BMW Mのエントリーモデル「M2」は刺激的な1台だった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
新型BMW M2の特徴
1.伝説の“マルニ”を彷彿とさせる、エレガントにして力強いシルエット2.スパルタンと快適性が交差する空間3.BMWらしい直列6気筒1.伝説の“マルニ”を彷彿とさせる、エレガントにして力強いシルエット
BMW M社が手掛けるハイパフォーマンスカーラインナップにおいて、エントリーモデルとしての役割を担うのがM2だ。
しかし、“エントリーモデル”の言葉から想像される妥協は、一切存在しない。現代の自動車市場において希少となりつつある直列6気筒エンジン+後輪駆動(FR)+コンパクトなボディサイズといった、スポーツカーとしての黄金比を色濃く残すM2は、熱狂的なドライビング愛好家にとってまさに至宝と言える存在だ。
実車を目の前にしてまず感じたのは、凝縮されたプロポーションの美しさである。兄貴分にあたるBMW「M3」や「M4」と比較すると前後オーバーハングが切り詰められており、ショート&ワイドなスタンスが強調されている。特徴的なシルエットは、かつて名車として語り継がれる“マルニ(BMW 02シリーズ)”を強烈に彷彿とさせる。当時の2002ターボが現代に蘇ったかのような、ノスタルジーと最新テクノロジーが融合したデザインだ。
試乗車のボディカラーはBMW Individual Special Paintによる落ち着いたソリッド系のグレー(オプション価格は¥680,000)が選択されていた。
昨今の高性能スポーツカーでは、ブラックアウトされたホイールやエアロパーツを用いてアグレッシブさを過剰に演出する傾向があるののの、試乗車には端正なシルバーのホイールが装着されている。このカラーコーディネートにより、Mモデルならではの凄みを内に秘めつつも、決して荒々しさを前面に押し出さない、エレガントで洗練された佇まいだ。“能ある鷹は爪を隠す”といった表現がこれほど似合うスポーツカーも珍しい。
ボディサイズは全長4580mm、全幅1885mm、全高1410mm。都内の細い路地や駐車環境を考慮すると、全幅1885mmはまさに持て余さない絶妙な寸法だ。最小回転半径も5.2mに抑えられており、取り回しの良さは日常使いにおいて大きなメリットとなる。
2.スパルタンと快適性が交差する空間
今回の試乗車には、驚愕のオプション価格である¥2,300,000の「M レース・トラック・パッケージ」が装着されていた。
本パッケージには「Mカーボン・バケット・シート」を含む。シートバックだけでなく、座面の一部にもカーボンファイバーが露出しており、見るからに軽量かつスパルタンな造りとなっている。実際に座り込む際には、高く張り出したサイドサポートを乗り越える必要があり、乗降性はお世辞にも良いとは言えない。
しかし、一度座面に身を収めてしまえば、身体の芯から車体と一体化したかのような強烈なホールド感に包まれる。ブルーとレッドのMカラーのアクセントや、ヘッドレスト下部でイルミネーション点灯する“M2”のエンブレムなど、視覚的な満足度も高い。
スパルタンなシートでありながら、電動調整機能が備わっている。これにより、体格に合わせた細かなドライビングポジションの最適化が可能だ。
M2は生粋のスポーツカーでありながら、定員4名の実用性を兼ね備えている。後席に乗り込んでみると、足元のスペースこそタイトではあるものの、Cピラーの角度が比較的立っているデザインの恩恵もあり、ヘッドクリアランスはそれなりに確保されている。
大人4人が常時移動するには窮屈かもしれないが、短~中距離の移動であれば大人が座っても耐えうる居住空間が確保されており、単なる“プラス2”の荷物置き場ではない。
さらに驚かされたのがトランクスペースだ。トランクを開けると、奥行きがあり、複数の大きなトートバッグや荷物を余裕で飲み込むだけの十分な容量が確保されていた。ライバルとされるスーパーカーや2シータースポーツカーと比較すると、実用性の高さはM2の大きなアドバンテージだ。
ダッシュボードには最新のカーブド・ディスプレイが鎮座し、モダンなBMWの文法に則った操作系が広がる。センターコンソールには「SETUP」や「M MODE」のボタンが配置され、車両のセッティングを呼び出せる。また、カーボンファイバーのトリムが随所にあしらわれ、レーシーな雰囲気を高めている。
さらに、試乗車は¥129,000の「M コンフォート・パッケージ」を装着。ステアリング・ホイール・ヒーティングやサンプロテクション・ガラス、そしてharman/kardonサラウンド・サウンド・システムを含む。特に、厚みのある良質なサウンドを奏でるオーディオシステムは、市街地をクルージングする際に大きな癒やしを与えてくれる。
3.BMWらしい直列6気筒
ボンネットの下に鎮座するのは、BMW M社が誇る排気量3リッターの直列6気筒DOHCツインパワー・ターボ・エンジンだ。
本パワーユニットは、兄貴分であるM3やM4に搭載されている高性能エンジン「S58」がベース。最高出力は480ps/6250rpm、最大トルクは600Nm/2700rpm~5620rpmの圧倒的なスペックを誇る。
エンジンの最大の特徴は、ターボエンジンでありながら自然吸気エンジンのような極めてスムーズな吹け上がりと、高回転域まで淀みなく回る官能性にある。
低回転域(2700rpm)から最大トルクの6-0Nmを発生し、それを5620rpmまでフラットに維持し続ける強靭なトルク特性を持つ。これにより、極低速域でも想像以上にトルクがあり、市街地でのストップ&ゴーでは驚くほど柔軟で気難しさを一切感じさせない。
しかし、ひとたびアクセルを深く踏み込めば豹変する。レッドゾーンに向かって暴力的なまでの加速力を見せ、パワーの頭打ちを感じさせない。鍛造軽量クランクシャフトや、サーキットでの過酷な環境に耐えうる冷却・潤滑システムなど、モータースポーツ直系の技術がこのコンパクトなボディに押し込まれており、まさに“珠玉の名機”と呼ぶにふさわしい完成度を誇っている。
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