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極寒のラスベガスGPで、F1チームが直面する未知への挑戦。タイヤや冷却、路面と課題は山盛り?

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極寒のラスベガスGPで、F1チームが直面する未知への挑戦。タイヤや冷却、路面と課題は山盛り?

 今週末に開催を迎える”新生”F1ラスベガスGP。F1が大きな期待をかけているイベントだが、各チームは難しい挑戦に挑むことになる。

 この時期のラスベガスは最低気温が10度前後と非常に寒い。ナイトレースでの開催となるため、コンディションはかなり厳しいものとなるだろう。

■スタンディングウェーブにグレイニング……F1ラスベガスGPがタイヤに過酷なのはなぜか?

 当然、3種類のタイヤをいかに効果的に機能させるかがパフォーマンスを大きく左右する。一方で、異例とも言える低温コンディションの中でのレースは、マシン全体の冷却、ひいては各チームのエアロ仕様にも大きな影響を与える。

 そのため、F1チームはこれまでにないチャレンジに直面するだろう。空気が薄く、最大限の冷却が必要だったメキシコシティGPと比べ、ラスベガスGPはその対極に位置している。

 パワーユニット(PU)の面では、熱すぎるコンディションを苦手としているのは明らかだが、同様に極寒のコンディションで作動するようには設計されていない。温度が低くなれば基本的にエンジン出力は上がるはずだが、プレナムチャンバーが冷えすぎないようにする必要があるし、バッテリーは低温環境が得意ではない。

 冬のテストや、フィルミングデーなどでF1マシンが極寒の中で走行するケースがないわけではないが、ラスベガスGPは通常のグランプリであり、PUの使い方など妥協が許されない。

 ラスベガスの有名な大通り”ストリップ”を走るロングストレートは1.9kmにもおよぶ。アゼルバイジャンGPが開催されるバクー市街地コースと同様、ストレートを走っている間にブレーキやタイヤが冷えてしまうという問題にチームは悩まされることになるだろう。

 市街地コースによくあるバンプも、まだシミュレータで完全に再現できていないというのも、チームにとっては懸念事項だろう。

 ウイリアムズの車両パフォーマンス責任者であるデイブ・ロブソンは、「タフだね」と語った。

「今のところ路面についてはほとんどわかっていないし、それがタイヤとどう影響し合うかが週末の展開を大きく左右するだろう」

「コースのレイアウトに関しては十分に理解しているし、シミュレータで走らせて大まかな見当をつけることもできる」

「こうした新しいサーキットに行く場合、明確なスタート位置を決めて臨むことが重要なポイントになるが、実際に何が起こっても対応できるように、多くのオプションも準備している」

「確かに、ベガスでのマシンの挙動を正確に予測することはできない。だから、何が起こっても可能な限り早くカバーすることができるようにしている」

 未知への一歩という意味では、他のチームも同じような意見を持っている。

 アルピーヌのトラックサイドエンジニアリング責任者、キアロン・ピルビームは「寒くなるはずだ」と話す。

「どの程度寒いかは分からないがね! 新しいサーキットは常に面白いんだ。イベント前のシミュレーションやシミュレータでの作業はいつも通りだが、何が起こるかまったくわからない」

「バンピーさとか、路面の状態とか、そういうことは常に変化する。イベント前にできることはすべてやるつもりだが、完全にカバーすることはできない。最初の2、3回のフリー走行で学ぶ準備をして臨む必要がある」

 今シーズンを通して、タイヤマネジメントはレースにおけるキーポイントのひとつとなることが多い。前戦サンパウロGPでもレッドブルやアストンマーチン、アルファタウリが上手くタイヤを使えていた一方で、メルセデスのようにそうではなかったチームとの間で大きな差が見られた。

 タイヤが上手く機能する温度領域は限られており、ラスベガスでそのスイートスポットを見つけるのは、メカニカルセットアップやアウトラップでの準備など、様々な要素が絡むため、そう簡単ではないかもしれない。また、レース途中でセーフティカーが入った後などは、タイヤが冷えている中での特別なチャレンジになるだろう。

 レッドブルのチーフエンジニアであるポール・モナハンも、警戒を怠っていない。

「タイヤに関しては、本当にいつもとは違う環境に持ち込むことになる」

「数年前、10月にニュルブルクリンクに行ったが、毎日雨で寒かった。数年前のオースティンは、特に凍えるような寒さだった」

「寒さによるクラックが入る心配もあるし、タイヤの扱い方も含めてすべてに気をつける必要がある。そう、タイヤは使用可能な範囲の下限にあるんだ」

「だから、ホイール・ボディワークの自由度の範囲内で、クルマをオペレーションし、タイヤが機能するところまで持っていけるかどうかは、我々次第なのだ」

「我々全員がその課題に直面している。3種類のコンパウンドすべてにとって、寒すぎるんだ。まともなスティントを走れるのに十分な時間、タイヤを作動温度領域に入れることができるかどうかなんだ」

 モナハンの言うホイール・ボディワークとはブレーキダクトやその周辺の空力パーツなどを指す。しかしそれ以外の空力パーツも、コンディションの影響を大きく受けるはずだ。

 カタールやメキシコでは、ほとんどのチームが冷却のためにルーバーを追加したり、エンジンカバーの開口部を広げたりしたが、ラスベガスではその必要はない。

 そうなると、各チームは直線のスピードを向上させるために空気抵抗の低減を重視するようになると思うだろうが、必ずしもそう単純ではないようだ。

「空力面でのゲインより、PUやギヤボックス、その他もろもろの動作ウィンドウを管理することが重要なんだ」と、ピルビームは説明した。

「でも、その準備はできている。冬のテストのように寒くなるかもしれない。現地に着いてから何が見つかるか、正確に知るのは難しい。冬のテストでは、ラジエーターを少し外す必要があるときがある。そういうコンディションになるかもしれない」

「でも準備はできていると思う。以前よりも作動ウィンドウは広くなっている。カタールで見て分かる通り、クルマの作動温度領域は非常に広いんだ」

 モナハンも、チームがアジャストできるはずだという意見に同意している。

「正直なところ、マシンの冷却についてはそれほど心配していない。今年の2月にシーズン最初のフィルミングデーを走ったんだけど、シルバーストンで震えていたよ」

「もっとクローズドなクルマが出てくるだろう。もしかしたら、ボディ上部の冷却出口を後ろ側に変更する人もいるかもしれない」

「ラジエーターをストールさせたくないんだ。背圧が高くなって、ラジエーターが機能しなくなるかもしれない。でもそれは我々次第だ」

 各チームは、冷却とダウンフォースレベルの複雑な関係をうまく調整しなければならない。

「大雑把にまとめると、クルマをオープンにするとダウンフォースが少し減るということだ」とモナハンは付け加えた。

「だから、クローズドにすればするほど、ダウンフォースは向上する。通常、ドラッグは冷却装置よりもタイヤやリヤウイングのほうが大きいんだ」

「マシンに少しでも荷重をかけることができるなら、そうするつもりだ。でも、シーズン終盤に差し掛かっているから、トップボディをまるごと新しくするなどはできないし、選ぶことができる選択肢は少ない。今ある選択肢の中からやってみるつもりだ」

 予算制限の影響により、F1チームがある特定のレースのために新しいパーツを設計・製造することは、ビッグチームにとってもある種の贅沢になりつつある。

「興味深いのは、この予算制限の世界で生きている今、我々が何をするかということだ」

 そうロブソンは語った。

「以前なら、おそらく新しい小型の冷却パッケージを作り、ダウンフォース向上のために不要な冷却を交換しただろう。他にもやっておきたいことがいくつかあったかもしれない」

「でも、今は『そんなことをする価値があるのか』と考える必要がある。特にシーズン終盤になればなるほど、それまでの数ヵ月でどれだけ消耗し、そのためにコストを費やしてきたかに左右されるだろう」

「私はこれが、『予算制限下において特定のサーキットに最適化されたパッケージを選ぶのか』の良い例だと思う。なぜなら、パーツを作っても他では使わないからだ」

「それをやるのか、やらないのか? そしてそれは、他がどうするかによって決まる部分もある。だから、全体的にちょっとしたゲームのようになるんだ」

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