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ホンダ・レーシング渡辺社長、2026年F1用PU開発”苦戦”発言の真意とは?

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ホンダ・レーシング渡辺社長、2026年F1用PU開発”苦戦”発言の真意とは?

 ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長が、2026年型のF1パワーユニット(PU)開発に「苦戦している」と語ったと、海外を中心に報じられているが、HRCの広報担当者によれば、発言の意図とは異なった意味で伝わってしまったということのようだ。

 今年のIMSA開幕戦デイトナ24時間の現場に、HRCの渡辺康治社長の姿があった。HRCは今季から、メイヤー・シャンク・レーシングの93号車をセミワークス体制で走らせており、渡辺社長もそれに帯同したという形だ。

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 そこで渡辺社長は記者団に対して、アストンマーティンとの協業が始まる2026年のPU開発について「苦戦している」と語ったと伝えられている。

 HRCの広報担当者にこの件について尋ねたところ、この件に関する問い合わせが海外からも数多く寄せられているという。しかし渡辺社長の発言の真意は、”苦労している”ということではなく、”難しい開発ではあるものの、我々はそれに挑戦している”との意味合いだったようだ。

 現在もレッドブル・パワートレインズを介してF1用PUを供給しているHRC。しかし2026年からはPUに関するレギュレーションも一新される。現在はPUの一部として組み込まれているMGU-Hが廃止されるが、エンジン(ICE)の出力と電動モーターの出力が同等となる予定だ。そしてこの2026年から、ホンダは正式にF1に復帰することになっている。

 各PUメーカーはこの2026年に向けた開発を進めている。当然ホンダ/HRCも以前から開発を進めており、実際に走り始めるまであと1年というところになった。

 なお2024年2月の段階で、HRCのPU開発を率いる角田哲史ラージ・プロジェクトリーダーは、進捗について次のように語っていた。

「勝負の期間は2026年2月にホモロゲーションを提出するまであります。そういった時間的な目線で言うと、今は2割くらいのステージですとしか言いようがありません」

「我々の開発の中でも優先順位があります。例えば、電動系は部品を作るのにも時間がかかりますし、仕様を変更するのにも時間がかかります。バッテリーパックを作る(イギリス・ミルトンキーンズの)製造ラインはレッドブルに譲渡してしまったので、我々の中でその作り方に対しても同時にケアしていかなければいけません」

「なので我々はまず電動系に力を入れ、それを確立できる見通しが見えるよう優先的にやっています。当然、ICE(内燃機関)をやらなくていいという訳にもいけません。ICEでも必要なところで手を打っています。そういったやり方で現在は準備を進めています」

 近年は”HRC製”のPUを使うレッドブルが強力なパフォーマンスを発揮しており、2026年に向けたアドバンテージがあるのではないかと見る向きもある。エンジンに関して言えば、確かに現行のレギュレーションと排気量などは同じであり、ある程度は引き継げる部分もあるかもしれない。しかし使う電力量が増えるため、エンジンの出力を発電に使わなければならなかったり、燃料流量が変更されたりと、使われ方は大きく変わるはずだ。

 一方で電動モーターやバッテリーは、出力が大きくなるため完全新設計。これが勝負の鍵を握るのは間違いなく、その開発はどのメーカーにとっても大変難しいものであることは間違いない。しかもライバルがどの程度のモノを作ってくるのか分からないため、現時点ではどのメーカーでも「開発は順調です」などとは言えないだろう。

 この取材時も含め、HRCの関係者は常々、2026年のPU開発は”簡単なことではない”と語ってきた。今回の渡辺社長のデイトナでの発言も、それと同じスタンスであったことは当然想像がつく。

 ただ渡辺社長は昨年10月、伝説的F1エンジニアであるエイドリアン・ニューウェイがレッドブルからアストンマーティンに加入することについて尋ねられた際、次のようにも語っていた。

「ニューウェイさんとはこれまでも一緒に仕事をしてきましたけど、とにかく速いマシンを作る情熱が半端ではない人です。彼らは車体を作り、我々はPUを作るというところで言えば、どうしても両立しない部分もあります。そういう時、車体としてはこうしたいから、PUとしてはこうしてくれというぶつかり合いも経験しました」

「彼がアストンに来ることで、(中略)”アストンマーティン・ホンダ”というチームが世界一になることを期待しています。多少のぶつかり合いは、覚悟の上ですよ。もちろん、ニューウェイさんとだけというわけではないですけどね」

 さらに、フェルナンド・アロンソと再び共に戦うことが決まった昨年4月の時点で、渡辺社長は次のように語っていた。アロンソと言えば、かつてマクラーレン時代にホンダのPUを「GP2エンジン」だと無線で揶揄したその人だ。

「以前彼と仕事をした時には、ホンダとしてもチームとしても、非常に厳しい状況でした。我々の歴史の中でも、特に悔しい思いをした時期でした」

「でも、あの悔しさを乗り越えることができたからこそ、我々は強くなれました。辛い経験をお互いに乗り越え、もう一度アロンソ選手と、勝利に向けて一緒に戦えるということが嬉しいです。チャンピオンを目指し、一緒に勝利できることを期待しています」

 それらの発言から渡辺社長は、厳しい開発ではあるものの、それを乗り越え、素晴らしいPUを用意するという覚悟、そして開発陣に対する自信のようなものも感じられた気がした。

 2026年型の各チームのPUが走り出すまで、あと1年あまり……一体どんな勢力図になるのだろうか。F1正式復帰を果たすホンダのPUは、他のライバルを凌駕できるだろうか?

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みんなのコメント

2件
  • bay********
    Netflixでセナのドラマとか見てもホンダF1はスゲぇなて思うよマジに!!
  • y06********
    第4期?のスーパーポジティブ発言よりは好感が持てる
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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