GSX-S1000Fから車名も一新、GSX-S1000GTに
名車と名高いスーパースポーツGSX-R1000(K5)をベースとするエンジンを搭載し、2015年に登場したGSX-S1000シリーズ。
ネイキッドモデルのGSX-S1000は2021年型でモデルチェンジ。デザインを大胆に刷新し、走行性能も高められました。
【画像37点】スズキ新型GSX-S1000GTの外観360度、全車体色、オプションパーツを写真で解説
一方、フルカウル版のGSX-S1000Fは「GSX-S1000GT」へと進化することが発表されました。2021年10月より世界各国で順次発売を開始するとのことです。
変更された車名「GT=グランドツアラー」が表すように、タンデムや積載にも対応しつつ、長距離ツーリングを楽しめるスポーツツアラーへとキャラクターを変更!
当記事ではスズキ GSX-S1000GTの持つ高いツーリング性能や、「GT」へと生まれ変わるにあたり新採用された機能などについて、海外仕様の情報に基づき解説していきます。
モデルチェンジされた新型GSX-S1000は8月に日本での発売開始となりましたが、このGSX-S1000GTもそう遠くないタイミングで日本発売となるのではないでしょうか。
スズキ GSX-S1000GTのデザイン「防風性を追求しつつ、新世代のスズキデザインに」
GSX-S1000Fがどちらかというと流線型の滑らかなカウル形状だったのに対し、突き出したノーズのフロントカウル、ウイング状のサイドカウルなどGSX-S1000GTは鋭角的なデザインに一新。
これはデザインの目新しさだけをねらったものではなく、入念な風洞実験や解析に基づき、頭頂部、肩、ヒザに当たる風の軽減を追求し、「GT=グランドツアラー」にふさわしい快適な高速巡航性をもたらす形状となっているのです。
カウルの個性的なデザインに貢献しているのが小型のLED灯火類です。
カウル先端・中央にあるV字状の部分はポジションライト。
ヘッドライトはその下にあり、ロービーム時は進行方向左側が点灯、ハイビーム時には両点灯となります。
ウインカーやテールライト・ブレーキランプもLEDで、灯火類はオールLEDとなっています。
スズキ GSX-S1000GTのエンジン「最高出力は2馬力アップで152馬力に」
999ccのDOHC4バルブ水冷並列4気筒エンジンは従来型GSX-S1000シリーズのものをベースにさらに熟成。
ヨーロッパの最新環境規制「ユーロ5」へ適合したうえで、低回転から高回転までスムーズかつトルクフルな出力特性に。
ツーリングや日常速度域でよく使われる低・中回転域は扱いやすく、高回転域を用いる高速道路などで「ここ一発の加速が欲しい」と思ったときにはパワフルな加速力を発揮してくれるといいます。
また、最高出力はGSX-S1000Fより2馬力アップの152馬力に高められています。
そうした性能を実現するために改良が行われた主要な点は、電子制御スロットルや新設計エキゾーストシステムの採用、エアクリーナーボックスやカムプロフィールの変更など。
これらはネイキッドモデルの新型GSX-S1000と同様の改良点で、最高出力112kW(152ps)/1万1000rpm 最大トルク106Nm(10.8kgm)/9250rpmの性能・発生回転数とも海外仕様の新型GSX-S1000と同値です。
このほか、急激なエンジンブレーキによるリヤタイヤのホッピングを防ぐだけでなく、クラッチのレバー操作荷重も軽減するアシスト&スリッパークラッチが採用されたほか(GSX-S1000Fは「スリッパークラッチ」のみでした)、アップ・ダウン両対応のクイックシフターも標準装備されます。
内部構造を変更したエアクリーナーボックスは出力向上に貢献。容量はわずかに減少しているも、吸気効率を高めるためセパレーターを廃止。従来型エアクリーナーボックスに比べ軽量にもなっています。
スズキ GSX-S1000GTの電子制御「GTらしくクルーズコントロールを標準装備」
電子制御機構もGSX-S1000Fより多機能化されました。
電子制御スロットルの採用により、出力特性がActive、Basic、Confortの3種に切り替えられる「スズキ・ドライブ・モード・セレクター」を搭載(各モードとも最高出力は変わらず過渡特性のみが変化)。
ツアラーモデルといえば今や必須ともいえるクルーズコントロールも装備され、ギヤが2速以上のときに30~180km/hの速度域で設定できます。
また、トラクションコントロールはGSX-S1000Fが3レベル調整&カット可だったのに対し、5レベル調整&カット可に。
最新のスズキ車でおなじみ、エンジンが低回転のときに自動で回転を高めて操作をアシストする「ローRPMアシスト」は継続採用ですが、作動感を改良。スタータースイッチをワンプッシュでエンジンがかけられる「スズキ・イージー・スタート・システム」も継続採用となっています。
スズキ GSX-S1000GTの車体「シートレールはタンデムや積載を考慮し専用設計に」
軽量さと高剛性を特徴としたアルミツインスパーフレームは従来型GSX-S1000シリーズから継承されたもので、ネイキッドモデルの新型GSX-S1000とも同様。
ただし、GSX-S1000GTは同車専用に新開発したシートレールを組み合わせています。
サイドケース装着時の強度を確保するためと、シートレールを低くすることでリヤシートの厚みを確保し、タンデムライダーの快適性を高めるためで、こうした点からも「GT=グランドツアラー」というキャラクターを真摯に追求しているのがわかります。
インナーチューブ径43mmのKYB製倒立フォーク、リヤにリンク式モノショックという組み合わせは従来型GSX-S1000シリーズと同様ですが、「GTらしい快適性」を実現するためと、純正タイヤの銘柄変更に併せてセッティングを調整。
ハンドリングは低速域から高速域までニュートラルで、高速時は安定感ある特性になっているといいます。
スズキ GSX-S1000GTの快適装備・実用装備「ハンドルラバーマウント化&乗車姿勢変更でより快適に」
従来型GSX-S1000とGSX-S1000Fではシートは共通でしたが、シートレールが専用設計となったことからも想像できるように、GSX-S1000GTは長時間乗車時の快適性を重視した専用シートとなっています。
ライダー側もタンデム側も十分な厚みを確保したうえで、滑りにくい表皮採用。ライダー側シートはポジションの自由度も高くとられています。
なおシート高はGSX-S1000F、新型GSX-S1000とも同じで810mmです。
ライディングポジションも変更され、ハンドルはGSX-S1000F比でライダー側に14mm近付き、ハンドル幅が23mm広くなったことで、前傾度合いが緩くなっています。
また、ハンドルはトップブリッジとブラケットをラバーマウントとし振動を抑制。もちろんこれも長距離ツーリングでの疲労軽減をねらった変更です。
新型GSX-S1000とも違う、GSX-S1000GTならではの大きな特徴がフルカラー液晶のメーターです。
現状、これはあくまで海外仕様の話となりますが、スズキの専用アプリを使うことでスマートフォンとの接続させることができ、電話や地図機能、音楽再生機能を連動させることができます。
「GT系モデル」といえばサイドケースがおなじみですが、GSX-S1000GTでは純正オプションとして設定されます。
車体色同色のカバーが用意されるこのサイドケースですが、かなりの大容量で、SHOEI製ヘルメットの場合XXLサイズのフルフェイスヘルメットを収納可能です!
スズキ GSX-S1000GT主要諸元(海外仕様)
[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクル並列4気筒DOHCC4バルブ ボア・ストローク:73.4mm×59.0mm 総排気量:999cc 最高出力:112kW<152ps>/1万1000rpm 最大トルク:106Nm<10.8kgm>/9250rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2140 全幅:825 全高:1215 ホイールベース:1460 シート高810(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R190/50ZR17 車両重量:226kg 燃料タンク容量:19L
[車体色]
メタリックトリトンブルー、メタリックリフレクティブブルー、グラススパークルブラック
スズキ GSX-S1000GTのライバルは? カワサキ ニンジャ1000SX一択か
日本での価格は現段階で判明していませんが、1000ccクラスの並列4気筒エンジンを搭載したスポーツツアラーとして真っ向勝負となるのはカワサキ ニンジャ1000SXでしょう。
エンジンや車体を共有するスポーツネイキッドの兄弟車(Z1000)があるという点も、GSX-S1000とGSX-S1000GTの関係と似ています。
ニンジャ1000SXより高出力で、車重が軽いGSX-S1000GT
さて、性能面を見ていくと、GSX-S1000GTが最高出力152馬力で車重226kg、ニンジャ1000SXは最高出力141馬力で車重236kgと、GSX-S1000GTが数値上の動力性能では有利なのですが……ただ、ニンジャ1000SXの車重が重いのは、電子制御をより精細に作動させる6軸IMU(慣性計測装置)など電装品による影響も若干あるでしょう。
そのIMUにより、ニンジャ1000SXはトラクションコントロール、ABSにコーナリング中や加減速などの状況を踏まえた制御が行われるわけですが、ここも2車の大きな違いです。
そのほかの電子制御機構──出力特性を3段階に切り替えるライディングモード、アップ・ダウン両対応のクイックシフター、クルーズコントロールを備える点はGSX-S1000GTとニンジャ1000SXは互角です。
一方、足まわりではフロントフォークのインナーチューブ径がGSX-S1000GTは43mmなのに対しニンジャ1000SXは41mm、フロントブレーキディスク径もGSX-S1000GTが310mm、ニンジャ1000SXは300mmと少々差があります。
クルーズコントロール、クイックシフター、スマホ連動カラー液晶メーターは2車とも標準装備
実用装備面はどうでしょうか。
2車ともスマートフォン連動機能を有したカラー液晶メーターを装備する点や、パニアケースはオプションとなる点は同様。
あと細かな違いですが、ニンジャ1000SXは手動ながらスクリーンの角度調整ができます(GSX-S1000GTは70mm上端が高くなるハイスクリーンをオプションで設定)。
IMUが搭載されていないという点を一般的に考えれば、GSX-S1000GTの方が求めやすい市場価格となる可能性は大です。
トラクションコントロール、ABSにバンク角連動機能はありませんが、アップダウン両対応のクイックシフターやクルーズコントロールといった「長距離走行に効く」電子制御はしっかり標準装備。
その上で、よりパワフルでより軽いという点、そして「GT=グランドツアラー」として長距離走行時やタンデム走行時の快適性を重視した真摯な作り込みがGSX-S1000GTの魅力と言えるのではないでしょうか。
デザインは個人の好みによる部分が大きいところですが、GSX-S1000GTのアグレッシブなスタイルがたまらない!と思った方は……答はいりませんね。
まとめ●モーサイ編集部・上野 写真●スズキ/カワサキ
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