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【角田裕毅を海外F1解説者が斬る】フェルスタッペンのナンバー2を務めるのは楽じゃない

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【角田裕毅を海外F1解説者が斬る】フェルスタッペンのナンバー2を務めるのは楽じゃない

 F1での5年目に突入した角田裕毅は、2025年第3戦からレッドブル・レーシングのドライバーとして新たなチャレンジをスタートした。元ドライバーでその後コメンテーターとしても活躍したハービー・ジョンストン氏が、角田の戦いについて考察する。今回は第6戦マイアミGPを振り返る。

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ペナルティ受けた角田裕毅、ハジャーとの激しいポイント争いを制す「かなり手強かったが、自分の力を出し切った」

 角田裕毅はマイアミで4ポイントを獲得し、レッドブルがフェラーリに対して11ポイントのリードを維持することに貢献した。彼は、土曜日のスプリントレースで、自分の価値を証明したという確信を得たはずだ。一方で、サンシャインステートを去る頃には、チームが自分に何を求めているのかをより明確に理解したことだろう。

 F1チームの運営のなかには暗黙のルールが存在する。私ほど長くF1の世界に身を置いていない読者の方々のために、それについて説明しよう。

 最初、チームはふたりのドライバーを平等な立場に置く。そしてその体制を、どちらか一方が明確に他方を上回るまで続ける。その後は当然ながら、チームの焦点は、より速いドライバーをさらに速くすることに向けられ、彼のドライビングスタイルに合わせてマシンを調整し、レース戦略を最大限に生かし、もう一方のドライバーをサポート役として使う場合も出てくる。

 もしその優遇されたドライバーがチームメイトを打ち負し続けるなら、その時点でセカンドカーに乗る者は誰であれ、チームにとって“おまけ”と見なされ、リーダーに近づけるための配慮は一切なされなくなる。

 このステータスに到達したドライバーはF1でも極めて少ないが、マックス・フェルスタッペンはそのひとりである。過去の例では、ベネトンとフェラーリ時代のミハエル・シューマッハー(メルセデス時代のシューマッハーは含まない)、そしてアラン・プロストを退けた後のマクラーレン時代のアイルトン・セナぐらいだろうか。

 なぜ私がこの話を延々としてきたのか。それは、マイアミのスプリントイベントで、我々は二度にわたって角田が置かれた立場を目の当たりにしたからだ。

 1回目は彼からSQ2に進出するチャンスを奪うことになった状況であり、2回目はスプリントレースにおける出来事だ。スプリントレースでのレッドブルの判断は、結果的に角田に有利に働いたものの、それがチームの主な目的でなかったことは明らかだ。

 スプリント予選は非常に熾烈だ。特にSQ1では、20台のマシンがたった12分の間に良いタイムを出そうと走るため、大混乱となり、トラフィックは深刻な問題となる。クリーンエアを確保することがより一層重要であり、チームはそのために、万全の対応をしなければならない。

 角田は最初のアタックでミスをして自らを苦しい立場に追い込んだが、セッション終盤でクリーンなラップが取れれば、SQ2に進出できたのは明らかだった。しかし残念ながらレッドブルは、角田をフェルスタッペンのすぐ後ろに出してしまった。これは非常にまずい対応だった。

 フェルスタッペンはその時点でドロップゾーンより1秒以上速いタイムを記録しており、全力でプッシュしていたわけではなく、ターン17でワイドになった後、ピットに戻った。

 角田は、最後のアタックラップに間に合うかどうかの瀬戸際だったが、辛抱強くフェルスタッペンの後ろで待ち、コース外から戻ってきたチームメイトを前で走らせるためにペースを落とした。結果として、角田がスタート/フィニッシュラインにたどり着いた時にはセッションは終了しており、そこでゲームオーバーとなってしまった。

 なぜレッドブルがあの最後の走行で角田に優先権を与えなかったのか。あるいは、フェルスタッペンは、タイムを出す気がないなら、なぜチームメイトを前に行かせなかったのか。おそらくチームのすべての焦点がフェルスタッペンに向けられており、誰も彼のチームメイトのことは考えていないからだろう。

 スプリントをピットレーンからスタートした角田は、序盤にガブリエル・ボルトレートとジャック・ドゥーハンを抜いたものの、その後7周にわたってベアマンの後ろに詰まってしまった。路面が乾き始め、フェルスタッペンがマクラーレン勢から遅れていくと、レッドブルは角田をピットインさせてスリックタイヤを履かせた。これは、フェルスタッペンがレースの先頭に立つために役立つデータを集めるためだった。

 しかしレッドブルは、フェルスタッペンのタイヤ交換時に、ピットレーンを走るアンドレア・キミ・アントネッリのすぐ前に送り出して両者が接触するという惨事を起こしたことで、フェルスタッペンの勝利の可能性は消えた。一方で、路面が急速に乾いていったため、角田はベアマンの後ろにいたままだったものの、10位に浮上した。

 レースはセーフティカーの後ろで終了し、彼は順位を上げることはできなかったが、フェルスタッペン、アレクサンダー・アルボン、リアム・ローソン、ベアマンへのペナルティにより、角田は6位に繰り上がり、貴重な3ポイントを獲得した。

 メインレースの予選では、レッドブルは失敗せず、角田はQ3に進出したが、これまで何度もあったように、Q3のなかで前進することはできなかった。RB21からより多くの力を引き出そうとした結果、角田は後退。日曜日の彼のレースは印象の薄いものであり、1ポイントを獲得するにとどまった。

 マイアミの週末から角田が得た最大の教訓は、自分はフェルスタッペンをサポートするためにレッドブルにいるのであり、チームからそれ以上のことは何も期待されていないということであろう。楽ではない立場だ。しかしそれは、多くの人間が経験していることであり、決して珍しいシチュエーションではない。

────────────────────────筆者ハービー・ジョンストンについて

 イギリス出身、陽気なハービーは、皆の人気者だ。いつでも冗談を欠かさず、完璧に道化を演じている。彼は自分自身のことも、世の中のことも、あまり深刻に考えない人間なのだ。

 悪名高いイタズラ好きとして恐れられるハービーは、一緒にいる人々を笑顔にする。しかし、モーターレースの世界に長く関わってきた人物であり、長時間をかけて分析することなしに、状況を正しく判断する力を持っている。

 ハービーはかつて、速さに定評があったドライバーで、その後、F1解説者としても活躍した。彼は新たな才能を見抜く鋭い目を持っている。F1には多数の若手育成プログラムがあるが、その担当者が気付くよりもはるかに前に、逸材を見出すこともあるぐらいだ。

 穏やかな口調でありつつも、きっぱりと意見を述べるハービーは、誰かが自分の見解に反論したとしても気にしない。優しい心の持ち主で、決して大げさな発言や厳しい言葉、辛辣な評価を口にせず、対立の気配があれば、冗談やハグで解決することを好む。だが、自分が目にしたことをありのままに語るべきだという信念を持っており、自分の考えをしっかり示す男だ。

[オートスポーツweb 2025年05月12日]

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みんなのコメント

3件
  • nor********
    かつてのベッテルのNo.2と同じことかね。
    オーストラリアのメディアがリカルドについて「ベッテルのNo.2を務めるのは大変だ。リカルドの方が速いからNo.1になってしまう」、という内容の記事を書いていたけど、そんな感じかな。
    ラウダのNo.2扱いだったプロスト、アンジェリスのNo.2扱いだったセナもそうだったけど、本当に速いドライバーは贔屓されているNo.1を超えてしまうから難しいよね。
  • md3********
    確かに、その通りです。なぜ、2台が要るのか?エースとサブです。セカンドとして角田は良い仕事をしてます。ローソンは別次元だったからね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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