地元・富士へと凱旋したトヨタGAZOO Racingの2台のGR010ハイブリッドが、予選でフロントロウをロックアウトしたWEC世界耐久選手権第5戦富士。ハイパーカー以外のクラスでも僅差のアタックが繰り広げられ、非常に見応えのある予選のセッションとなった。
そんな9月10日の予選日を終えた富士スピードウェイのパドックから、各種トピックスをお届けしよう。
予想以上にアルピーヌは速いと可夢偉。ポールラップは「もう少しプッシュできた」【WEC第5戦可夢偉&平川予選後会見】
■Dステーション、予選全タイム削除
チームWRTのロビン・フラインスは、予選でのベストラップタイムが削除され、LMP2クラスの3番手から4番手へと降格した。
このタイム削除はライブタイミングでは表示されず、セッション終了後に明らかになったもの。フラインスがターン13でイン側の縁石に接触し、出口でコース外に投げ出され(て4輪脱輪となっ)たことが原因だった。
これにより、リアルチーム・バイ・WRTの41号車が3番手グリッドへと繰り上がった。フラインスはセカンドベストタイムのおかげで、4番手にとどまっている。
ノースウエストAMRの98号車アストンマーティン・バンテージAMRは、ポール・ダラ・ラナが予選中にピットレーンの速度制限を破ったため、グリッド最後尾に回されることになった。
このカナダ人ドライバーは、60km/hの制限速度に対して62.8km/hを記録。彼には300ユーロの罰金が科され、すべてのラップタイムが抹消された。今週末の最速タイムをマークしているドライバーである、デビッド・ピタードが98号車のスタートを担当することが求められている。
また、Dステーション・レーシング777号車アストンマーティンの星野敏も、ダブルイエロー区間での減速が行われなかったとして全タイムが抹消され、グリッド最後列へと回ることが決まっている。
■帰ってきたサーキットサファリ。その活用術
土曜日の朝、フリープラクティス3回目のセッションの前には富士名物の『サーキットサファリ』が行われた。
5台のバスが富士スピードウェイを走行し、WECマシンとともに非公式のセッションを行った。バスはサーキットを2周した。
このセッションでは各チームから少なくとも1台の参加が義務付けられていたが、トヨタGAZOO Racingとプジョー・トタルエナジーズはそれぞれ2台をコースへと送り込んだ。
とりわけ、トヨタ7号車の小林可夢偉は、この12分のセッションを利用して、予選シミュレーション走行も行った。トヨタのテクニカル・ディレクターであるパスカル・バセロンは、その経緯を次のように語っている。
「ただ彼にはそれをするチャンスが巡ってきて、うまくいっただけだ。意図的にやったわけではない。我々は、どんなチャンスでも活かそうとしているのだ」
また、デンプシー・プロトン・レーシング77号車ポルシェ911 RSR-19は、このサファリの際にサスペンションに問題が生じた模様で、左リヤのボディワークが路面とホイールに擦られた状態でピットへと戻ってきている。
■LMGTEプロの戦いは“リヤ”に焦点
ポルシェGTチームの92号車ポルシェ911 RSR-19を駆るミカエル・クリステンセンは、今季のGTEプロカテゴリーにおいて、2度のポールポジションを獲得した初めてのドライバーとなった。クリステンセンは開幕戦のセブリング1000マイルレースでクラスポールを手にしている。
AFコルセ51号車フェラーリ488 GTE Evoをドライブするジェームス・カラドは、予選のアウトラップで遭遇したトラフィックに「妥協させられた」と語った。彼はこれにより、タイヤの温度のピークを逃してしまったという。カラドはLMGTEプロクラスの2番手となった。
決勝が暑く、晴れたコンディションになることが予想されることから、カラドは効果的なタイヤマネジメントの重要性を強調している。
「予想されるコンディションにおいては、タイヤ、とくにリヤタイヤが厳しく試されることになるだろう」とカラドは述べている。
■バーレーンでLMH間のBoPが調整?
トヨタのテクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロンは、ハイパーカークラスのBoP(性能調整)原則に基づいた、ル・マン・ハイパーカー(LMH)全車両(トヨタGR010ハイブリッドとプジョー9X8)における18kgの最低重量低減について、「当然のこと」と表現した。
BoPのシステムでは、補正が必要かどうかを判断するために、直近2レース分のデータが必要とされる。
「ル・マンの後に調整があった」とバセロン。
「モンツァの後に調整はない。LMHマシンの相対的なギャップは、そのままでなければならない。プジョー、グリッケンハウス、トヨタ(の間の差)は、富士では調整されていない。次の調整は(最終戦の)バーレーンで行われるはずだ」
■ロシターの行く末と“7人目”のドライバー
ジェームス・ロシターは、来シーズンもプジョーのハイパーカー・ラインアップの一員であり続けるかどうかについて「考えていない」という。
ロシターはプジョーのリザーブドライバーであったが、ケビン・マグヌッセンがF1へと移ったことにより、レースシートへの昇格を果たしていた。
ロシターは「予期していなかった機会だ」と述べた。
「でも、僕は両手でそれをつかみ取って最大限に活用している。将来的な決断については、他の人たち次第だよ」
プジョーはハイパーカープログラムに7人目のドライバーを採用しようと動いているが、それがレースシートを意味するのか、リザーブなのかは不明である。
ステランティス・モータースポーツの責任者であるジャン・マルク・フィノーは、「その(追加される)ドライバーを選び、その後にチームにとって誰がベストなのかを決めることになるが、彼らがどこに収まるのかは、まだ分からない」と述べている。
フィノーはまた、プジョーが将来的に南米でのレースを追加することを、WECに対して望んでいると示唆した。WECが最後にブラジルを訪れたのは、2014年のサンパウロ6時間レースにまで遡る。
「我々は南米が好きだし、そこはプジョーにとっても良いマーケットだ」とフィノーは述べている。
* * * * * *
決勝日となる9月11日(日)は、10時にピットレーン出口がオープンとなり、各車がグリッドへと向かう。その後、10時56分にフォーメーションラップが開始され、11時前後に6時間レースがスタートする予定だ。
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