独立系高級時計ブランド、H.モーザーによるスマートウォッチ「ストリームライナー・アルピーヌ メカニックエディション」は、現代における時計のあり方を再考させる。
時計とモータースポーツは、カーレースというものが始まった当初から密接な関係にあった。それどころか、時計業界は、“馬力”という言葉が文字通り4本の足が発揮するパワーを指していた時代から、レースにおける勝敗の判定にコミットしてきた。
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スイスの時計ブランドはその後も洗練された計時装置を開発し続け、サーキットにおける機械式時計の重要性は1960年代から70年代にかけてピークに達した。しかし、それもすぐにデジタル技術に取って代わられていった。
今日、ラグジュアリーブランドの多くが、トップレベルのモータースポーツにおけるマーケティングの機会を得られずにいる。しかし、独立系時計メーカーのH.モーザーは、アルピーヌF1チームとのパートナーシップを通じて、腕時計がモータースポーツで果たすべき役割を改めて示してみせた。
その結果誕生した腕時計は、ジャック・ホイヤーの時代以来、スイスの時計ブランドから出てきたなかで最も実用的なアイテムといえるかもしれない。新たな「ストリームライナー・アルピーヌ メカニックエディション」 は、クオーツ時計とスマートウォッチの要素を組み合わせたもので、チームのスケジュールに同期し、レースまでのカウントダウンやチームに関する通知メッセージの受信が可能となっている。
新作の発売を前にしたインタビューで、H.モーザーCEOのエドゥアルド・メイランは、当初はスマートウォッチを作ることに抵抗があったが、最終的にはブランドらしいやり方を見出したと語った。「(F1メカニックは)厳密にスケジュールを管理する必要があります。そこで、我々はブレーンストーミングを始めました。コネクテッドウォッチそのものは作りたくないが、F1ウォッチならできるかもしれないと考えたのです」
用途と機能を絞ったスマートウォッチ
「メカニックエディション」は500本限定で製造され、そのうち200本は「ドライバーズエディション」とのペアで販売される(日本国内では単品は未発売)。通常であれば、「ドライバーズエディション」はそれだけで十分な存在感を放ち、話題となるであろうモデルだ。
「ストリームライナー・アルピーヌ ドライバーズエディション」は、H.モーザーが少数株主でもある独立系専門サプライヤー、アジェノー社の自動巻きフライバック式クロノグラフを搭載したモデルで、スケルトン文字盤と鮮やかなメタリックブルーのPVD加工スティール製ケースが特徴となっている。
しかし、ここで注目したいのは「メカニックエディション」のほうである。独特の機能を多数搭載し、アナログとデジタルのハイブリッドディスプレイを備えたクオーツ式スマートウォッチだ。高級時計メーカー、特にH.モーザーのようなハイエンドの独立系ブランドがクオーツを扱うことはほとんどなく、スマートウォッチの領域に踏み込むことも考えられなかった。
スイスのスマートウォッチ・ブランドSEQUENT(シークエント)と共同で開発された「ストリームライナー・アルピーヌ メカニックエディション」は、H.モーザーの既存デザインを踏襲した時・分アナログ表示の下にデジタル表示を備えたモデルだ。「少し戸惑いを感じてもらいたかった」と話すメイランは、近年H.モーザーが手がけているベンタブラックの文字盤を参考にしたという。「モーザーの時計らしく見えながら、文字盤が点灯したときに驚きがあることが重要でした」
心拍モニターや睡眠トラッキングといった日常的な機能はなく、よりカスタマイズされた機能に絞ってはいるが、レースのある週末には文字盤が点灯する頻度はかなり高まる。5月末から6月初めにかけて開催されたバルセロナGPですでに使用されたこの時計は、アルピーヌのメカニックやエンジニアのニーズに合わせて設計されたアラートシステムとともに開発された。
H.モーザーは、この時計を合計で60~80本チームに供給した。通知はチームメンバー個人またはチーム全体に届けることができ、週末を通して重要なスケジュールのリマインダーがチームにアラートされる。これは非常に重要な機能だ。メイランが指摘するように、F1では決められた時間外に作業をしたり、制限時間を超過したりすると、厳しい罰則や罰金まで課されかねない。
「もちろん、彼らは無線のヘッドセットを装着しています。しかし、レース会場に実際に行ったことがあればわかると思いますが、極めて騒々しい場所ですからね」と、メイランは言う。「そこで、チームの助けになるようなものを開発しようと考えたのです。チームの上級スタッフ、そしてもちろんドライバーは機械式時計のほうを着用しますが、ガレージにいるスタッフはハイブリッド時計を着用することになります」
新たな時計のあり方はコレクターの心を掴むか?
いつもは物怖じしないメイランだが、「メカニックエディション」は彼にとって新たな挑戦だった。H.モーザーの過去のプロジェクトには、イギリスのブランドStudio Underd0gとのパッションフルーツをコンセプトにしたコラボレーションや、ケースがQRコードになっている時計、さらにはスイス製品の品質基準「スイスメイド」の形骸的な運用を皮肉ったスイスチーズを一部に使用した時計などがある。しかし、「メカニックエディション」はメイランをいつになく不安にさせた。「1週間後、人々がどんな反応を示すか、かなり楽しみであり緊張してもいます」と、彼は語る。
この時計は3つのモードに設定することができる。最初のオプションはF1シーズンの一般的なスケジュールに合わせ、期間中に一般的なアラートを受信できるというもの。「すべてのチームが受け取る情報を受信することができます。たとえばレース開始まであと10分、とかね」と、メイランは言う。2つめのオプションは、各チームごとの専用メッセージである。3つめが最もジェネリックな設定で、GMT、永久カレンダー、クロノグラフの機能が利用できる。「当然ながら、F1チーム内密のメッセージは届きません。しかし、誕生日メッセージのような、特別なメッセージを受け取れるかもしれません」
驚きなのは、この時計がシャフハウゼンにあるニッチな独立系時計ブランドで、年間約5000本の製造に留まるH.モーザーから発表されたことだ。H.モーザーは、タグ・ホイヤー、IWC、リシャール・ミルといった時計業界の巨頭と並んでF1のパドックにいる。これらのブランドはF1において輝かしい歴史を誇るが、H.モーザーは新作「ストリームライナー・アルピーヌ メカニックエディション」で、誰よりもユニークな時計を作り上げた。メイランは、単なる広告主以上の存在になることを目標に、このパートナーシップに取り組んだのだ。
「私たちは人々に驚きを与えるような、まったく予期せぬものを作ろうと心がけています」と、メイランは言う。「この時計がH.モーザーが将来的に目指すところを示しているかといえば、それは違います。しかし、私たちがパートナーシップにコミットするとき、単にドライバーに自社の時計を着けさせ、マシンにロゴを入れることばかり考えているのではないということを証明しているとは思います」
H.モーザーの目指す未来ではないかもしれないが、時計業界もコレクターも、ますます新しいテクノロジーを受け入れるようになってきている。また、何世代にもわたるコレクターにとって、クオーツ式はその個性のなさから無視され、1970年代のスイス時計産業没落の悪役とされ、本格的な時計愛好家からは嫌悪の対象とされてきた。しかし現在では、そのようなことをすべて見過ごそうとする動きも出てきている。
Instagramの#makequartzgreatagainのようなハッシュタグは、独自の物語を語っている。そして各ブランドは、クオーツを暫定的に、そして成功裏に自社製品に組み込んできてもいる。クールなクオーツ時計の代表格は間違いなくFPジュルヌ「エレガント」である。パンデミックのさなか、この時計は一風変わった存在から一躍人気商品となった。クオーツデザインでコレクターを魅了するほかのブランドにはジラール・ペルゴがあり、1976年のアバンギャルドなモデル「キャスケット」を近年復刻して話題となった。
「ストリームライナー・アルピーヌ メカニックエディション」で、H.モーザーは真に革新的なものを作り上げたかもしれない。スイスの時計メーカーが自社製品に鉄壁の自信以外の感情を表明するのは珍しいことだが、この新たなタイムピースは、高級時計コレクターたちが最先端テクノロジーを取り入れることについて、どのようなスタンスでいるかを測る物差しとしても興味深いものとなるだろう。
From GQ.COM
By Chris Hall
Translated and Adapted by Yuzuru Todayama
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