交通マナーのいい旧車を大事するクルマ文化…英国を約4000km走ってわかった「日本が英国に見習うべきところ」
2022/07/05 03:05 ベストカーWeb 30
2022/07/05 03:05 ベストカーWeb 30
今年の夏休みは、コロナのせいでずっと行かれなかった海外旅行に出かけようか、と考えている人も多いかもしれない。その行き先候補として真っ先に上がるのが、入国にあたってコロナ関連の規制がほぼないイギリス。
5月から6月にかけて、イギリスおよびスコットランドのウイスキー蒸溜所巡り中心に約3週間、約4000kmをドライブしてきた。
交通マナーのいい旧車を大事するクルマ文化…英国を約4000km走ってわかった「日本が英国に見習うべきところ」
クルマ好きの筆者が、日本がイギリスに見習うべきところなどを中心に、イギリスのクルマ事情をレポートする。
文/柳川洋
写真/柳川洋
■高速道路の追越車線は追越し時のみ使用する、という意識が強い
イギリスでは高速道路はM1、主要幹線はA9、地方道はB842などと、日本と同様に道路に路線番号が振られている。数字が1桁など小さければ小さいほど、基幹路線であるところも日本と一緒だ。
筆者はエディンバラでクルマを借り出し、まずM90を使ってスコットランドを北上。首都圏でたとえると横浜横須賀道路や小田原厚木道路のような、片側2車線(デュアルキャリアージと呼ばれる)のさほど新しくないモーターウェイだ。
スコットランドの高速道路M90、クルマが少なくて走りやすい。首からかけたアクションカメラで筆者撮影
日本とまず違うのは、高速道路での走行車線からの追越し時に、右ウインカーを出しっぱなしにしたまま追越車線を必要なだけ走行し、追越し終了後は左ウインカーを出して走行車線に戻るクルマが多い。
右ウインカーを出しっぱなしにするというのは、あくまでも追越車線の走行は一時的なものだという意識が強いせいだろう。ウインカーを出さずに追越車線を走っているとやや違和感があるぐらいだ。
だから、バックミラーを見ないクルマが右側車線をふさいでノロノロ走って知らん顔、という日本の高速道路でよくある光景はほぼ見られなかった。
■田舎では飛ばしても街中では減速、サイクリストはリスペクトされる
高速道路の制限速度標識には70と書かれているが、これはマイル表記。時速112キロだ。実際にはこれより流れが速いことも多い。だが、オービスのような自動速度取締機があったり、瞬間速度ではなくA点とB点の通過時間で平均速度を計測する速度取締用のカメラがあったりするので、めちゃくちゃスピードを出すクルマにはあまりお目にかかれなかった。
スコットランドの田舎道では、日本でいえば伊豆スカイラインのような道を、老若男女問わず結構なスピードで飛ばす。クルマの流れは制限速度の時速60マイル、約96キロもしくはそれ以上のスピードだ。
スコットランド北東部、キースの街の近くにて撮影、スコットランドでのドライブはこんな景色が楽しめる
だが、どんな田舎道でも、前方にサイクリストが見えると、手前で大きくスピードを落とす。そしてウインカーを出し、センターラインをまたいで大きく自転車と間隔をあけてから追越していく。
対向車が来ていると、自転車の後ろをクルマがついて走り、安全に追越しができるタイミングを辛抱強く待つ。日本と違ってサイクリストに対するリスペクトが非常に高く、幅寄せなどをしないのが印象的だった。
また、幹線道路を走って街に入ると、制限速度が時速60マイルから30マイルとなる。BMWのM3などのハイパフォーマンスカーが田舎道を時速100キロ以上のスピードで飛ばしていても、街が近づいて制限速度の標識が見えれば急減速する。
一般的には日本よりもイギリスの方が交通マナーがいいという印象を受けた。だが、かつてのイギリスでは、信号が黄色になればほとんどのクルマがちゃんと止まり、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいればクルマが一時停止し、何かあってもクラクションを鳴らすクルマはほとんどいない、という印象が強かったが、ロンドン市街を歩いていたら黄色で加速して交差点を抜けていくクルマ、歩行者に譲らないクルマ、クラクションを鳴らすクルマが以前より多くなった気がする。
友人のロンドンっ子に聞くと、やはりその通りという。彼は、ウーバーの運転手など、ここ10年ほどの間に多くの人が多くの国から移り住んできたせいもあるのかも、と言っていた。
交通マナーが日本よりいいからといって、当然交通事故が全くないわけではなく、エディンバラ空港から市内に向かう幹線道路に入ったすぐのところで、市内に向かう2階建てバスからわりと大きな事故を目撃した。
手前の黒いクルマはウーバータクシーに見える。前のクルマは側面衝突した後、ガードレールに乗り上げたようだ。事故に遭われた方がご無事であることをお祈りしながら通過した。
クルマが計4台絡む事故のようだったが詳細はわからない、エディンバラ市内に向かうダブルデッカーから撮影
■「渋滞税」回避のためにロンドン市内は大混雑
筆者が帰国のためにエディンバラからロンドンに戻った日は、エリザベス女王即位70周年記念を祝う4連休明けの月曜日。まさにその日に、全面ストライキが実施されて地下鉄が完全にストップしていたこともあり、ロンドン市内は大混雑。
渋滞税を回避するクルマで大混雑のロンドン市内、ウーバータクシー頼んだらプリウスだった
地下鉄に乗れず、大きな荷物を抱えていたのでロンドンシティ空港からホテルまでの移動にウーバータクシーに乗った。運転手のポーランド出身の気のいいお兄さんに話を聞いてみた。
「この道、いつもこんなに混むの?」「渋滞税適用区域を迂回するクルマが集中する道が決まっていて、そこはいつもひどい渋滞だ。ストライキのせいでイーストロンドン中心にいつもよりクルマが多い。
Googleマップだとキングスクロスの交差点まで3キロ進むのに45分かかる、と出ているよ。渋滞税のせいで大渋滞して空気が汚染されるなんて、本当にバカげてる。金儲けのための仕組みだよ」と嘆いていた。
これが東京や大阪などの大都市に、渋滞税やEV専用ゾーンが導入されれば、課金を回避するクルマが出てきて同様のことが起きるのは間違いない。これは絶対真似してほしくない。
渋滞税適用区域には特段ゲートのようなものはなく、監視カメラでナンバーが自動認識され、ETCのように自動引き落としかアプリその他で15ポンド、約2400円を決済する。気をつけていないと気づかずに入ってしまいそうだ。
■ロンドンではいたる所にEV用の充電ステーションが、タクシーも道端で充電
日本でも身近に急速充電器が多数整備されれば、EVの普及もより進むように思われる
ロンドン市内中心部では「超低排出車のみ通行可」ゾーンが設定されているせいもあって、EVが非常に多い。そのためパーキングメーターのように充電ステーションがあり、実際に結構使われていた。
通常は電気代が安く、タクシーの稼働率が下がる夜間に充電するのが普通な気がするが、街中で充電するロンドンタクシー、London EV Company製のTX5を見た
TX5の駆動は120kWの電気モーターのみで行い、ボルボ製の1.5リッター直3ガソリンエンジンは発電専用というレンジエクステンダーだ
ロンドンタクシーは、これまでLTI社(London Taxi International)が作っていたが、中国の民族系自動車メーカー、GEELY(吉利汽車)が傘下に収め、新型ロンドンタクシーTX5を開発し、生産。現在はLEVC社(London EV Company)として展開している。
このTX5、クルマの図体が大きくて、どこかで見たことあるな、この威圧感、と思って考えてみたら、ロゴもヘッドライトやテールライトの雰囲気も、イギリスの名門ブランド、現ドイツ資本保有のクルマによく似ていた。
■車歴40年超のクラシックカーは車検が不要
ロンドンの街中で見た、車歴はおそらく40年超なのにピカピカに磨き上げられたランチアベータ
日本と違ってイギリスではクラシックカーを大切に扱う文化がある。具体的には、車歴40年以上で、直近30年間に大きな改造が加えられていないクラシックカーやバイクなどは、車検と自動車税が免除されるのだ。
日本では、車歴が13年を超えると、自動車税が約15%、自動車重量税が約4割、18年を超えると自動車重量税は5割超の増税となる。一般的には旧車は大切に乗られていて年間走行距離も少ないことが多く、環境に対する負荷が高いとは必ずしも言えないのに、「エコでない」として懲罰的な課税が行われている。
クルマ文化をさまざまな面から支えていこうというイギリスと、単に経済政策として新車の売れ行きだけが伸びればいいという日本との大きな違いが現れている。
一つの国に自動車メーカーが8つもあり、これだけ大きな基幹産業になっている自動車生産世界第3位の自動車大国の日本が、クラシックカーを国が大事にしない。改めて悲しくなった。いい加減、クラシックカーへの重課税を廃止してほしい。そして、税金を安くする、英国のようなヒストリックカーナンバー制度を創設してほしいものだ。
以上、日本とイギリスとのクルマ事情の違い、日本がイギリスに見習うべきこと、そうでないことについてまとめてみた。イギリスはやはり多様性が大事にされる国、走っているクルマもEVからクラシックカーまで見ていて飽きることがなく、クルマ好きにはたまらない国だった。
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