2014年12月にダイハツからリリースされたウェイク。それまでのハイト型軽を凌駕するほどの背の高さを利用した室内空間の広さと積載量が自慢で、その全高はなんと1835mmもある。
ウェイクが発売されるまでの乗用軽記録保持車はホンダのN-BOXで1780mmだったのに、それを一気に5cm以上アップさせ登場してしまった。
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もともと背の高い軽自動車は1993年に登場したワゴンRが切り開いたジャンル。以来ムーヴ、タントなどが次々登場しマーケットを成長させてきた。
そしてホンダもこの市場に参入、背の高いN-BOXが現在も売れに売れ、2018年の累計販売台数を見ても、1~10月の時点で20万台を超えてぶっちぎりのトップ確定。
ベストカーとしては、確かに軽の室内空間や積載量が増えるならいいかな、と思うが、果たして軽の高さはどこまで高くなるのだろう?
※本稿は2014年12月のものに適宜修正を加えています
文:ベストカー編集部、片岡英明、鈴木直也、永田恵一/写真:DAHATSU、SUZUKI、HONDA、NISSAN、TOYOTA、MITSUBISHI
初出:『ベストカー』 2015年1月26日号
■軽トップの高さを誇るウェイク 操安性は大丈夫?
(TEXT/ベストカー編集部)
そもそも軽自動車のサイズ枠は道路運送車両法により決められていて、それ以上の大きさになると軽自動車としては登録できなくなる(排気量も660ccの規制がある)
〈道路運送車両法により定められた現在の軽規格(1998年10月改定)〉
●全長:3400mm以下
●全幅:1480mm以下
●全高:2000mm以下
●排気量:660cc以下
●乗車定員:4人以下
●貨物積載量:350kg以下
現在販売されている軽は全長、全幅はほぼこのサイズをめいっぱい使ったものになっていて、サイズ的に余裕のあるのは全高だけだった。
ウェイクは、まさにこの隙間を突いて室内空間の広さをアピールしている。ウェイクの室内高は1455mm。N-BOXの1400mmを5cm以上も上回る。当然軽乗用車のなかではトップの数値だ。
ただ、背を高くするということは、重心が高くなったり、横風の影響を受けるなどデメリットもある。しかしウェイクの場合は、コペンのような樹脂外板をボンネットを含むフロント周りやリアゲートなどに多用したり、基本骨格の部材を見直すことで、強度、剛性を確保しながら軽量化が図られて、重心が高くなることを防いでいる。
もちろんサスペンションにもロールを抑えるなどのチューンが施されているので、足回りが固められてガチガチというわけではない。
ベースとなったタントより全高は85mm高くなっているものの重心はわずか10mmしか高くなっていないというので納得だ。
実際乗ってみても、一般的な舗装路を走っている分には充分快適。それに着座位置が高いので気分よく運転できる。1835mmという背の高さでぜーんぜん走りには問題ないのだから、このテの背高グルマがこれからもどんどん出てくるんじゃないかと期待が膨らむばかりだ。
果たしてライバル会社からもこのテの背高グルマが出てくるのか?
3人のジャーナリストの意見を聞いてみよう。
■伸びしろは0cm/片岡英明
(TEXT/片岡英明)
日本独自のスモールモビリティが軽自動車だ。最大の特徴はボディサイズと排気量が決められていることである。
全長、全幅、全高のサイズは上の表で紹介されているとおりだが、これを超えると黄色ナンバーの特権はなくなってしまう。
軽自動車の主役は、背の高いハイトワゴンだ。全長と全幅をギリギリまで延ばしているからキャビンを広くするには高さ方向を延ばすしか方法はない。最近はハイトワゴンより背を高くして車内空間を広げたスーパーハイトワゴンも増えてきた。
N-BOXは全高が1780mm、eKスペースとデイズルークスは1775mmである。ブームの火付け役のタントは1750mmだ。そして超ウルトラスペースを売りにして登場したダイハツのウェイクは、なんと1835mmである。商用を強く意識したアトレーと40mmしか違わない。だから室内は驚くほど余裕がある。
キャビンは広く、見晴らしもいい。が、あまり背を高くすると重心が高くなり、操縦安定性が悪化する。トレッドは大幅に広げられないから横風にあおられると心配だ。足回りやボディを強化し、横滑り防止装置などで安定性を高める方法もある。が、コストがかさむ。
また、車両重量が増え、使い勝手の面でも支障が出てくるだろう。軽自動車のユーザーには女性が多いが、リアゲートが高くなることを嫌う人も少なくないはずだ。把手を工夫したり、ストラップなどを取り付ける方法もあるが、これまたコストアップになる。
それまでの生産ラインで作れないとなれば、設備投資は目玉が飛び出るほど高額だろう。ウェイクを超える高さのスーパーハイトワゴンは、当分の間、出てこないと思う。
■伸びしろはビミョ~/鈴木直也
(TEXT/鈴木直也)
軽の規格は上で紹介されているとおりだが、背の高さを売りにした初代タントが大成功をおさめたことで、全高は軽自動車に残る“最後のフロンティア”となったわけだ。
ただし、ちょっと考えればわかるとおり、1480mmという軽の最大幅では、全高を上げてゆくとどうしたってプロポーションが不安定になる。全高1750mmのタントあたりでも、縦横比は1対0.84。これを車幅1700mmの5ナンバー車にあてはめると、2mを超える背高ノッポになってしまう。常識的に考えれば、まぁこのあたりが限界と思われていたわけだ。
ところが、ダイハツはウェイクでさらに一歩踏み込んで1835mmという全高にチャレンジした。これを同じく5ナンバー車にあてはめると、ぬわんと全高2100mm! 高さはハイエースのミドルルーフで、車幅は180mmも狭いというすごいプロポーションになる。
もちろん、ダイハツだって走行安定性はちゃんと考えているから、見た目からくるイメージほど走りに不安定なところはなく、実用上不安を感じるようなことはない。
スタビの強化やダンパー径のアップなど足回りはかなり贅沢なパーツをおごっているし、重量物をうまくレイアウトするなどして重心高はタントと10mmしか違わない。そういう意味では、万全の手を打っている。
予想を裏切る大ヒットとなったタントの例もあるから、これがユーザーにどう受け止められるかは興味津々なのだが、ボク個人の感覚としては「もう限界では?」というのが正直な印象。
商用バンのハイゼットハイルーフ(1890mm)にかぎりなく近づいちゃったことで、イメージもファミリーカーというよりマルチパーパスカー。ユーザー層の広がりという点では、タントには及ばないんじゃないかと予想します。
■伸びしろは0cm/永田恵一
(TEXT/永田恵一)
「軽自動車の背はどこまで高くなるのか?」というテーマ、私は「ウェイクくらいが限界」と考えている。そう考える根拠はふたつだ。
ひとつは今クルマを選ぶ際に、特に軽自動車の場合は広さと同じくらい重要になっている燃費に対する悪影響だ。
ウェイクとタントのJC08モード燃費をNAエンジンを搭載するベーシックグレード同士で比べてみると28.0km/Lのタントに対し、ウェイクは25.4km/Lとウェイクはタントに対し約10%燃費が悪い。
この主な要因はタントに対し70kg重い990kgという車重、ファイナルギアを重量増に対応するため約6%ローギヤードにしていることが思い浮かぶが、実走行になると空気抵抗の違いも悪影響を与えることが想像できるので、モード燃費の差以上に広がると考えられる。
ふたつ目は走行性能の悪化だ。ハンドリングと乗り心地のバランスを考えてみても、ロール量が大きくなる全高の高いクルマはロール量を抑えるためスプリングを硬くせざるを得ず、良質なダンパーが必要になるなど、高い技術力が要求され、コストもかかる方向になる。
動力性能に関してもNA(自然吸気)エンジンを搭載する軽自動車の動力性能向上が目覚ましいといっても、車重が最低約1トンとなればさすがにターボが欲しくなり、これまた実質的な価格上昇につながる。加えて、ウェイクのターボ車は車重が1トンを超えており、重量税が軽でありながら1トンから1.5トンに区分されるのは考え物だ。
といったことを総合すると、ウェイクの売れ方によってフォロワーが出ることは考えられるにせよ、これ以上全高の高い軽乗用車が出ることはないと思う。
■まとめ
(TEXT/ベストカー編集部)
ウェイクが新ジャンルを切り開くのかを検証したこの企画だったが、さて2018年12月現在、主だった軽ハイトたちの全高、室内高、直近の月間販売台数、そして価格を表にしてみた(下)。
こうしてみると、ピクシスメガがウェイクをベースにしていることを考えれば、やはりウェイクの全高1835mm、室内高1445mmは出色の数字だということがわかる(人の身長の5センチ差を思い受かべてもらえれば、室内高の5センチ差の大きさがどれだけ大きいかがわかるはずだ)。
お3方のご意見、どうも否定的な印象が否めなかったが、こうしてみると、よっ! さすが! と言わざるを得ない。
とは言え、快適・利便性に富んだ室内を持っているウェイク、その「次」の登場も期待して待ちたいものだ。メーカーさん、お願いします! 頑張って!
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