」の略称「SOH」である。英単語の意味からも想像できるように、SOHとはバッテリーの健全度を示すもの。その基準は、単純に満充電でどれだけ入れられるかにある。たとえば、新車時に100kWhほど充電できるバッテリーが使っていくうちにSOC100%の状態でも70kWhしか入らないようになれば、「このバッテリーのSOHは70%だね」ということができる。

メーカー保証でいうところの「70%」という数字は、保証期間や走行距離の間にSOHが70%を切るほど劣化したら、保証対応として修理しますということを意味している。

70%の性能を残しているのであれば、それなりの機能を維持しているように思えるかもしれない。しかしながら、「SOH=70%」というのは、結構なバッテリー劣化を実感できるレベルともいえる。新車時に満充電で400km走れるEVを想定したとき「SOHが70%になっても満充電で280km走れるじゃん」と思うかもしれないが、多くのEVにおいてSOCが20%を切ったあたりから走りを抑える制御が入り始める。それはSOCが低い状態でフル加速などの性能を引き出す走りをする(バッテリー的には高出力の状態)と、劣化しやすい傾向にあるからだ。

上記の例において、SOC20%以下では走行しない前提で単純計算すると、バッテリー新品時の実走行可能距離は320kmで、SOHが70%まで劣化した状態では同224kmとなる。新車時からの実際に“走れる”距離が100kmも短くなってしまったら、オーナーは劣化を実感するだろう。さらに、カタログでの航続距離スペックが180km程度のコンパクトなEVで同様の計算をすると、SOH70%では実際の使える領域では100km程度の航続性能になってしまう。ご承知のとおりカタログスペックは空調を使わず、上手に理想的な運転をしたときの航続距離であるから、リアルワールドではもっと厳しい数字になることは自明だ。

「SOH」を確認するには診断機が必要

SOHが70%を切った状態というのは、新車購入時に期待していた性能が、明らかに出ない状態であり、メーカー保証の対象となる基準になっているのは納得だろう。

余談めくが、SOCが20%以下で走らせないほうがいいのは、リチウムイオンバッテリーのライフを伸ばすためでもある。残量30%を切ったら充電するようにするといいというのはEVオーナーであれば認識しているであろうし、逆にいうと常に100%まで充電するのもバッテリーにはよくなかったりする。結局のところ、SOCが30~80%の間で使うのがベターという風にいわれることが多い。

加えて、バッテリーは急速充電を多用するほど劣化しやすい。急速充電が高出力となっているのは、時間あたりにバッテリー内部を流れる電流を増やすためだが、こうなるとバッテリー内部の温度が上がりがちで、この発熱がバッテリーの劣化を進めてしまう。急速充電につないだまま100%まで充電すると最後のほうはゆっくりとしか充電できなくなるのは、こうした劣化や、最悪の場合に起きる熱暴走を防ぐためでもある。

少なくとも現在の主流であるリチウムイオンバッテリーを搭載したEVにおいては、急速充電は80%を目安にすべきであって、どうしても100%まで充電する必要があるときは普通充電でゆっくりと入れ、発熱を抑えた充電を心がけたい。ときおり急速充電器に長時間つないで90%以上充電しようとしている人を見かけるが、時間の無駄でもあるし、時間課金制であればお金の無駄でもあるし、さらにバッテリーも傷みやすくなるしと、なにもいいことはない。

それでは、愛車のSOHを認識することはできるのだろうか。結論からいえば、標準機能としてSOHをメーター表示するようなEVは、少なくとも日本市場では見かけたことはない。正しくSOHを知るためには、正規ディーラーなどがもつ診断機をつなぐ必要がある。

そうした診断機は、車両情報を得るための国産標準コネクタである「OBD II」につなぐことが多い。グローバルな各モデルに設置が義務化されているOBD IIを利用して、そこから車両情報を得て、表示できるようなメーターやスマホアプリなどが多くのサードパーティから生まれている。そうしたEV用のアプリを使うと、SOHの数値を知ることはできるが、それがどれだけ正確かは不明であるし、メーカー保証の基準となるのは正規の診断機によるものであるため、参考にはなっても保証を要求する根拠とはなり得ないだろう。

おそらく、唯一、SOHを日常的に知ることができるのが日産のEVだ。充電率を示すメーターに12個のセグメントが並んでいる。このセグメントはSOHを目安的に示すもので、劣化が進むとひとつずつ欠けていく。そうなるとリーフオーナーのなかでは「セグ欠けが始まった」などと表現することが多い。日産EVの場合は、保証期間・走行距離内で9セグメントを割り込んだら保証対応となると定められている。ただし、必ずしも新品交換というわけではなく、9セグメント以上に復帰することが保証内容だ。

バッテリーが劣化するたびに新品交換するようでは環境負荷も少なくないし、社会全体としての経済的負担も大きい。そこでバッテリー内のセルを選別してリビルトすることがEVの運用においては重要となる。不満のない走行性能が実現されるのであれば、それでヨシとすべきなのが環境にも配慮したEVオーナーのあるべき姿といえるのかもしれない。

写真は筆者の所有していた初代リーフ(30kWh仕様)がセグ欠けした様子。その状態でも満充電での航続可能距離表示は200kmほどだったので実用性は確保されていた。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

中国の電気自動車「BYDシール」のリアルな航続距離と充電性能は? AWDモデルを長距離走行してテストした
中国の電気自動車「BYDシール」のリアルな航続距離と充電性能は? AWDモデルを長距離走行してテストした
THE EV TIMES
「EVはラジエターがないからグリルレス」→「つまり冷却が必要ない」は間違い! 電気自動車はアチコチが冷却との闘いだった
「EVはラジエターがないからグリルレス」→「つまり冷却が必要ない」は間違い! 電気自動車はアチコチが冷却との闘いだった
THE EV TIMES
EVアンチが、3月発表「トヨタ新型EV」をなぜか批判しない根本理由
EVアンチが、3月発表「トヨタ新型EV」をなぜか批判しない根本理由
Merkmal
毎日そんなに長距離乗るか? 根拠なきEVへの「航続距離の不安」は正しい知識で見直すべき
毎日そんなに長距離乗るか? 根拠なきEVへの「航続距離の不安」は正しい知識で見直すべき
THE EV TIMES
400Vが中心の電気自動車に800Vアーキテクチャー採用の流れ! そもそも電圧を倍にすると何がいいの?
400Vが中心の電気自動車に800Vアーキテクチャー採用の流れ! そもそも電圧を倍にすると何がいいの?
THE EV TIMES
クルマを横からみると「薄いタイヤ」が近ごろ増えてるけど何がいい? いわゆる「低偏平タイヤ」のメリデメとは
クルマを横からみると「薄いタイヤ」が近ごろ増えてるけど何がいい? いわゆる「低偏平タイヤ」のメリデメとは
WEB CARTOP
やるとクルマはヘタります! 長く乗りたいなら[やっちゃいけないこと]ワースト4!!
やるとクルマはヘタります! 長く乗りたいなら[やっちゃいけないこと]ワースト4!!
ベストカーWeb
スバルが「トヨタ」「レクサス」超え! 信頼性ランキング2025発表、日本車が上位独占! PHVは要注意? 最新モデルは買うな?賢い車選びを考える
スバルが「トヨタ」「レクサス」超え! 信頼性ランキング2025発表、日本車が上位独占! PHVは要注意? 最新モデルは買うな?賢い車選びを考える
Merkmal
【最新モデル試乗】ホンダCR-V e:FC EVは未来を先取り。こんなすごい技術を実用化していることに感動しました!
【最新モデル試乗】ホンダCR-V e:FC EVは未来を先取り。こんなすごい技術を実用化していることに感動しました!
カー・アンド・ドライバー
GMが右ハンドルの電気自動車SUV「リリック」を日本導入もほんの序の口! 「オプティック」「ヴィスティック」と続々続く日本侵攻から目が離せない
GMが右ハンドルの電気自動車SUV「リリック」を日本導入もほんの序の口! 「オプティック」「ヴィスティック」と続々続く日本侵攻から目が離せない
THE EV TIMES
[タイヤ]の摩耗が早い!? [トランスミッション]が不要!? [BEV]の疑問を丸ごと解決してみた
[タイヤ]の摩耗が早い!? [トランスミッション]が不要!? [BEV]の疑問を丸ごと解決してみた
ベストカーWeb
フォルクスワーゲンの車検費用を徹底解説!車種別相場と節約術
フォルクスワーゲンの車検費用を徹底解説!車種別相場と節約術
グーネット
BMWの車検費用相場は?高い理由や費用を抑えるコツ、車検業者を選ぶポイント
BMWの車検費用相場は?高い理由や費用を抑えるコツ、車検業者を選ぶポイント
グーネット
アウディの車検費用はいくら?どこで受けられる?節約術などを解説
アウディの車検費用はいくら?どこで受けられる?節約術などを解説
グーネット
実は軍用車両並みに頑丈 BMCファリーナ・シリーズ(2) 信頼できるBシリーズ・エンジン
実は軍用車両並みに頑丈 BMCファリーナ・シリーズ(2) 信頼できるBシリーズ・エンジン
AUTOCAR JAPAN
エンジン車と違ってEVはFFだのFRだのにあまり意味はなかった! 重要なのは「駆動輪」がどこかだけ
エンジン車と違ってEVはFFだのFRだのにあまり意味はなかった! 重要なのは「駆動輪」がどこかだけ
THE EV TIMES
安い軽だからしなくていいやは大間違い! 実は普通車よりもエンジンオイル交換のサイクルが短い理由とは???
安い軽だからしなくていいやは大間違い! 実は普通車よりもエンジンオイル交換のサイクルが短い理由とは???
ベストカーWeb
ランボルギーニ初のEV、980Vシステム採用へ 最高出力は2000psに達する可能性
ランボルギーニ初のEV、980Vシステム採用へ 最高出力は2000psに達する可能性
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

34件
  • yhj********
    めんどくせぇ。ガソリンの残量の方が確実。
  • kf0********
    16万キロ程度で航続距離が70%に落ちるって、内燃機関の車じゃありえない話。
    きちんとメンテしていれれば、20万キロ走ろうが燃費は大して落ちない。誤差程度か?というくらい。
    コレって、内燃機関で言うところの燃料タンクが年々ゴミで埋まって小さくなっているのと同じことでしょ。
    劣化するのは仕方がないで済む問題じゃないと思うが?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408 . 1万円 583 . 4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

12 . 7万円 450 . 0万円

中古車を検索
日産 リーフの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408 . 1万円 583 . 4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

12 . 7万円 450 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村