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軽トラ界の革命児!!! 「ジャンボ軽トラック」はなぜ大人気となったのか?

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軽トラ界の革命児!!! 「ジャンボ軽トラック」はなぜ大人気となったのか?

 軽トラックの人気は根強いものがある。特に近年登場しているキャブが少し長い「ジャンボ」軽トラック。居住性が課題だった軽トラックで、それを解消するアイデアとしては非常に秀逸。

 スズキのスーパーキャリイ、そしてダイハツのハイゼットトラックジャンボが代表車種だ。

安い! 便利! 楽しい! 軽トラックは最高の相棒だ【クルマの達人になる】

 そんなジャンボ軽トラックが大人気で納期が一時期は10カ月なんて時期もあったという。働くクルマの筆頭だった軽トラックが、なぜこの期に及んでまた日の目を浴びているのか? 

 比較試乗をした渡辺陽一郎氏が解説します。

文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部

■規格のなかで軽トラックが進化する余地が残っていた!!

 軽トラックほど空間効率と実用性が重視されるクルマはないだろう。軽自動車だから全長は3400mm、全幅は1480mm以下に収めねばならず、その一方で1900mmを超える荷台長が求められる。

 農道などで使われるから小回りの利きも大切で、最小回転半径は4m以下に収まる。そして価格は安く抑えねばならない。

 いわば薄利多売の商品だから、車種は実質的にスズキキャリイ、ダイハツハイゼットトラック、ホンダアクティトラックだけだ。

 しかもキャリイは日産/マツダ/三菱にOEM供給され、製造メーカーのスズキを含めれば4つのメーカーが扱う。ハイゼットトラックもトヨタとスバルに供給される。

 このように限界ギリギリまでコストを切り詰め、なおかつ実用性を高めたから、荷台長の1940mmと最小回転半径の3.6mは3車とも共通だ。限界に挑んだ結果、同じ数値に行き着いた。もはやわずかでも譲れない。

 そこで軽トラックを運転すると、運転姿勢もギリギリだ。ヘッドレストは車内と荷台の隔壁に固定され、運転席の背もたれと座面だけが前後にスライドする。

 背もたれの角度調節はできず、助手席にはスライド機能も付かない。

 身長170cmのドライバーが座ると、スライド位置は最後部に調節され、背もたれをもう少し寝かせたいと感じるが、それはできない。まさに最小限度の空間だ。

 そこでスズキはスーパーキャリイ、ダイハツはハイゼットトラックジャンボを開発した。外観を見ると、車内を後方へ広げて荷台を狭めた仕様だが、実際のクルマ造りはもっと巧みだ。

■荷台は1900mmを確保するなど軽トラのメリットは失われず

 車内の上側は後方へ張り出すが、下側は引っ込めて、荷台床面の長さは1900mm以上を確保した。

 つまり居住空間を広げながら、荷台の下側を掘り込み、脚立のような薄型の長い荷物は積めるようにした。

 コンテナ状の大きな荷物を運ぶには、標準ボディのキャリイやハイゼットトラックになるが、そこまで荷台の形状にこだわらない用途ならスーパーキャリイやハイゼットトラックジャンボは合理的だ。

 また身長が175cm以上のドライバーが座る場合、標準ボディではキャビンの前後長が足りない。

 スーパーキャリイやハイゼットトラックジャンボでは、車内の上側が広がるために、リクライニングによって背もたれを倒すことが可能だ。そうなれば運転姿勢をラクにできる。

 今の日本人男性の平均身長は約172cmで、30年前に比べると約5cm伸びた。女性も約3cm伸びている。スーパーキャリイやハイゼットトラックジャンボは、ユーザーの体格の変化に対応した仕様ともいえるだろう。

 そしてリクライニング機能は、運転の途中で休憩を取る時も快適に使える。スーパーキャリイは運転席の背もたれを40度、助手席は24度まで倒せるからリラックスできる。

 両車ともにボディはハイルーフで、全高を標準ボディと比べると、スーパーキャリイが120mm、ハイゼットトラックジャンボが105mm高くなった。そのために車内で背伸びをする時も都合が良い。

 シートの後ろ側には横方向に長い棚状の空間があり、衝突時に加害性を生じない手荷物ならば置くことが可能だ。荷台と違って雨に濡れない。

 さらに安全性も優れている。標準ボディではヘッドレストが後部の隔壁に固定されるから、小柄なドライバーが運転席のスライド位置を前方に寄せると、背もたれとヘッドレストの間が離れてしまう。

 標準ボディの運転席は両車ともに140mmまで前方に出せるから、スライド位置によっては、追突された時にヘッドレストが機能しない。

 つまり標準ボディは運転席のスライド位置によって危険を伴うが(メーカーでは「保安基準に該当しているから問題ない」と返答した)、スーパーキャリイやハイゼットトラックジャンボであれば、ヘッドレストが背もたれと一体で前後する。

 従ってスライド位置を前寄りに調節しても、ヘッドレストが機能するわけだ。

 シートの座り心地も違う。標準ボディは背もたれや座面が薄く、小柄な乗員の乗降性を考えて、サイドサポートの張り出しも小さい。

 クルマの運転席としては簡素だが、スーパーキャリイやハイゼットトラックジャンボであれば、ボリューム感が相応にあって座り心地の不満も生じにくい。

 それではスーパーキャリイとハイゼットトラックジャンボの優劣も比べてみたい。室内空間の上側(荷台側に張り出した部分)は、スーパーキャリイの前後長が170mmほど長い。

 その代わり背の高い荷物を積む時の荷台長は、ハイゼットトラックジャンボが長くなる。機能は一長一短だ。

■2車には「乗用車感覚」と「トラック感覚」の違いがある

 シートの造りは両車とも似ているが、ハイゼットトラックジャンボは座面の奥行がスーパーキャリイよりも長く、肩まわりのサポート性も良い。

 ハンドルの角度も、ハイゼットトラックジャンボが乗用車感覚だ。スーパーキャリイのハンドルは、角度が寝かされてトラック的になる。

 このように居住空間が広いのはスーパーキャリイでも、シートの座り心地と運転姿勢は、ハイゼットトラックジャンボが乗用車に近い。

 乗降性はスーパーキャリイがスムーズだ。ドア開口部の前側とタイヤが収まるホイールハウスの間隔が広く、乗降時に足が通りやすい。

 農家が使う軽トラックでは、安全面に問題があるものの、長靴で運転する機会が多い。そこでキャリイとスーパーキャリイは、乗降時の足の取りまわし性に気を使った。

 乗り心地はハイゼットトラックジャンボが少し快適で、スーパーキャリイは少し硬い。

 その半面、ハイゼットトラックジャンボは操舵に対する反応が緩慢だが、スーパーキャリイは機敏で乗用車的だから、曲がりくねった狭い道や駐車場で運転しやすい。

 動力性能は、実用回転域の駆動力が高いスーパーキャリイが勝る。日常的な加速力を左右する最大トルクも、スーパーキャリイは6.4kgm(3500回転)、ハイゼットトラックジャンボは6.1kgm(4000回転)と差があり、車両重量もスーパーキャリイが若干軽い。

 以上のように、両車とも標準ボディに比べると居住性が快適だが、ハイゼットトラックジャンボはこの傾向がさらに強い。

 シートの座り心地や乗り心地が優れている。対するスーパーキャリイは、動力性能、走行安定性、操舵感など、走りに重点を置いた。

 そして軽トラックは実用重視だが、スーパーキャリイとハイゼットトラックジャンボでは、ヘッドレストを最適化することで安全性を高め、幅広い体格のドライバーにも対応している。

 この2車種を運転すると、軽トラックの標準ボディが抱える問題点と、その解決策も見えてくる。

 スーパーキャリイとハイゼットトラックジャンボは、今は派生モデルの扱いだが、もっと本格的に普及しても良い仕様だろう。

【ジャンボ軽トラック主要諸元(比較対象:ハイゼットトラック)】

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