なぜ「インド」? 人口14億超の国でさらなる伸長を目指す
ホンダが1949年に本格的なバイク「ドリームD型」を世に送り出してから76年目となる2025年に、2輪車の世界生産台数が累計5億台を突破したことが発表されました(2025年5月22日)。
【画像】いまインドでこんなことになってんの!? 先が見えないほど長い組み立てラインから次々に完成車が流れてくる第4工場&記念式典の様子を見る
最近ではTVやSNSなどのメディアでもプロモーション映像が流され、この達成を祝うホンダの意気込みが伝わってきます。
発表があった当日、ホンダはインドの製造拠点のひとつである第4工場(ホンダモーターサイクル&スクーターインディアプライベート・リミテッド:グジャラート州アーメダバード地区)で盛大な記念式典を開催し、日本をはじめとするアジアや欧州のメディアも現地に招き、その模様を公開しました。
広大な敷地の一角に設営された巨大なテント内には従業員数百名が着席し、ホンダとの強力なパートナーシップを結ぶ関係者や各国のメディアが視線を向けるステージには、グジャラート州知事やインド政府関係者、警察組織も見られます。
加藤稔氏(本田技研工業株式会社執行役二輪・パワープロダクツ事業本部長兼二輪事業統括部長)からはじまる各人のスピーチでは、5億台までの道のりや世界市場に目を向ける今後の活動計画などについても語られました。インドでの生産は将来、グローバル市場への輸出拠点として進化し、もちろんそこにはEV車の開発・生産・ラインナップ拡充も含まれるとのこと。
しかしナゼ記念式典が、この第4工場で行なわれたのか? それは5億台目を記念したバイクが、2001年にここで生産が開始され、インド市場でベストセラーとなっているスクーター「Activa(アクティバ)」シリーズ(排気量109.51と123.92ccの2機種がラインナップ)だったことも関係しています。
第4工場には最新の生産システムや体制が整備されていますが、さらに92億ルピー(161億円)を投じて新たな生産ライン増設に着工しており、予定される2027年に稼働すると年間生産能力は現在の196万台から261万台へ拡大し、ホンダにおいて世界最大の2輪完成車組み立て工場となります。
また、その他の工場でも予定している生産能力の拡大により、インド国内4カ所の工場を合計した年間生産能力は、現在の614万台から700万台を見込んでいると言います。
ちなみに、世界生産累計1億台(1997年)や3億台(2012年)など、マイルストーンを達成した際には今回のような記念式典を熊本工場などで行なってきましたが、インドでは初めてのことです。
ホンダにおいて、世界の生産および販売台数は欧州や北米、日本とは比較にならないほどアジア・大洋州が群を抜いています。
中でも世界最大のインド市場ではシェアNo.1に接近しており、まだ拡大が望めるうえに、それに伴う現地での積極的な新規雇用による地域貢献、グローバル市場への輸出拠点として進化していくこと、EV車開発、工場での再生エネルギー利用拡大など、将来に向けた取り組みなども含め、「世界生産累計5億台」といマイルストーン達成を祝うには、「需要のあるところで生産する」という基本理念においても、ここ第4工場がふさわしいということだったのでしょう。
確かに道路は「ホンダだらけ」、工場の圧倒的な生産能力に度肝を抜かれる
インド北西部に位置する第4工場はアーメダバード国際空港が最寄りで、日本をはじめ各国から記念式典に参加する人たちの滞在先は「ガンディーの町」と名付けられた、グジャラート州の州都ガンジナガル(ガンディーナガル)でした。地上の移動はすべて手配された大型バスで、自分の足で市街地を歩くことはありませんでしたが(安全面が考慮されている)、車窓から道路を眺めていると、走っているバイク(スクーター)は、ほぼ「アクティバ」です。
式典では大谷包氏(おおたにつつむ:ホンダモーターサイクルアンドスクーターインディアプライベート・リミテッド社長)のスピーチの中で、「ホンダ=アクティバ」と言われるほどインドのユーザーに広く浸透している、とありましたが、ナルホド確かに、実際その通りです。
式典を終えると、第4工場の生産ライン(の一部)が公開されました。そこは「アクティバ」の組み立てラインで、ベルトコンベアが一直線に延び、スタート地点からはゴール地点が見えないほどの長さです。ラインにはびっしりと現地従業員が並び、担当する作業をひたすらこなしています。
エンジン周辺から始まるスタート地点では、頭上からアフタヌーンティーのスタンドのような、何段かの立体的なトレーが下りてきます。そこにはいくつかの部品が載り、ベルトコンベアと並走しています。
従業員はそれぞれ自分の作業に必要な部品を手に取り、工具を使って手際よく組み付けていくわけですが、オートメーション化が進む工業製品の生産現場で、圧倒的な数の人が手作業で組み付け、次第にスクーターのカタチになっていく様はまさに「人海戦術」です。
見学の際の解説によると、自動化は取り入れていますが、人の手による作業は必ずあり、それを効率的にこなすために整備した結果が、この長い組み立てラインとのこと。確かに人海戦術ですが、そこに惜しみなく人を配置することで生産能力を上げ、同時に雇用にもつながるというわけです。
歩くこと数分、ゴール地点に到着すると、完成車が次々とラインから流れ出てきて走行チェック担当者に渡されます。数人がかりで乗っては試験機にかけて次へ渡し、また戻ってきてスクーターに跨り……を繰り返していますが、とにかく完成車が出てくるスピードに驚かされます。
事前に「20秒に1台完成車が出てきます」と聞いた時は、一体どういうこと? と、想像できませんでしたが、実際にその光景を目の当たりにしてもまだ信じられません。思わず笑ってしまうほど、次から次へと完成車が出てくるのです。
ところで、ラインに並ぶ従業員の中には女性の姿も見られましたが、ホンダのインド工場では女性が活躍する場を拡大しており、2030年には全従業員の女性比率30%を目指しているそうです。
必要とされるバイクは、日本とはだいぶ異なる?
インドでバイクと言えば、日本のバイクユーザーが思い浮かべるのは英国発祥の「ロイヤル・エンフィールド」ではないでしょうか。同ブランド初のアドベンチャーモデル「ヒマラヤ」の新登場をはじめ、クラシックな外観のネイキッドモデルなどラインナップを拡充し、日本ではここ数年で急激に認知度を上げています。
ごく短期間のインド滞在では、その姿を見かけたのはほんの数台でした。第4工場で聞いたホンダ関係者の話によれば、ロイヤル・エンフィールドは、現地では「憧れ」の存在とのこと。とはいえ、日本の「バイク趣味」感覚と現地で「生活の足」であるバイクを比較しては、何もかもが異なるので意味はないでしょう。
冒頭で触れたプロモーション映像もそうですが、ホンダ公式サイトのTOPページやYouTube公式チャンネルでも、「5億台達成」を大いにアピールしています。見ると、世界各国のホンダ工場で働く人々の姿を中心に、ホンダのバイクが多くの国で生活の一部になっており、その国々で生産されていることが伝えられています。
国が違えばバイクの使い方・楽しみ方も違うわけで、砂漠を走る「アフリカツイン」の姿には少し違和感を覚えました。日本でもアドベンチャーバイクがひとつのジャンルとなって久しく、高速道路で長距離を一気に快適に移動して日本の美しい自然に触れるツーリングは、まさに日常を離れたアドベンチャー体験です。
たとえばタイやインドネシアなどでも、バイクが生活の足である一方で、オフロードバイクがファン領域として認知されつつあるようです。なにしろ走る場所はいくらでもあるわけで、ホンダのオフロードバイク(250~300ccクラス)で遊びたくなるライダーがいてもおかしくありません。
インドではどうなのでしょうか? インド生まれの「CB350」が日本で「GB350」シリーズとして導入され、大人気となっています。その「CB350」は式典で警察車両(いわゆる白バイ)として50台が寄贈されました。
インドの道路事情は、荒れた路面と複雑な交通環境で、道路利用者の大半を占めるバイク(自転車も)は路上で最も小さく、クルマが密集した道路では「交通最弱者」と言えそうです。ちなみに、「最強」はエアコン完備の大型バスです。
郊外で幹線道路を外れるとほとんどが未舗装路(土)という環境では、望まれるのは「大排気量の速いバイク」ではなく、排気量110~150cc程度の軽量な車体に豊かな低速トルクでトコトコ進む、ゆっくり確実に走るバイクのようです。よく見る「逆走」についても、通れる場所ならどこでも走る、歩行の延長でバイクを使っています。
そして低床ステップスルーで前後に長いシートのスクータータイプが圧倒的に環境にマッチしており、ホンダ「アクティバ」が広く浸透しているわけです。
ホンダは、やがてバイクに乗ることが「楽しい」、ひとつの「ステイタス」と感じ始めたユーザーのために、排気量200ccクラスの「またがるMTバイク」や、その上に「CB350」などの中間排気量、そして大型バイクも用意していますが、その領域にユーザーの意識が移行するまで、しばらく時間がかかりそうです。
いずれにしても、必要とされる国で必要とされるバイクを生産し、供給するホンダの勢いには凄まじさを感じずにはいられません。(バイクのニュース編集部)
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