磐越道で起きたマイクロバス事故は、運転者の問題だけでは片づけられない重い課題を残した。ガードレールの端部処理、レンタカー車両での運行体制、そしてバス乗車時のシートベルトまで……。再発防止のために見直すべき点は何なのか?
文:近田 茂/画像:ベストカーWeb編集部、いすゞ、グーグルマップ、Adobe Stock(トビラ写真=korokorokoro123@Adobe Stock)
【画像ギャラリー】再発防止にはなにが必要? ガードレール設置様式や視覚から考える移動の安全(6枚)
※画像はイメージです
今回のバス事故、いったいなにが起きたのか?
大型連休の最終日、5月6日の朝8時頃に磐越自動車道で発生したバス事故について、現場の詳細な実況を取材したわけではない。あくまでも多くの一般報道を見聞きした中から正しい情報として認識できたのは、事故車両が日野自動車のリエッセII。ロングボディの29人乗り仕様で、いわゆるマイクロバスと呼ばれるレンタカー車両であること。
場所は磐越道の上り線。長さ約1.1kmの新玉東トンネルを抜けて磐梯熱海インターチェンジまであと2kmを示す案内表示板を過ぎると直ぐ左手に「タイヤチェーン着脱所」が現れる。その末端が衝突現場となった。
郡山市熱海町を通る県道24号(中ノ沢熱海)線が高架下で交差する地点に近く、制限速度80km/hの現場は見通しの良い、ごく緩やかな右カーブを描く。部活動の遠征で移動していた高校生20名を乗せた68歳の運転者は、何らかの理由で運転に集中する意識が途切れたと思われる。おそらく1~2秒程度のことだろう。
車両はほぼ直進状態で走行車線を外れ、路側帯も越えながら水の入ったクッションドラムを直撃、その後始まるガードレールに車両左前部が衝突して痛ましい今回の事故となったのである。
ガードレールについても等閑視できない
現場となったタイヤチェーン脱着所のスペースは、夏場には封鎖されるため、ガードレールが移設されて道路脇で直線状に繋げられる。“たら・れば”の話が許されるなら、走る時期がもう少し後だったなら同様な運転ミスを犯しても、車両の左側面を損傷する程度で事は収まったであろうことも容易に推察できる。それほどガードレールの存在はありがたく有効な設備だ。しかし今回はそれが凶器になった。
リエッセIIの室内は右側に2座席、左側に単座席が配置され、最後席は4座。通常客席の22座には3点式のシートベルトが標準装備されている(補助席6座は2点式)。通路は少し左側にオフセットされており、車両を貫通したガードレールは左前部から車両中央の後方へと少し斜めに通路を貫いている。
亡くなった高校生は後方の座席に座っていたという情報があり、報道写真によると最後部席の右から2番目の座席が消失しており、左隣の席も激しく破損している。おそらくガードレールの直撃を受けた1名が車外へ投げ出されたとみて間違いないだろう。
バスを串刺しにしたガードレール。この悲惨な光景を目にした時、14年前に関越自動車道で起きた居眠り事故の光景がフラッシュバックした。
もしもガードレールの設置に欧州の様な工夫があれば、これほど悲惨な結果は招かない。それはガードレールが始まる突端はタテ方向において斜めになって地面に埋められているからである。
もし、欧州式だったのなら……
もちろんケースバイケース。欧州スタイルがベストであるとは限らない。そこに突っ込めば車両が横転するリスクは大きくなるに違いない。しかし衝撃の大きさが大幅に緩和されるし、少なくとも「串刺し!」は避けられるのである。
関越自動車道で事故後の修復作業で、ガードレールはまた元の状態(日本スタイル)に戻されている。この事故を機に、欧州スタイルへの改善が検討されたかどうかは定かではないが、それを望む声があちこちで挙げられたことは確認済みの事実である。事故は本当に不幸な出来ごとだが、そこには社会に対する何かしらの「警鐘」が含まれている。
あらゆる方面、あらゆる立場の人たちが、それぞれに安全性を追求する。そんな意識を持つことがとても重要。ガードレール設置様式の改善もそのひとつ。悲惨な事故を再び起こさないために、社会全体でそんな気運を高める努力をしていくことが大切なのである。
今回の事故には、そこに至るまでの多くの問題点が指摘されている。逮捕された運転者は免許資格的には合法だ。
バスとして人を乗せるなら二種免許はやはり必須では?
大きな車両を運転する資格としての正当性は納得できる。しかしあくまで私見ながら乗客を乗せて運行するには、二種免許の所持が必要とすべきだと考えている。なぜなら、乗客の安全や快適性に配慮することができるスキルを持ち合わせないと、二種免許は交付されないからである。
つまり貨物の車両搬送(運転)は一種免許でも問題はない。しかし多くの乗員の命を預かる以上は、それに相応しい資格条件を満たすべきではないかと思うのだ。
さらに白ナンバーのレンタカーという点、たらい回しのように運転を依頼されたという点など、バスを運行させる条件がまったくと言っていいほど満たされていない。続く報道からは、この運転者は下肢が不調だったという情報も入った。
バスの運行に際しては仕業前に点呼が営業所内の決められた場所で行われ、健康状態、精神状態、きちんと睡眠が取れているかといったことを、運行管理者と運転者が面談によって確認しあうことが義務付けられているが、どうやらこんな基本的なことも行われていなかったと思われる。
シートベルトの着用は飛行機並に徹底してほしい
そしてもうひとつ。バス乗車時にもシートベルト着用を徹底すること。今回の不幸な死亡案件(編集部注:事故要因は現在も調査中)でも、シートベルトによって回避された可能性は大いにあると考えられる。
バスには、観光高速用の大型ハイデッカーであっても、最前席のみが3点式(法令義務)以後の列は2点式のシートベルトとなっている。「路線バスにはシートベルトは無いじゃないか」という無意味な突っ込みをする輩のあると思われるが、乗り物としての特性を考えていただきたい。
ここで言いたいのは、バスに乗車したら自己の安全を確保するため、法令によって装備されている場合はシートベルトを必ず装着すること!! 本来なら3点義務にしていただきたいところだが、2点式で妥協せざるを得ない業界の諸事情があるのも事実。
バスのシートベルト装着は本来義務であり、乗用車や航空機に乗ったときと同じように、心がけていただきたい。
このたびの不幸な事故の問題点のひとつでもあり、個々のそんな意識改革も社会の交通安全環境を育む原動力になるのである。
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みんなのコメント
そもそもの原因として、高校は貸切バス代を無理に値切ろうとせずに事業者に依頼するべきだった。
先導している顧問の車がとばしていたからでは?
後続はマイクロバスなんだから、ついてこようとすれば、無理な走行になるだろう。