バブル期に絶頂を迎えたカテゴリーといえば4ドアハードトップだ。ざっくり言えばBピラーを廃したモデルを指し、見た目の解放感が凄まじかったモデルたちである。
具体的にはセドリックやグロリア、クラウン、そしてマニアックなところをいえばエテルナなど各社しのぎを削っていたのだった。ところが、いつしかハードトップという言葉は聞かなくなってしまった。一時代を築いたのに姿を消してしまったワケとは!?
クラウンにセドグロ……超カッコよかったのに!! ハードトップはなぜ消えたのか!?
文/小鮒康一、写真/TOYOTA、NISSAN、MITSUBISHI、MAZDA、HONDA
■スタイル抜群だったのに……一世風靡するも今や絶滅状態
1989年登場の2代目トヨタ カリーナED
クルマのボディ形状を示す言葉のひとつである「ハードトップ」。これは直訳すると「硬い屋根」を持ったクルマということになるので、一部のオープンカーを除けばほとんど該当してしまうではないか、ということにもなってしまう。
もちろんそんなことはなく、語源となったのはオープンカーが着脱式のハードトップを装着したときのように、ドアサッシュやピラーがなくスッキリ見えるボディタイプのことを指している。
昔は2ドアのクーペスタイルの車両を中心に採用されていたハードトップスタイルだったが、時代が進むにつれて4ドアセダンにも採用例が増えた。
一時期はローレルやスカイライン、マークIIといったミドルクラスの車両からセドリック&グロリアやクラウンといった高級車までにもハードトップモデルが設定されるほどの人気となっていた。
そして1985年に登場したトヨタ カリーナEDでは、4ドアでありながらクーペ並みの低いシルエットと小さなキャビンを持つスタイルが一躍人気となり、空前の4ドアハードトップブームが到来。他メーカーからも日産プレセアやユーノス300&マツダ ペルソナなどのフォロワーを生むほどの人気となったのである。
しかしこのブームは長く続くことはなく、カリーナED(とその兄弟車のコロナEXiV)以外のモデルはすべて1世代のみで姿を消してしまっている。
また、セドリック&グロリアは2004年にフーガへバトンタッチしたタイミングで、クラウンはそれよりも早い1999年に11代目へとフルモデルチェンジを果たしたタイミングでそれぞれハードトップモデルが消滅しているのだ。
このように一時期は覇権を握る勢いで増殖していた4ドアハードトップであるが、今ではすっかりその勢いは廃れてしまっている。その理由とはどんなところにあったのだろうか?
■カッコいいけど……ピラーがないゆえ衝突安全性能に問題
1983年登場の6代目日産 セドリック
まず、いわゆる「ピラーレスハードトップ」と呼ばれるBピラーが存在しない(正確にはルーフまでつながっていない)モデルについて。これは日産のセドリック&グロリアやシーマ、ローレルを始め、前述のカリーナEDなども採用していたもので、すべての窓を開け放ったときの圧倒的な解放感が魅力だった。
しかし、当然ながらBピラーがルーフまでつながっていないということは、その分ボディ剛性面では不利となり、側面衝突時などの安全性の確保にも多額の費用が必要となるという決定的な弱点が存在していた。
それだけに日に日に高まる安全基準をクリアするためにも、Bピラーを持たないピラーレスハードトップの4ドアセダンは姿を消していったということになるわけだ。
ちなみにBピラーを持たない4ドアハードトップ車の中でも古いモデルについては、シートベルトを外して格納するようになっている車種もある。
これは1992年11月までは一般道においてシートベルトの着用義務がなかったためにできる芸当となっている(とはいえ今の感覚でシートベルトなしでピラーレスハードトップに乗るのは恐怖しかないが)。
またBピラーは残るものの、ドアの窓枠を持たないいわゆるサッシュレスタイプのハードトップについても、当然ながら窓枠がない分、ドア本体の剛性が低下するのに加え、窓枠がないことで気密性が低下して遮音性が悪化するという弊害も存在してしまう。
これがスポーツカーやオープンカーであればそこまで問題にならないだろうが、快適性もないがしろにすることができない4ドア車では看過できないポイントとなってしまったのである。
■絶滅要因はセダン不人気にあり! 人気回復すれば復活の可能性も
そして何より、現在の日本ではそもそも4ドア車の人気が圧倒的に低下してしまっており、新規に4ドアハードトップ車をリリースしても採算が取れないというのが最大の消滅の理由と言えるだろう。
現に、現在でも一部の高級輸入モデルにおいては4ドアクーペなどと呼称されるサッシュレスのドアを持つモデルも販売されており、スタイリッシュなフォルムが一定の人気を博しているのはご存知の通り。
さまざまな技術が進化した現在であれば、衝突安全性や快適性なども担保した4ドアハードトップ車を作るのもそこまで難しいことではないハズなのだが、そもそもの需要が少なければ誕生することもないというのが悲しい現実となっているのだ。
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