フランスのパリで2024年2月4日、SUVへの規制として駐車料金を3倍にするかどうか、住民投票が実施された。その結果、賛成が54.55%となり、法的拘束力こそないが同年9月1日から実施されることに。国沢光宏氏が持論を語る!
文/国沢光宏、写真/AdobeStock、ベストカー編集部、プジョー
グローバルで人気の「SUV」はツラいよ!? フランスのパリは住民投票でSUVの駐車料金が普通車の3倍に!!
■パリでのSUV販売台数は約4割を占めるが……
フランスパリ市内の路上に駐車している現行型ポルシェマカン。今後は駐車料金が3倍に!?(directphoto@AdobeStock)
いやいや驚きました! フランスのパリ市はSUVの駐車料金を3倍にするかどうかの住民投票を行った結果、2024年9月から中心部の駐車料金を1時間あたり6ユーロ(約960円)から18ユーロにすると決定した!
18ユーロといえば約2900円! 東京では六本木や赤坂の異常に高いコインパーキングに匹敵するレベルだ。ただし、投票率は6%以下と低く、賛成票も55%とのこと。いささか強引過ぎる決定に思える。なぜか?
日本だとあまり知られていないことながら、ここにきて欧州では一部の環境派からSUVバッシングが始まっている。「大きくて重く、空気抵抗も大きいSUVはエネルギーを大量に消費するから」という理由である。
5ドアハッチバックモデルのマツダ3ファストバック。ほぼ同じキャビンスペースを持つクロスオーバーSUVにCX-30もあるが、燃費的には厳しいとみているのが欧州環境派の認識だ
実際、同じキャビンスペースを持つSUVと5ドアHBを比べたら、20%以上二酸化炭素を多く出す。なのに、厳しい燃費規制CAFEが施行されてもSUVの売れゆきは伸びる一方。
当然ながらラージクラスのSUVだと燃費悪く、CAFEの罰則金(燃費悪い車種には罰則金が上乗せされる)もかかってくる。車種によっては100万円以上の燃費罰則金が必要なほど。
それでもお金持ちからすればたいした負担じゃない。かつてアメリカでも『ガスガズラータックス』(ガソリンがぶ飲み税)というのを掛けたが、お金持ちはまったく気にせず払っていたことを思い出す。
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■フランスではパリに続く流れとなる?
労働階級が強いフランスではSUVについてパリに続く流れとなってくるのか?(AA+W@AdobeStock)
さて。日本から見ると同じように見える欧州の文化ながら、国によって微妙に異なる。なかでも異質なのがフランス。フランス革命で貴族を淘汰し、表向きはフラットな社会作りをした。
今でもワーカーが強い。そしてお金持ちがお金持ちぶった途端、社会から強く叩かれる。お金を持っていても目立たないようにしなくちゃならない。だからフランス車には高級車が存在しないのだった。
筆者によれば、フランスはフラットな階級社会を作り出した結果、労働者階級が強くなっていると指摘している(Julia Zarubina@AdobeStock)
パリ市のイダルゴ市長のように生粋のフランス魂を持った人からすれば「カーボンニュートラルの時代になんでSUVなんか乗っているんだ!」ということになる。調べてみるとイダルゴ市長にかぎらず、SUVをニガニガしく思っている環境派の人は増えてきているようだ。
この流れ、もしかするとパリ市だけに止まらないかもしれない。環境派の市長たちが右にならえする可能性も出てきた。
■SUVからほかの車種への乗り替えで二酸化炭素排出量が2割減る?
欧州での認識はSUVは二酸化炭素の排出が多いモデル。カーボンニュートラルに向けて待ったなしの現在、欧州は腰を据えて取り組んでいると筆者は指摘する
日本では「カーボンニュートラルなんかポーズだし、挫折するよ」と思っている人も多いようだけれど、ところがどっこい! 欧州は腰を据えている。何が何でもカーボンニュートラルに進もうとしている。
航空機や船舶のような移動手段は少し時間かかるけれど、クルマについちゃ電気自動車への代替ハードルが低い。しかも身近な存在だ。どの国もクルマからカーボンニュートラルを始めようとしている。
とはいえ、現在売っているクルマのすべてを明日から電気自動車にすることなど不可能。だったら二酸化炭素排出量の多いSUVを減らしていこうという流れになることは容易にイメージできる。
第2世代モデルとなったプジョー2008。ベースとなった5ドアHBの208同様若々しさを強調したスタイリングだが、地元フランスでの立ち位置は厳しくなる?
しかしながらお金持ちは発言力が強く、普通の国ならお金持ちに人気のSUVを規制することは難しい。お金持ちがエバれないフランスだからこそ、SUVバッシングをできるのだった。
もしかするとこの流れ、広がっていくかもしれない。フランスのほかの都市が右にならえする可能性もあるし、ドイツやデンマーク、オランダのような環境派の強い国なども追従する雰囲気が出てきた。
確かにSUVから同じサイズの5ドアHBやステーションワゴンに乗り替えてくれれば、それだけで20%も二酸化炭素の排出量を減らせる。市民運動としては一番効果的かもしれない。
■さて日本でも待ったなしの状況なのだが……
東京都の公用車には先代アルファードのハイブリッドモデルが採用されている
翻って我が国はといえば、そんなこと考える都道府県知事など皆無。少しばかり環境を考えていそうな東京都の小池知事すら公用車はアルファードである。東京都内の移動であれば日産ARIYAくらいで充分だと思う。
かといって日本の場合、燃費悪いクルマの駐車料金を上げるというやり方は妙案と言えない。反発を買うだけ。ただでさえ自動車から税金を取り放題しているからだ。
筆者は日本にも同じような施策を導入する場合、EVの駐車料金を2時間無料にするなどの優遇措置が必要だと説く(写真は日産ARIYA)
同じような施策を日本に導入するのなら、電気自動車の駐車料金を2時間まで無料にするとか、電気バイクの駐車場所を作るとかの優遇装置だと思う。
いずれにしろ2050年のカーボンニュートラルと、2030年の「二酸化炭素排出量2013年度比46%減」を国際公約にしている我が国も環境対策は待ったなし。特に2030年までは6年しかない。可及的速やかに抜本的な対応が必要である。
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みんなのコメント
フランスから見たらSUV以上に環境破壊しまくるあり得ない車になるだろうなw