日産の新しい「アリアB9 e-4ORCE」は、フラッグシップモデルとして完成度の高い1台だった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
新型日産アリアB9 e-4ORCEの特徴
日産の技術力とブランドを体現する存在──新型日産アリアB9 e-4ORCE試乗記
1.魔法のようなハンドリング2.快適な乗り味3.総評1.魔法のようなハンドリング
(前のページから続く)いよいよ走りの領域に踏み込んでいく。アリアB9 e-4ORCEの動的質感は、結論から言えば、圧倒的なパフォーマンスを秘めている。
箱根のワインディングロードでも、走りは驚きだった。通常、これだけ車高が高く、かつバッテリーを搭載して重量がかさむSUVであれば、コーナリング時に大きなロール(横揺れ)やピッチング(縦揺れ)が発生するはずだ。しかしアリアは、電子制御のサスペンションや可変ダンパーといった複雑なメカニズムを搭載していないにもかかわらず、コーナリング時の姿勢変化が見事に抑え込まれている。
この精緻なハンドリングを実現している中核技術が、日産が誇る電動四輪制御技術「e-4ORCE」だ。前後のモーターと四輪のブレーキを超高精度で緻密に統合制御することで、タイヤのグリップを引き出し、ドライバーの意図した通りの走行ラインをトレースしていく。
そういえば1990年代前半、VQエンジンなどが華々しく登場したとき、日産は広告等で「100分の1秒から1000分の1秒の技術へ」と謳っていたが、モーター駆動による制御の緻密さはまさに次元が異なるレベルに達している。
登り勾配の厳しいワインディングにおいても、アクセルを踏み込んだ瞬間にシームレスなトルクが立ち上がり、重い車体を軽々と押し出していく様は圧巻。安定感と意のままに操れるハンドリングは、SUVの車型を忘れさせるほどのドライビングプレジャーを提供してくれる。
また、ブレーキのフィーリングも特筆すべき点だ。EV特有の回生ブレーキは、ともすればペダルタッチに不自然さを伴うことが多いものの、アリアのブレーキタッチはナチュラルに仕上げられている。
2.快適な乗り味
今回のマイナーチェンジにおいて日産は、日本市場の顧客の好みに合わせて、サスペンションのセッティングをより乗り心地重視へと最適化したと発表している。路面からの入力による揺れを軽減し、マイルドで上質な乗り味を実現したというが、一般道や高速道路でのクルージングにおいて効果を発揮している。
初期型のアリアが持っていたやや硬質な乗り味が影を潜め、穏やかで静粛性の高い、まさにフラッグシップにふさわしい快適な移動空間へと進化した。風切り音の抑制も見事で、高速走行時でも車内は静寂に包まれる。
しかし、日常域での乗り心地の最適化の裏返しとして、ハードなコーナリング時などは、路面追従性にわずかな心許なさを感じる場面があったのも事実。
とはいえ、これはあくまで限界領域での話であり、日常使いや常識的な範囲でのドライブにおいて不満を感じるユーザーはほぼ皆無であろう。
運転支援システムについては、新たに加減速の多い一般道でも先行車との車間を自動で保ち、停止までサポートする「インテリジェント ディスタンスコントロール」を採用、ドライバーの疲労軽減に寄与している。
さらに、日産の先進技術の代名詞とも言える「プロパイロット 2.0」の仕上がりも素晴らしい。かつて日産「スカイライン」に搭載された初期のバージョンと比較して、ハンズオフ(手放し運転)が可能になる条件が大幅に拡大されており、システムの作動切り替えも迅速かつスムーズ。高速道路での長距離移動において、これほど頼もしい機能はないだろう。
価格設定とオプション展開のあり方は気になる。試乗したB9 e-4ORCEの車両本体価格は¥8,072,900円であるが、前述した「プロパイロット 2.0」をはじめとする数々の先進・快適装備がパッケージ化されたセットオプションの価格は¥481,800と高額。これにナッパレザーシート(¥308,000)やBOSEサウンドシステム(¥132,000)、特別塗装色などを加えていくと、メーカーオプションの合計だけで¥1,238,600にも達する。日産の先進技術を牽引するフラッグシップEVであるならば、プロパイロット2.0のようなブランドの核となる安全・支援技術は、最初から標準装備化してその価値をアピールすべきではないか? オプションを積み上げなければ真の完成形にならないという販売手法は、プレミアムカーとしてのブランド力構築において再考の余地があるだろう。
3.総評
一部改良を受けた日産アリアB9 e-4ORCEは、世界に誇るべきEVだった。e-4ORCEがもたらす高いコーナリング性能と、改良によって手に入れた快適な乗り心地、そして静寂に包まれた和風モダンの室内空間は、感動に近い驚きがある。販売戦略におけるオプションの構成や、他モデルとのデザインの差別化といった課題は残されているものの、自動車としての基本性能の高さは疑いようがない。
日産のフラッグシップの未来を考えるとき、それはもはやエンジンの気筒数や排気量で語られるものではないだろう。モーターとバッテリー、そしてソフトウェアが織りなす「制御の緻密さ」と、移動空間としての「心地よさ」がいかに高度に融合しているかが、これからの高級車の新たな基準となるかもしれない。
アリアは高級車の転換期において、日産が生み出した野心作である。SUVの形態をとってはいるが、その内側には、かつてのセドリックやシーマが持っていた「時代の先端を切り拓く」というスピリッツを受け継ぐ。
今後、バッテリー技術の進化や自動運転の熟成に伴い、日産のフラッグシップ像はさらに深化していくだろう。そしてこのアリアが、その歴史における重要なマイルストーンとして語り継がれるのは間違いない。
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