オーストラリア市場において、日本より1年早い2022年から販売されているBYD。その性能、価格などから高い支持を受け、販売台数はなんとトヨタに次ぐ2位にまで上り詰めているという。好調が続くBEVブランドの海外事情を探ってみたい。
文:古賀貴司(自動車王国) 写真:BYD、トヨタ
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長年市場でメインだったライバルを押しのけての2位
オーストラリアの新車市場で、静かな下克上が起きようとしている。BYDが2026年4月、5月と2カ月連続で販売台数全体の第2位に入った。
長年トヨタの独走を許してきた市場におけるBYDの躍進ぶりは、新たな時代の幕開けを予感させる。
オーストラリアの自動車市場は、時代ごとに主役を変えてきた歴史を持つ。かつてはフォード(地元企業だと誤認している人も居た)と地元ブランド(GM傘下ではあったが…)のホールデンが市場を二分する時代が長く続いた。
その後トヨタを筆頭とする日本勢が台頭し、ヒョンデやキアといった韓国勢がそれに続いた。そんなオーストラリア市場において、BYDは着実に存在感を増している。
2026年5月、オーストラリアの自動車業界団体「FCAI(Federal Chamber of Automotive Industries/連邦自動車工業会)」が毎月発表している新車販売統計、VFACTSデータによればトヨタは1万6342台を販売し首位を堅持。BYDは8211台で第2位となり、前年同月比でなんと154.6%増という伸びを記録している。
フォードの7195台、ヒョンデの7007台、キアの6761台をすべて退けての2位だ。4月単月でも構図は同じだった。
トヨタの1万5185台に対し、BYDは7702台、市場シェア8.3%で2位に入っている。トヨタとの台数差は今も8000台前後と大きいが、“いつか追われる”存在から“すでに食い込まれている”存在へと、その立場は変わりつつある。
快進撃の背景にある中国政府による強力な支援
注目すべきはBYDの好調を支えているのが、一台の主力モデルではないという点だ。
中型SUVのシーライオン7が単月で1538台、軽自動車のアットワン1がそのカテゴリーの最量販車に輝くなど、ハッチバックからSUV、ピックアップ、セダンまで幅を広げた「総合自動車ブランド」へと進化した結果なのである。
2025年には世界販売台数でテスラを上回り、世界最大の電気自動車ブランドへと躍進したBYDだが、今のオーストラリアではその矛先がトヨタへと向かい始めている。
FCAIでは「新車効率基準(NVES:2025年1月から導入した新車の燃費・CO2排出規制)」の導入や政府の電気自動車購入支援策と並んで、中東情勢の緊迫化によるガソリン価格の高止まりがEVへの乗り換えを加速させている要因のひとつだと指摘している。
5月の市場全体を見渡すと、主役はBYDだけではなかった。同月の電動化率(HEV・PHEV・BEVの合計)は46.4%に達し、純電動車(BEV)だけでも19.9%という記録的な水準まで上昇した。
テスラのモデルYが単一車種としてオーストラリア全車種中の月間販売トップに立ったのも、この5月が史上初めてのことだ。
また、BYDの快進撃の背景には、中国政府による強力な支援があるとOECD(経済協力開発機構)が指摘している。
OECDが世界525社、2005年から2024年までのデータを分析したレポートによれば、2024年に中国の自動車メーカーが受け取った政府補助金は合計114億ドルに達した。
これは欧州(約31億ドル)や北米(約44億ドル)の支援規模を大きく上回る数字である。
OECDによれば、中国メーカーへの支援は絶対額で他国の約2倍、企業規模に対する相対額では実に4倍に相当するという。また、スポーツ界で例えるなら“ドーピング”であるとまで言及。
なお、中国による産業界への支援は自動車に限らず、調査対象とした15業種のほとんどのケースにおいて世界最高水準とのこと。“自国の産業を育成する”と言えば聞こえは良いが実質、我々は貿易戦争の真っただ中なのかもしれない。
トヨタにどこまで肉薄できるのか…要注目
世界を席巻するBYDではあるのだが、自国市場では決して安泰ではないという事実は興味深い。
2025年通期の純利益は前年比19%減の約69億ドルにまで落ち込み、中国国内シェアでは地元ライバルのGeelyに首位を奪われている。
世界販売も一時的に前年同月比で4割減という報道が出るほど、中国における値下げ競争は過酷を極めている。
BYDにとってオーストラリアのような海外市場での躍進は単なる「攻め」ではなく、国内の苦戦を補う生命線でもあるのだろう。
オーストラリアの新車市場は年間およそ120万台規模で、世界全体の需要(年間1億台超)からすれば決して大きくはない。
それでもアジア太平洋では中国、日本に次ぐ規模であり、さらに右ハンドル市場という特性から、各メーカーが海外展開を試す試金石としての存在感は侮れない。
また、BYDにとっても主力のピックアップ「シャーク6」が世界で最も売れているのはこのオーストラリア市場であり、その意味は台数以上に大きい。
BYDがトヨタの背中をどこまで追い詰められるか、その裏でどんな駆け引きが起こるか、オーストラリア市場は目が離せない。
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みんなのコメント
BYD本社の決算は好調のようで、実は損失を先送りしている火の車だそうで
倒産時の大ショックがどれほどのものか考えただけでも恐ろしい