苦肉の策で生まれた?? 超個性派ミニバン! マツダ ビアンテが届かなかったもの【偉大な生産終了車】
2021/08/29 14:02 ベストカーWeb 14
2021/08/29 14:02 ベストカーWeb 14
毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
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しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はマツダ ビアンテ(2008-2017)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/MAZDA
【画像ギャラリー】ベースとなったプレマシーらとともに、マツダ ビアンテをギャラリーで見る(20枚)
■プレマシーベースをベースに! ビアンテ「歌舞伎顔」誕生の背景
いわゆる背の高いミニバンを持っていなかったマツダが、当時の売れ筋であった「背が高い5ナンバーミニバン」に対抗すべく作った、ロールーフミニバンの車台をベースとするハイルーフミニバン。
走りにこだわるマツダの車だけあって走行フィールは良好だったが、「本職」である他社の5ナンバーミニバンに売れ行きの面ではかなわず、マツダ自体の戦略変更もあり、1代限りで生産終了となった3列シート車。
それが、マツダ ビアンテです。
ボンゴフレンディが販売終了となって以降、マツダのミニバンはロールーフタイプのMPVとプレマシーがあるだけで、世間的な売れ筋であった日産 セレナやトヨタ ヴォクシー、ホンダ ステップワゴンのような「背が高い5ナンバーミニバン」はありませんでした。
ボンゴフレンディ(1995-2005)。全長×全幅×全高は4620×1690×1960mm
そこで作られたのが、2008年7月に登場したマツダ ビアンテ。
背が低めの乗用車であるアクセラやプレマシー用のBKプラットフォームを使いつつも、「背が高い車」であることを成立させたミニバンです。
マツダ ビアンテ。全長×全幅×全高は4715mm×1770mm×1835mm
背が高いミニバン、具体的には全高1835mmにすると決定したのはいいのですが、ビアンテに使われたプラットフォームはアクセラやプレマシー用のものでしたので、背の高さに合わせてフロア高を上げることができません。
そのため、当時のマツダ車の特徴だった逆ペンタゴン型のフロントグリルを通常よりもグッと低い位置に配し、フロント部分のフォルムを極端なくさび形にしました。
そのうえで大型の三角窓も用意することで、背が低い乗用車と同じ着座位置であっても十分な視認性が確保できるようにしたのです。
また「歌舞伎顔」と言われたヘッドランプの形状も、低いボンネットと高いルーフの違和感をなくすために生まれたデザインでした。
計3列のシートは後方へいくにしたがってヒップポイントが高くなる「シアターレイアウト」で、後席乗員にとっては視界も開放感も良好なものでしたが、これも、床面が低いプラットフォームを使わざるを得なかったことによる“苦肉の策”ではあったのです。
サイドから俯瞰したシートの様子
発売当初のパワートレインは2Lまたは2.3L直4DOHC+5速ATでしたが(※4WD車は4速AT)、2013年5月のマイナーチェンジでSKYACTIV-G 2.0+6速ATに変更されました。
そんなマツダ ビアンテはシートアレンジも多彩で、冒頭付近で申し上げたとおり、いかにもマツダ車らしい「走行フィールの良い車」でもありました。
しかしその販売は今ひとつぱっとしないまま推移し、結局は2017年9月、マツダのミニバン市場からの撤退に伴って生産を終了。翌2018年3月には販売のほうも終了となりました。
■マツダの選択「ミニバン撤退」がなくてもビアンテは生き延びたか
走りの良いミニバンであり、独特のフロントマスクは好き嫌いこそ分かれるでしょうが、なかなか個性的で意欲的なデザインであることは間違いなかったマツダ ビアンテ。
そんなビアンテが1代限りで消滅してしまった理由は、前章の最後で申し上げたとおり「マツダがミニバン市場から撤退することを決めたから」です。
トヨタや日産などと比べれば小さな自動車メーカーであるマツダは、巨大メーカーと同じようにすべてのカテゴリーの車を作るのは無理があると判断し、「選択と集中」を行うことにしました。
日本市場に特化したガラパゴス商品であるミニバンを捨て、その代わりに、世界的な成長ジャンルであるSUVと、「デザイン性」という世界共通言語に賭けたのです。
また他のSUVやハッチバックなどとは異なる「スライドドア付きのミニバン」は、どうしても工場の生産効率を下げてしまうから――という理由もあったようです。
ビアンテのベースとなったプレマシー。写真は2007年・2代目のもの。全長×全幅×全高は4505mm×1745mm×1615mm。2018年、ビアンテと同様マツダのミニバン市場からの撤退に伴い生産終了に至る
そのような理由でマツダのビアンテとプレマシーは同時期に販売終了となったわけですが……ここでひとつ想像してみたいと思います。
もしも「マツダのミニバン市場からの撤退」がなかったとしたら、ビアンテはそのまま存続できていたでしょうか?
……その答えはもちろん誰にもわかりませんが、筆者は「結局、存続はできなかったのでは?」と考えています。
その理由は、「当時のマツダは力の入れどころを間違えていた」と思っているからです。
ここまで繰り返し述べてきたとおりマツダ ビアンテは、「当時の背が高いミニバン」としては良好な走行性能を有する車でした。そのため「ミニバンはまったく好きじゃないけど、子どもが生まれたので買わざるを得ない……」みたいなタイプのユーザーには、そこそこ選ばれていました。
しかし世の中の大半の「5ナンバーサイズミニバンを購入するユーザー層」にとっては、走行性能の良さなどどうでもいい――とまでは言いませんが、少なくとも「最優先事項」ではありませんでした。
走りの質感うんぬんよりも重視したいのは「カップホルダーの数や位置」であり、「シートアレンジの容易さ」と「車内の広さおよび高さ」だったのです。
もちろんマツダも、ビアンテのそこには大いに注力したことでしょう。
しかし「そもそもプラットフォームが背の低い乗用車用だった」ということもあって、また、たぶんですがマツダのエンジニアの「走りへのこだわり」のようなものも強くあって、「カップホルダーの数や位置」的な部分がやや弱くなってしまったのです。
そこがビアンテの主な敗因であり、さらには当時のマツダのブランドイメージ(壊れそう。リセール価格が安そう)も、この車が苦戦した大きな理由のひとつではあるでしょう。
しかしその後のマツダは――みなさんご存じのとおり――選択と集中によって素晴らしいデザインとブランドイメージを手に入れ、そしてもともとあった「走りへのこだわり」もいよいよ先鋭化し、昔とはずいぶん違うイメージの自動車メーカーとして受け取られています。
3代目デミオ(2011年)。CX-5とともに、マツダのフォードからの脱却、そして技術開発ビジョン「SKYACTIV」を軸としたマツダ新時代の象徴となってゆく
そんなマツダが今後、もしもミニバンを作ることがあったなら――おそらくはビアンテよりもさらに素敵な一台になることでしょう。
■マツダ ビアンテ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4715mm×1770mm×1835mm
・ホイールベース:2850mm
・車重:1490kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1997cc
・最高出力:151ps/6000rpm
・最大トルク:19.4kgm/4100rpm
・燃費:14.8km/L(JC08モード)
・価格:256万5000円(2014年式 20S-スカイアクティブ)
【画像ギャラリー】ベースとなったプレマシーらとともに、マツダ ビアンテをギャラリーで見る(20枚)
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