車両用の3灯式信号機では最古だった愛知県「卯坂」交差点の信号機、2023年2月14日に撤去
以前の”レトロ信号機”の記事で取り上げた愛知県知多郡阿久比町の「卯坂」交差点にあった2023年現在、日本の公道に残っている車両用の3灯式の信号機では最古と思われる角形信号機が2023年2月14日遂に撤去されました。
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以前も取り上げましたが、この信号機の凄さについて改めて紹介していきます。この信号機は昭和53年ころまで設置されていた四角く角ばった形をしたヴィンテージものの信号機で、この角形信号機自体が今回紹介する卯坂交差点を除くと、静岡県6箇所、千葉県1箇所の計7箇所しかもう残っておりません(1灯式、2灯式、路面電車用を除く)。
2017年くらいまで愛知県は古い信号機が他県に比べて非常に多く、この角形信号機も県内各所に設置され、古い信号機のメッカとなっており、我々信号機マニアにとって聖地のような県でした。その後、サイズを小さくしコストの低減を図ったLED信号機が開発されたこと等もあって愛知県の信号機の更新が加速し、愛知県内で最後まで残った角形信号機がこの卯坂交差点の角形信号機でした。
角形信号機がまだ他にもたくさんあった時点でもこの交差点の角形はトップクラスに古く、更新が進んだ2023年現在まで残ったこと自体が凄いことと言えます。この卯坂交差点の角形信号機の撤去により、愛知県からすべての3灯式の角形信号機が撤去されたことになります。角形信号機を主目的として愛知県に18回撮影に出向いた筆者としては、愛知県から角形信号機自体が絶滅したことは非常に寂しいというのが本音です。
塗装の剥がれにより「設置当初の姿」を見ることのできた希少なレトロ信号機
また現在の信号機は灰色がかった白色に塗装されているのが標準なのに対し、昭和40年代の信号機は基本的に緑色に塗装がされており、その世代の信号機であっても近年になって普通の灰色がかった白色に上塗りされているのですが、この卯坂交差点の角形信号機は経年劣化もあってか再塗装した灰色がかった白色の塗装がほとんど剥げてしまい、元の緑色の塗装色が表面に出ているような状態となっており、昭和40年代の当時の姿を見ることができます(現在でも観光地等で景観に配慮して緑色に塗装した信号機はあります)。
さらに白と緑の縞模様のいわゆる背面板が付いており、当時の古い信号機は信号機の灯火の光が弱く、信号機の存在を目立たせる意味もあってよく設置されていました(現在でも背景が派手な場所や歩道橋や高架下等ではよく設置されています)。
少なくとも昭和43年以前から55年以上稼働した「卯坂」交差点の信号機
因みに最古の角形信号機と紹介していますが、この信号機の詳細な製造年月は実は不明です。信号機には通常メーカー・製造年月・形式等が記載された”銘板”が付いており、卯坂交差点の角形信号機にも付いているものの、下の写真のように経年劣化で製造年月が記載されている刻印が見えなくなってしまっており、何年製からは判断できなくなってしまっています。
ただ辛うじて小糸製作所とメーカーが記載されているのは読み取ることができ、この会社の信号機の製造は昭和43年中頃までは小糸製作所、昭和43年後半より小糸”工業”に信号機製造を移管しているため(その後現在はコイト電工に移管)、小糸製作所製ということは少なくとも昭和43年以前の製造ということになります。
昭和43年製としても実に55年稼動していたことになり、信号機の寿命が30年程度と言われていることを考えるとかなりの長寿だったことが伺えます。ただ老朽化ゆえか2022年には黄が電球切れを起こしたこともあったり、昼間はレンズの色合いが元々黒っぽいことも相まってかなり見づらく年齢には勝てなかったのかもしれません。
雨風を凌げる「高架道路の下」に設置されていたため一般的な信号機よりも長寿だったか
なぜ2023年まで残存することができたのかについては色々考えられますが、高架道路の下に設置されていて撤去がしにくく、また雨などを凌げるため普通の交差点にある信号機よりも劣化が進行しなかったこと等が挙げられるかと思われます。とは言え卯坂交差点は愛知県道55号名古屋半田線の交通量の多い交差点で、本当に残っていたのは奇跡としか言いようがありません。
これを以って最古の3灯式の車両用の信号機はお隣の静岡県の、袋井市にある小糸工業の昭和46年製の角形信号機で少なくとも4年近く卯坂より新しい信号機となります。筆者は2014年9月、2016年2月、2020年12月の3回撮影に出向き、初訪問時はひどい雨でしたが、2回目・3回目の撮影時は快晴でとりあえず満足のいく撮影ができたため、後悔はありません。令和に至るまで昭和40年代前半の信号機の歴史を伝える貴重な信号機を見ることができたことに深く感謝したいと考えております。
レポート/写真●信号機マニア・丹羽拳士朗 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実
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