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高速オリエンテッドなスポーツ・ワゴン──新型アウディA4アヴァント試乗記

掲載 更新 10
高速オリエンテッドなスポーツ・ワゴン──新型アウディA4アヴァント試乗記

ビッグマイナーチェンジを受けたアウディの「A4アヴァント」に今尾直樹が試乗した。アウディの魅力とは?

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この新型コロナ禍で地方への移住を考えておられる方も多いようである。田舎暮らし。いいなぁ。筆者は最近、祖母がつくっていた梅干しとかダイコンの漬け物とか、もう1度食べたい、と、思うことしきり。祖母はずいぶん前に亡くなっているので、田舎に引っ越したからといって食べられるわけでなし。自分でつくるしかない。でも、自分でつくるとなるなぁ……。

というような漬け物の話がしたいのではなくて、先般、アウディ「A4アヴァント」の最新モデルに試乗し、このクルマの美点はなんだろう、と、考えた。そのことについて書きたいのです。

現行A4はインゴルシュタットの大黒柱の第5世代として、2015年9月のフランクフルト・モーターショーで正式デビューを飾った。本国では2019年にマイナーチェンジを受け、それが2020年10月に極東に上陸した。

Sho TamuraSho Tamuraポイントは、エクステリアを全面的に刷新したこと。と、言われても、筆者にはどこがどう変わったのか、わからなかったのですけれど、新旧、並べてみれば、ぜんぜん違う。

アウディいうところの「シングルフレームグリル」がいっそうワイドになり、ヘッドライトのデザインがスッキリして、フロント・マスクがよりシャープになっている。ボディのパネルはほとんどが新しいそうで、マイナーチェンジ前より、全長は10mm長くなり、全幅は5mm増えている。前からカッコよかったけれど、さらにクールになっている。

Sho Tamuraグレードは、ベース、アドバンスト、Sラインの3種類。ベースは、ヘッドライトの上の白い眉毛みたいなデイ・タイム・ラニング・ライト等、装備を省いて価格を抑えたお値打ちバージョンで、みんな眉毛はほしいだろうから、ここにご紹介する35TFSIアドバンストが事実上のスタンダードと考えてよいのではあるまいか。

インテリアではインストゥルメント・パネルを一新し、インフォテインメント用のタッチ・ディスプレイが新たに採用されている。10.1インチのこれは旗艦「A8」のコンセプトを導入したものだ。

駆動系では、A4初のディーゼルのTDIが登場し、ガソリン・エンジンのTFSIともども、ベルト駆動式オルタネーター・スターターと12Vリチウム・イオン・バッテリーを搭載するマイルド・ハイブリッド・システムを採用している。これが技術上の目玉だ。

従来の35TFSIは1.4リッター・ターボだったけれど、これが廃止となり、おなじ2.0リッターの出力違いで、150ps版を35TFSI、249ps版を45TFSIとしている。

ディーゼルもおなじく2.0リッターで、これまた出力違いで、35TDIと40TDIがある。

Sho TamuraSho Tamura山道はもう得意中の得意

で、新型A4アヴァント35TFSIアドバンストですけれど、運転してみての第一印象は、う~む。なんだかパッとしない。乗り心地は硬すぎるし、エンジンはいまどきの2.0リッター・ターボとは思えぬほど、反応が鈍い。アイドリング・ストップからの再始動、およびスタート・ダッシュは特に不満はない。マイルド・ハイブリッドの恩恵だ。でもなぁ……。

そう思いながら、今回の起点となった横浜から箱根方面を目指す。そして、高速道路に上がり、アクセル開度を増すほどに、やっぱりそうなのだ、という確信を抱いた。最新のA4アヴァントもまた高速オリエンテッドなスポーツ・ワゴンだったのである。

Sho TamuraSho TamuraSho Tamura高速道路の平滑な路面では乗り心地は滑らかになり、エンジンは100km/h巡航は7速トップで1500rpm、静々とまわっていて、室内はロード・ノイズがかすかに聞こえてくる程度。高速直進安定性はきわめて高く、まったくもって安心していられる。

山道はもう得意中の得意。水を得た魚。ハンドリングはオン・ザ・レール、シューッと曲がっていく。硬い、と、感じたサスペンションは遠い昔の話、ここではしなやかさを感じさせ、2リッター直噴ターボは6200rpmあたりまで滑らかにまわりきって、「力がない」と、思ったのがウソみたい。最高出力150ps/3900~6000rpm、最大トルク270Nm/1350~3900rpmのパフォーマンスを披露する。

Sho TamuraSho Tamura“中村主水のようなクルマ”

乗り心地が街中で硬い理由は、新型A4の場合、スポーツ・サスペンションが標準になっているから、なのだ。フツウのモデルもSラインみたいに締め上げられている。ひとつ上の45TFSIだとオプションで可変ダンパーを選ぶこともできるけれど、35TFSIはその設定もない。なので、ピュアに硬い。225/50R17のタイヤが低速ではガタビシ来る。その引き換えに高速での快適な乗り心地と、山道での気持ちのよいハンドリングが得られるのである。

ちょっとしたスポーツカーよりも低速で硬いのは、A4がエンジンを縦置きにし、フロント・アクスルより前にオーバーハングしているからなのだろう。

Sho TamuraSho Tamuraこのアウディ独特のシステムはトラクションに優れているけれど、オーバーハングしている分、ボディのピッチングが出やすいという弱点がある。

と、思ったけれど、これは2004年に登場した先代で、ホイールベースを延ばし、前輪を前に持っていくことで、前後重量配分の改善が試みられている。同時に後輪駆動っぽいプロポーションを得て解決済みだった。

とすると、彼らが満足する高速での乗り心地とハンドリングを得るにはこの硬さが必要だったということだ。

Sho TamuraSho Tamuraつまり、アウトバーンの巡航速度、もしかしたら、それよりちょっと上に合わせている。そう考えると、わかりやすい。アウディはこの時代にあっても、アウトバーンの覇者たらんとしている。あくまで、みずから掲げる“Vorsprung durch Technik(技術による先進)”というテーゼに忠実なのだ。Vorsprungとは、ドイツ語で「先行」「優位」という意味だそうで、アウディとはつまり、先を行こうとするひとたちのためのクルマなのである。

街中でエンジンが物足りないと感じたのは、150psの2.0リッター直噴ユニットが、「Bサイクル」と命名された燃焼システムを採用していることによると考えられる。ミラー・サイクルの一種のこのシステムは、通常走行時においては小排気量エンジンの高い効率がもたらされる一方で、スポーティな走行時には大排気量エンジンのダイナミックなパフォーマンスを体験することができるとされる。

Sho TamuraSho TamuraSho Tamura筆者はBサイクルのことをすっかり忘れていたのですけれど、ひとたび全開走行を試み、その実力を知るや、大いなる満足をおぼえ、箱根から変える頃には、これはよき実用エンジンである、と思うにいたった。

150psのA4アヴァント35TFSIは、必要なとき以外は昼行灯を装う、必殺仕置人、中村主水のようなクルマなのである。普段は眠らせておいてあげよう。ときどき起こして、遠くまで突っ走る。いまの世のなかにピッタリだ。

文・今尾直樹 写真・田村翔

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みんなのコメント

10件
  • アバントと書けばいいのにアヴァントとかw
    オーナーをオウナーって書いたりこの業界エンスー被れみたいな人多いのかね。
  • 確かに最近のアウディの乗り心地は固い。メルセデスもBMWも心地よい軟らかさがあるのにもったいない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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