ルノーの好決算と日産の岐路
ブルームバーグは2025年2月27日、日産自動車が内田誠社長の退任に向けた調整を進めていると報じた。退任に向けた動きが加速することで、日産の将来戦略にどのような影響を与えるのかが注目される。
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一方、中国の吉利汽車(ジーリー)との提携強化を積極的に推進するルノーは、2024年度の通期決算で過去最高となる営業利益42億6300万ユーロ(約6600億円)を計上し、日産が通期で800億円の純損失を見込んでいるのとは対照的に好決算を達成した。日産の大株主であるルノーは、日産との関係を再定義しつつあり、ポスト内田体制でどのような戦略を選択するのかが注目されている。
本稿では、ホンダとの経営統合が白紙となった日産が、これまで築き上げてきたルノーとのアライアンスを基盤にどのような将来像を描くべきかを考察する。
ルノー・吉利、新会社設立で提携強化
ルノーと吉利汽車は、2024年5月に共同出資で新会社「HORSE Powertrain(ホース・パワートレイン)」を設立した。このプロジェクトは、両社が2022年11月に発表してから約2年半を経て実現に至った。
ホース・パワートレインは、英国ロンドンに本社を構え、両グループから譲渡された知的財産を基に、エンジンやトランスミッション、ハイブリッドシステム、電池などの先端技術を活用した駆動システムの設計、開発、販売を行っている。
この新会社の成果物として、ルノーは吉利汽車の「星越L」とその兄弟車となる新型ハイブリッドSUV「グランドコレオス」を2024年韓国で発売した。また、ブラジル市場ではゼロエミッション車(ZEV)と低排出ガス車(LEV)の生産および販売に関して、吉利と合意に至った。両社の提携は、グローバル規模で拡大している。
このような提携の拡大が日産にも影響を与える可能性は否定できず、特に新興国市場での競争力強化に繋がると期待されている。ポスト内田体制においては、ルノーと吉利の提携を基に、電気自動車(EV)やエンジン車の共通化戦略を模索する動きが予想される。
中国EV市場で吉利が躍進
吉利汽車は、中国の民間自動車メーカーであり、その創業者である李書福氏は「自らの手で作る高級車」を夢見て会社を設立した。吉利汽車の起源は1986年に設立された冷蔵庫メーカーであり、1993年には中国初の国産スクーター製造に乗り出した。1997年には国営自動車工場を買収し、1998年から本格的に自動車の量産を開始した。
中国市場における吉利汽車の存在感は年々増しており、特にEV市場でのシェア拡大が顕著だ。中国自動車工業協会(CAAM)のデータによると、2025年1月の中国乗用車販売台数で、吉利汽車は前年比28.2%増の24万台を記録し、2位のBYD(20万台)を大きく引き離してトップに立った。価格が7万元(約140万円)からの安価なEVモデル「星願」が販売を牽引しており、同じく1月の世界EV/プラグインハイブリッド車販売ではテスラを抜き、吉利はBYDに次ぐ2位となった。
吉利汽車傘下には、2010年に買収したボルボをはじめ、ポールスター、ロータス、スマート、ZEEKr(ジーカー)といった多数のブランドがあり、ルノーやメルセデス・ベンツなどの欧州自動車メーカーとも提携している。グローバルに事業展開を拡大する吉利がルノーとの提携関係を加速させることは、日産にも少なからず影響を与えるだろう。
吉利、右ハンドルEVで日本市場へ参入
吉利のプレミアムEVブランド・ジーカーが日本市場に進出する準備が整いつつある。ジーカーの開発拠点は、スウェーデンにあるボルボとの共同設立による欧州色の強い体制で、グローバル市場に向けた高性能EVを展開している。特に、若年層や都市部のユーザーに訴求力が高いとされる。
吉利は2024年8月に、2025年から日本市場に右ハンドル仕様のジーカー3車種を投入する計画を発表した。これらの車種は、SUVの「X」および「7X」、そして高級ミニバン「009」の3モデルで、いずれもすでにタイやシンガポール、香港などの右ハンドル市場で販売されている。特に「009」は、中国市場でトヨタ・アルファードのライバルとして人気を博しており、日本の自動車メーカーにとって脅威となる可能性を秘めている。
吉利は2024年末までに首都圏、関西、東海地方にショールームを開設する計画をしていたが、現時点では開設されていないようだ。これには販売準備が遅れている可能性もあるが、日産や三菱自動車の系列販売店を活用するための調整が進んでいる可能性もある。
日産にとっては、ジーカーの日本市場進出およびグローバル市場での台頭にどう対応するかが重要な課題となる。ルノーとのアライアンス下で、日産が独自のブランド戦略を維持しながら、吉利との協業をどのように進めていくかが今後のカギを握る。
EV市場での遅れと今後の戦略
ルノーと吉利の提携が進むなかで、日産が今後進むべき道をポスト内田体制も見据えて整理すると、かつて「技術の日産」と称された同社は独自の革新を進めてきたが、近年のEV市場では若干の遅れが感じられる。ただし、独自のハイブリッド技術e-POWERの普及や、アリア、サクラなどのEV投入により、一定の市場シェアを確保してきた。
今後の日産の課題は、グローバル市場での競争力を維持しながら持続可能なビジネスモデルを確立することだ。そのために最も現実的な選択肢は、ルノーとのアライアンス強化であり、ホンダや鴻海との提携を模索するよりも優先すべきだと考えられる。
日産がルノーと吉利の提携をどう活用するかがカギとなり、エンジン車とEVの両立を目指す戦略は、日産にとって市場競争力を維持するために理にかなった選択肢となるだろう。ポスト内田体制の方向性はまだ不透明だが、ルノーとのアライアンスを最大限に活用することが日産の生き残り戦略にとって重要な要素となるだろう。
日産が取り得るシナリオ整理
日産の今後の戦略において、提携先はルノーや吉利に限られるわけではない。新たなパートナーシップを模索するなかで、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)やEV新興企業との協力、さらにはホンダとの再交渉といった選択肢が浮上している。
鴻海との提携の可能性は依然として残っており、EV生産において強力な製造パートナーとなる可能性がある。鴻海は、日産との協業を進めることで、EV生産に特化した新たな事業モデルを展開し、世界的なサプライチェーンを活用できる。
フィナンシャルタイムズによる報道によれば、日産の提携交渉にも注目が集まっている。ルノーが意図的に情報を流している可能性もあるが、2月18日に報じられたところによると、日産の内田社長が退任すればホンダが経営統合交渉を再開する意向があるとのことだ。さらに、2月21日には菅元首相を含むグループがテスラによる日産への出資計画を策定したとの報道もあったが、菅氏はその計画への関与を完全に否定している。
内田社長の退任後、日産とホンダの提携交渉が再浮上する可能性がある。日経ビジネスによれば、日産関係者は「完全子会社かどうかは分からないが、ホンダの出資を受け入れる方向で協議が進むだろう」と語り、さらに鴻海や三菱自動車を加えた4社での協業も視野に入れていると報じている。両社は2024年8月に締結した覚書に基づき、EV分野での協業検討を続けており、電動化の進展において共通の戦略を打ち出せるかが今後の焦点となる。
また、日産はその他のパートナーを模索する動きも予想される。特に、バッテリー技術や自動運転技術を持つEV新興メーカーやスタートアップとの連携が、日産の競争力を強化する重要な要素となる可能性がある。
日産が今後も技術革新を続けるためには、単独での戦略推進だけではなく、これまでのルノーとのアライアンスをさらに強化し、急速に変化する市場環境に柔軟に対応することが求められる。
ダイヤモンドオンラインによると、日産は3月6日に開催予定の指名委員会で、内田社長の解職および後任人事について議論する予定だ。ポスト内田体制が現実味を帯びるなかで、今後の日産の動向には注目が集まる。
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みんなのコメント
「廃車になるのを待っているのでしょうか?
オルタネーター取替えのリコール対応して欲しい」
技術ばかりを盗られ やがて 中国内で利益を独占される
逆にルノーの国フランスに輸入されて市場を獲られる
衰退していくのが見えている
そんなメーカーと技術提携など とんでもない話だ
倒産が一時的に伸びるだけ
企業風土は簡単には変わらない 傾いた企業は
倒産するしかない 未来は無い