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走りの質、伝統を内包しながら新時代のビークルとしての完成度を追求したアウディ「e-tron 50 quattro advanced」

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走りの質、伝統を内包しながら新時代のビークルとしての完成度を追求したアウディ「e-tron 50 quattro advanced」

連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 昨年、アウディが日本に導入した同社初のEV(電気自動車)「e-tron Sportback 55 quattro」に続く、第2弾のEVモデル「e-tron 50 quattro」が早くも発表された。装備によって違いのある4モデルが設定されているが、実質的なベーシックモデルである「e-tron 50 quattro advanced」に試乗したので、その模様をお届けしたい。

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機械として優れているか? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)

 第1弾との違いは、ボディーの形状とバッテリー容量、モーター出力など。第1弾は“Sportback”を謳うクーペSUVなので、ルーフが後端に向かうに従ってなだらかに傾斜していくデザインが特徴だ。

 それに対して、「e-tron 50 quattro advanced」はオーソドックスなSUVなので、ルーフはほぼ平坦に伸びて行き、後端でストンと落ちている。その分、トランクの容量は660ℓと少し大きくなる。ちなみに「55」は616ℓ。「Sportback」は、後席に乗り込む際、少しだけ首を屈める必要があったが、このクルマはそれがない。使い勝手での違いはほとんどなく、強いて言えばそれぐらいだ。

 車名にも現われている「55」と「50」の違いは、最近のアウディのモデル名称の表示方法によるもの。それぞれ最高出力が、「55」が300kWで、「50」が230kWとなっている。バッテリー容量も異なっていて「55」が95kWhであるのに対し「50」は71kWh。また、航続可能距離(WLTCモード)は「55」が400kmで「50」は316kmとなっている。

 走行モードはいくつかのモードに切り替えることが可能で、前後1基ずつの2モーターで4輪を駆動する方式も変わらない。ただ、運転してみても、限られた時間ではその違いを見つけることはできなかった。

「Sportback 55 quattro」に乗ってみて感じたのは、静かで滑らかで、上質な運転感覚だ。搭載するバッテリーの容量が異なることもあって、車両重量が「55」は2560kg、「50」は2400kgと、160kgも違いがあるが、それを意識させられるようなこともなかった。もしかすると、違いがあるのかもしれないが、それよりあらためて「e-tron」という、アウディが初めて造ったEVの走りの質の高さのほうに感銘を受けるばかりだった。

 最近では、大型SUVが増えて、2tを超える車両重量に驚くことも少なくなったが、2400kgといったらかなりの重量級だ。ところが、どちらの「e-tron quattro」も車重を感じさせない走りをする。コーナーからコーナーへと切り返していく際の荷重移動の滑らかさは、特筆すべきレベルだと思う。

 床下に搭載されたバッテリーを強固なサブフレームでシャシーに固定されていることの利点が生かされているのだろう。アウディ以外の他社のEVでも、このバッテリーのフレームを車体剛性の向上に活用しようという試みは実際に行なわれてはいるが、車体とバッテリーが大きい分「e-tron」はその効き目を特に感じる。

 EVであることのメリットを積極的に活用して、エンジン車では得られない走行感覚をもたらすアウディの技術力はさすがといえるかもしれない。

商品として魅力的か? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)

「e-tron」が登場する以前から、アウディ車が採用してきたドライバーインターフェイスは先進的だった。しかし、それでも近年のクルマの高性能化、高機能化が加速したことで、ボタンやスイッチ類が増え続け、ライバルとなるメルセデス・ベンツやBMWなどより、煩雑な印象を免れることはなかった。

 シフトレバーの付け根の周囲に配されたボタンがだんだんと増えていき、慣れるまで苦労したドライバーも多いのではないだろうか。運転中に、ステアリングの斜め下を見ながら、対象のボタンを探さなければならない苦労があった。

 しかし「e-tron」の登場によって、それも一気に解消。センターパネルを大型化し、2枚に増やした。タッチだけでなく、ステアリングホイール上のボタンや音声入力でも操作できる。アウディ初のEVだから、パワートレインだけでなくドライバーインターフェイスも一新したのか、それとも、たまたまそうしたタイミングだったのかはわからないが、商品としての魅力を高めていることは確かだ。

 これで、ドライバーインターフェイスが以前のままの煩雑なものだったら「単にパワートレインが電動化されただけ」のクルマとして魅力を半減させていたことは間違いない。これがちょうど良いのだ。「55」で初めて採用された「バーチャルエクステリアミラー」も同様に、「50」でも26万円のオプションで搭載することができる。慣れれば、絶対にこちらのほうが見やすく使いやすいはずだ。

 バッテリー容量が小さく、その分、航続距離は短くなるが「e-tron 50 quattro advanced」は1069万円(消費税込み)と「55」より価格が低くなる。「55」は、ファーストエディションの装備が満載だったこともあって1327万円(同)。

「e-tron 55」も「50」も、アウディのEVとしては魅力的なクルマに仕上がっている。4輪駆動のクワトロシステムやオフロード走行のためのallroadモードなど、アウディの技術や商品DNAを内包しながら、新しい時代のEVとして完成度を高めている。

◆ 関連情報
https://www.audi.co.jp/jp/web/ja/models/tron/audi-e-tron.html

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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