塗料・染料、素材の“分子結合”を破壊する太陽光のエネルギー
どんなクルマも劣化には抗えない。年数を重ねるごとに新車の輝きとコンディションは失われていく。例えば塗装にダメージを与えるものとして、酸性雨や黄砂などが広く知られているが、じつはそれらと同等か、それ以上の”破壊力”を持つものとして「紫外線」がある。その影響は塗装のみならず車内にまで及ぶのだ。しかし、それを正しく理解し、意識して対策している人は案外少ないのが実情だ。
クルマのUVカットガラスに潜む罠! 肌の大敵「紫外線」を防ぐ本当の対策とは
1年中降り注ぐ紫外線のピークは5月から7月
太陽光の一部である紫外線=UVは、人間の目に見える可視光線より波長が短い光(目に見えない電磁波)の一種のことをいう。波長の長さによってUV-A、UV-B、UV-Cの3つに分類され、地表に到達する紫外線の約 99%は「UV-A」だと言われている。
紫外線は曇天や冬季を含めて年間を通して降り注ぎ、季節や時間帯、天候、地域によって量が変動。気象庁のデータによれば3月頃から急激に強くなりはじめ、5~7月にかけてがピーク。1日のうちでは10時頃から14時頃までがもっとも強いとされ、日本では南方ほど紫外線量が多い傾向だという。
人的メリットとしてはUV-BによるビタミンDの生成(骨の強化、免疫力の向上、精神の安定化など)があり、ほかにもウイルスや細菌などの殺菌にも効果を示す。
しかし、デメリットももたらし、たとえば紫外線のなかでも比較的波長の長いUV-Aは人間の皮膚の奥深くまで到達し、光老化(シワやたるみなど)の原因になるとされている。そして紫外線をもっとも身近に感じるとすれば、やはり夏場の日焼けだろう。皮膚が赤くなって痛み、その後皮が剥けたりする。ひどい場合は皮膚が腫れ上がって水ぶくれになることもある。
つまり、紫外線は皮膚を熱傷=ヤケドさせるほどのエネルギーを持っていて、まともに受ければ、クルマの内外装もタダではすまないことは容易に想像がつくはずだ。
塗装の分子構造を破壊する紫外線の恐るべき威力
近年のクルマの塗装面は、一番下が下塗り、その上が中塗り、ベースコート、そして一番上がクリアコートの4層で塗り重ねられている。そして塗料は色の元=”顔料”を”樹脂”で固めて作られたもの。この樹脂は微細な無数の分子が結合し、大きな分子の塊として形成された状態で、”高分子化合物”と呼ばれる。そして頑強な樹脂の層になっているのはクリアコートも同じだ。
ところが、きわめて強力なエネルギーを持つ紫外線にさらされ続けると、鎖で繋がれた状態の分子同士の結合が切断され、同時に”ラジカル”と呼ばれる不安定な物質が発生。これもほかの部分の分子結合を次々と破壊していき、クリアコート全体の強度を低下させてしまう。この一連の流れが新車時のツヤや透明感を失わせ、塗装の劣化を感じさせる原因なのだった。
最悪のケースでは、比較的短期間で褪色しやすい赤系の塗装色はピンクがかった色合いに。青色系は鮮やかさが失われるとともに紫や灰色に変色。黒色系ではチョーキング(粉状になる)現象で白っぽく変色。白系では黄ばみが生じるなど、取り返しのつかない状態に及ぶことがある。
もちろん自動車/塗料メーカーがこれを黙って見過ごしているはずはなく、紫外線吸収剤や添加剤などを塗料に配合するなどして耐候性を大きく改善。メーカーや車種にもよるものの、近年では塗装のクリア剥げや、チョーキング、あるいはヒビ割れといった過度のダメージを受けているクルマはほとんど見かけなくなった。
出番は夏場だけにあらず! 1年を通して役に立つサンシェード
新車の塗装がどんなに進化しても、4層に塗り重ねられた塗装膜の厚みはせいぜい1mm程度。一番上のクリア層の膜厚はわずかコンマ数mmでしかない。紫外線の被曝のことも考えれば、ノーダメージということは考えにくい。
クリア層の耐用年数は一般的に「3~10年」と言われていて、仮に10年もったとしても、その間に徐々に美観は損なわれていく。どうしても紫外線を受けたくないなら夜間や雨の日だけしか乗らず、太陽光のまったく当たらない車庫にでも保管しておくしかないが、ありえない話だ。
屋外の駐車場を利用している人の場合、内部にこもる湿気や侵入してくるホコリなどは看過できないが、ボディカバーで紫外線を完全に遮ってしまうのが最善策だ。自宅にクルマを停めるスペースがある人なら、コスト的にカーポートの設置が現実的かもしれない。
では、美観の維持と塗装の保護を目的とした”ボディコーティング”はどうか?
プロが施工する本格的なものや、DIYタイプなど予算に応じた選択が可能。コーティング剤の多くが紫外線吸収剤を配合していたり、保護膜によって塗装面への紫外線の到達を防ぐ効果があるとされる。具体的には、クリア層の表面と酸素が直接接触しないため、紫外線によって発生したラジカルが酸素と反応して連鎖的に化学結合の切断が起こる現象を防ぐ効果が期待できるという。
もっとも、塗装面に定着させることができる被膜の厚みには限界があり、紫外線を完全に遮断するのは難しいと考えたほうがいいかもしれない。また、コーティング被膜も紫外線を受けて徐々に劣化、摩耗もする。定期的な再施工は必須と考えるべきだろう。
変色は当然でヒビ割れもヤバすぎるレザーシート
太陽光によるクルマへの影響を考えた場合、塗装よりも内装のほうがダメージは大きいのかもしれない。
考えてほしい。ボディの前後左右には大きなガラス製のウインドウがはめ込まれた温室状態。真夏は短時間で車内温度が50~70℃以上に急上昇、たとえばダッシュボードの表面温度は90℃に達することもあるという。
強い日差し=高温による影響は決して小さくないが、より注意が求められるのはガラスウインドウを透過する紫外線のほうだ。とくに旧年式車で散見されるクラック(亀裂)の入ったダッシュボード。高熱とともに、フロントウインドウを透過した紫外線が素材の樹脂の内部にダメージを与え続け、ついには割れてしまう症状だ。
また、塗装の項目で述べた変色の問題についても内装でも同じことが言える。迂闊に日の当たる場所に衣服などを長期間放置して退色させてしまった経験はないだろうか? 紫外線の強力なエネルギーは染料の色を構成する化学構造(結合)を分解し、色あせを引き起こすのだ(ちなみに黄や紅色の染料は分子結合が弱く、紫外線で退色しやすい傾向だという)。
クルマの場合、長期間紫外線を浴び続けた布製の内張りやシート表皮が、元の色がわからないほど白茶けてしまうこともある。さらに高級/高額車で定番の本革のシート表皮や内張り、ステアリングなども色褪せだけでなく、ヒビ割れを起こし、見るも無惨な状態になっているケースを多く見かける。
プライバシー保護と紫外線カットの一石二鳥
言うまでもなく、対策は紫外線をできる限り車内に侵入させないこと。そして、もっとも手軽で、かつ手頃な対策品と言えば、”サンシェード”に尽きるだろう。フロントウインドウに被せるだけのきわめてシンプルなものとはいえ、効果は絶大。駐車時の車内温度の上昇を抑える目的で利用している人が多いようだが、じつは紫外線の侵入を84%抑制できる。ウインドウに貼付するUVカットフィルムに至っては100%に近い紫外線カット効果が期待できる。いずれも季節を問わず積極的に活用したいアイテムだ。
自動車メーカーも、内装の保護というより、むしろ紫外線が及ぼす乗員への健康被害の観点から、以前かUVカット機能(紫外線カット率は約80%)を持たせたフロントガラスの採用を進めていて、現在ではほぼすべての新車に標準装備されている。
最近では、トヨタのノア/ヴォクシー、ハリアーをはじめ、日産デイズ、マツダCX-3などに、さらに紫外線 対策を強化した”スーパーUVカットガラス”と呼ばれる高性能UVカットコーティングを施したウインドウを採用している。
その99%というUVカット率は、(人の)日焼けの原因になる紫外線をほぼ遮断可能。紫外線によるインテリアへのダメージが抑えられるのは言うまでもない。
ちなみに、このスーパーUVカットガラスを採用した車両は、運転席または助手席のドアガラスの端部(角の部分)に小さく”M2H3U”と刻印されていることでわかる。
※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております
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みんなのコメント
週のうち5日は職場
だけど、13年以上露天駐車でも、さほど劣化はない
昔に比べ強くなったよ