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わずかな改良で驚くほど進化した日本のフラグシップ──レクサス LS500h試乗記

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わずかな改良で驚くほど進化した日本のフラグシップ──レクサス LS500h試乗記

クルマをスタートさせてから約100m、交差点をひとつ曲がっただけで「おっ!」と、思った。なぜなら、現行にフルモデルチェンジした直後のモデルで失われていた“美点”が戻っていたからだ。

2017年に登場したレクサスの5代目「LS」は、全長5mオーバー、車両重量2tオーバーの巨艦を感じさせないフットワークの軽さや、一体感のあるハンドリングを手に入れたのと引き換えに、美点だった快適性や静粛性が犠牲になっていたところもあった。

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しかし、年次改良された新型に乗ると、「路面が変わった?」と、いぶかるほど凹凸をやさしく吸収するようになったうえ、バネ下がドタバタする印象も減った。サスペンションがよりスムーズに動いているのだ。また、アッパーマウントまわりから共鳴していた衝撃音もショックアブソーバーの吸収性が高まったせいか薄れている。

従来モデルでは、運転時にドライブモードを「コンフォート」に変更するのが約束だったが、新型は「ノーマル」で十分快適だ。今回乗ったモデルはスポーティ仕立てのグレード「Fスポーツ」だったため、足まわりのセッティングもそれなりにスポーティ向きであるものの、乗り心地は終始しなやかだった。

静粛性も大きく向上している。従来モデルも一定速では静かだったが、アクセルを強く踏み込むと、エンジンの回転数が一気に上昇し「静」と「動」のギャップが大きかった。新型は、エンジン始動後も回転数が一気に上昇しない制御に変わったため、静かだ。

もちろん、これまでの美点も健在だ。操舵力は軽めであるものの、カッチリとした安心感のあるステアリングフィール、操作に忠実な応答性、前後バランスの良さ、ライントレース性の高さなど、サイズがひとまわり小さく感じてしまうような一体感のある精緻なハンドリングは、従来モデルから不変だ。

小規模改良とは思えぬ驚きの進化!

パワートレーンは、モーター出力やバッテリー容量こそ変更ないものの、実際に走らせると、EV走行の頻度やモーターアシストの粘りが増した印象だ。しかし、レクサスのプレスリリースに記載されている走りに関する変更点は、わずか2点だ。

ひとつ目はAWDモデルのショックアブソーバーだ。伸び/縮みでそれぞれに適したオイル流路を使ったバルブ機構の「伸圧独立オリフィス式ショックアブソーバー」の採用により、減衰力可変幅が拡がり、摩擦も低減し、乗り心地がレベルアップしたという。

ふたつ目はハイブリッドモデルの静粛性アップで、エンジンサウンドや変速制御をチューニングしなおし、制振材も追加した。

今回の試乗車はハイブリッド仕様のLS500h Fスポーツの後輪駆動(FR)だ。ふたつ目の静粛性向上は納得出来るが、ひとつ目は「AWDモデルの……」と、記載されているから、試乗車にはあてはまらないはずだ。にもかかわらず、後輪駆動モデルの快適性も進化しているのはなぜか?

当初は個体差ではないか? と、思ったものの、個体差にしては差が大きすぎる……。そこでレクサス全モデルの走りの味付けを担当している伊藤好章氏に質問した。

伊藤氏は、「構造的な変更はありませんが……」と、前置きしつつ「変わっている? 変わっていない? と、問われれば変わっています。たとえば、従来モデルのショックアブソーバーは、低温時の低速走行で聞こえる“シュッシュッ”といった音への対策が間に合わず、われわれが求める性能に満たない部分もありました。しかし、年次改良モデルでは対策を講じたので、本来の性能に達しました」と、述べた。

ちなみに、“シュッシュッ”という異音は、ショックアブソーバー内のオイルがオイル流路(オリフィス)を通過する際に出てしまう音で、欧州車のカタログや説明書には「構造上によるもので故障ではない」と、注記されているケースも多い。しかし「レクサスでは看過できません」という。「それなら最初から対策すればよかったのに」と、思ったが、早急にアップデートした点は高く評価したい。

新型LSは、運転席が特等席であるドライバーズカーのキャラクターこそ変わらないものの、フォーマルセダンとしての魅力が大幅に増していた。今回の年次改良によって、LSは想像以上に進化したのであった。

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