グループPSAで生まれた新しいコルサ
text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
短い開発期間で仕上げられた、ボクソール(オペル)・コルサの新型を初めて英国で試乗する。親ブランドはドイツに拠点を置くものの、スーパーミニと呼ばれるA・Bセグメントのコンパクトカー市場では、英国は小さくない位置を占める。
ボクソールとして最も人気のあるモデルというだけでなく、英国では同カテゴリーでフォード・フィエスタに次ぐ2位のシェアを占める。年齢層やクラスを超えた、英国市民の足だといえる。英国人なら、一生に一度はコルサを運転するといっても過言ではない。
もしAUTOCARを熱心にお読みいただいているのなら、新しいプジョー208とコルサとの関係性は多少ご存知かもしれない。オペルは本来、GM社の経営のもとで新型コルサの開発を進めていた。しかしグループPSAが2017年にオペル・ブランドを手に入れる。
新しいコルサの計画は、グループPSAが保有するCMPモジュラー・プラットフォームで仕切り直しとなった。ちょうどプジョー208の計画が進められる中での変更だった。
その結果わずか2年ほどで、先代モデルとは大きく異る新しいボクソール・コルサを、グッドウッド周辺で試乗することが可能となった。筆者としてはこの変化は歓迎している。先代のコルサは、ちょっとMPVの雰囲気が強すぎた。
新しいコルサは、ルーフラインが48mm低くなり、全長は39mm伸ばされている。少し小柄に見えるものの、低く構えたプロポーションでルックスは悪くない。
英国では25年で200万台以上を販売
エンジンのラインナップなどは簡素化された。ガソリンエンジンが2種類と1種類のディーゼルが用意される。2020年中には純EV版も追加予定。これらのパワートレインと、6段階のトリムグレードを組み合わせることができる。
25年前に初代が登場して以来、英国だけでも200万台以上が販売されてきたコルサ。ボクソールも生半可なクルマを作るわけにはいかない。おかげで完成度は高い。
だが、スターティングプライスは1万5600ポンド(221万円)からとなり、先代より4000ポンド(57万円)ほど上昇。このクラスの中で価値ある存在とも呼べなくなってしまった。
このクラスでは平均的な価格設定だが、100psのターボエンジンにSRIナビと呼ばれるトリムグレードを選択し、オプションのボディカラーを追加すると、価格は2万ポンド(284万円)に届いてしまう。
望めばガソリンエンジンのコルサに2万6000ポンド(369万円)を費やすことも可能。EVは更に高額な価格設定になる。残価設定の月払い額は数年後の車両価値に応じるから、単純に新車価格が反映するわけではないけれど。
デザインは、エクステリアもインテリアも好印象で、掘り出し物感が根強い。価格が上昇したコルサとしては注目を集める必要性があり、プジョー208との差別化を図りつつ、とても良くまとめられている。
インテリアもコルサの専用デザイン
ダッシュボードのデザインは、それほど個性的なアプローチは取られていない。スタイル優先ではなく、ちゃんと人間工学を考え、使いやすさを重視したデザインだと思う。品質にも優れ、モニターから独立したエアコンの操作スイッチやメーターパネルはコルサ専用品だ。
プジョー208はiコクピットが採用され、ステアリングホイールが小径なものだが、コルサは通常の大きさのものを採用。PSAグループのクルマらしく、グローブボックスはヒューズボックスの横に配され小サイズ。
ペダルの位置は手前にありすぎ、背の高い人は足を折り曲げるか、シートを不自然に後ろにスライドすることになる。変更には手間がかかりすぎるのだろう。
上位グレードのクルマの場合、インフォテイメント・システムのモニターは10インチとなるが、中位グレード以下になると7インチにサイズダウン。小さく見えるだけでなく、画面下部に表示される便利なショートカットも消えてしまう。
新しいコルサも、プジョー208と同様に、ガソリンやディーゼルエンジン版と、電気モーター版を同じ製造ラインで組み立てることができる。ボクソールとしては、車内空間を削ることなくEV版を用意できることは誇らしいはず。
その反面、大人が座るにはリアシートは少々狭い。パッケージングの面で妥協が必要だったようだ。ヘッドルームには余裕があるものの、足元の空間はライバルより明らかに狭い。荷室容量は309Lで、競争力は悪くないといえる。
プジョー208より明快で積極的なコーナリング
車重は標準モデルなら980kgに留まり、先代より108kgも軽くなっている。バッテリーを搭載するEVを前提として、軽量化に技術が投じられているのだろう。おかげで紙面上のスペックだけでなく、燃費やハンドリングなどに良い影響が及んでいる。
1.2L 3気筒オールアルミ・ガソリンエンジンは最も販売台数を稼ぐユニットと予想され、実用性は高い。低回転域から力強く扱いやすく、回転域を問わずフィーリングは上質。
走行性能として充分な能力を発揮してくれるものの、5000rpmも回すと息切れ感が出てしまう。回転数は引っ張らず、テンポよくシフトアップした方が良さそうだ。変速はスムーズだが、特に楽しめるタイプではない。シフトノブは大きく、ストロークも長い。
ボクソールにも129ps版の設定が欲しい。ホットハッチ的な雰囲気が与えられたクルマを試してみたい。可能性はゼロではなさそうだが、ATのみの設定になるかもしれない。追加となるパワーは、良質なシャシーも含めてクルマを引き上げると思う。
ターンインはプジョー208より明快で積極的。ロンドンの南、ウェスト・サセックス州の郊外の一般道では、本気で攻め立てた走りは叶わなかったものの、グリップは高く姿勢制御も良好だった。
今回の試乗車となったのはSRIグレード。スポーツモードのスイッチや、エンジンサウンドの拡張機能、サスペンション・タワーの補強ブレースなどを装備する。効果は期待したほどではないし、フォード・フィエスタ並みの笑顔を生み出してはくれないが、適度な楽しさは備わり、競争力は充分にある。
先代の成功を受け継げる仕上がり
乗り心地はホイールとタイヤの選択に依存しそうだ。16インチと17インチを試したが、サイドウォールの厚みが多い方が、しなやかなことは明らか。17インチホイールでは、表面の剥がれた舗装で不安定さが顔を出すようだ。
しかしSRIグレードには驚くほど快適なスポーツシートが付いてくる。長距離でも上質で快適なドライブを楽しむことができる。
EVと互換性のあるプラットフォームに費やされた技術や予算は、ドライバーが実感できるものではない。EV版コルサの登場は更に数ヶ月先。競い合う範囲は狭まるものの、航続距離は同クラスの中では優れたものになるはず。
仮に数年前にGMが進めていた形で新しいコルサが登場していても、クラス内での上位争いを繰り広げていたかもしれない。だが同時に、セアト・イビザやフォード・フィエスタ、フォルクスワーゲン・ポロ、最新のルノー・クリオ(ルーテシア)など優れたクルマが登場している。
グループPSAの中で生まれた新しいコルサも優秀な仕上がりとなった。運動性能は特に際立った部分はないものの、先代の成功を受け継げる中身を備えているといっていい。
ボクソール(オペル)・コルサSRI Nav 1.2 100ターボのスペック
価格:1万9200ポンド(272万円)
全長:4060mm
全幅:1765mm
全高:1435mm
最高速度:194km/h
0-100km/h加速:9.3秒
燃費:18.5km/L
CO2排出量:96g/km
乾燥重量:1090kg
パワートレイン:直列3気筒1199ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:100ps/5500rpm
最大トルク:20.8kg-m/1750rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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