三菱自動車の米国部門が、24時間営業のデジタルショールーム「ClickShop」をオープンすると発表した。これによってアメリカでは三菱車の購入が簡単になるということなのだが、この米国三菱によるデジタルショールームとはいったいどんなものなのか?
そもそも、このデジタルショールームのような新車販売の方法というのはアメリカでは以前からあるもの? そして将来的には日本の新車販売にも広がるのか?
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日本の新車販売ではなじみのないものだけに、わからないことの多いアメリカの自動車ディーラー最前線について、海外の自動車事情にも詳しいモータージャーナリストの桃田健史氏が解説する。
文/桃田健史
写真/AdobeStock 、MITSUBISHI、VOLVO(トビラ写真=Tobias Arhelger@AdobeStock)
【画像ギャラリー】いよいよ「クルマをポチる」時代がくる!? 米国三菱自動車のオンライン新車販売『ClickShop』を見る
■オンライン操作で購入最終段階まで完了!
米国三菱のClickShop(クリックショップ)。最終手続きの直前までがネットで完結する
米国三菱自動車は2021年3月8日、アメリカ国内向けにオンラインで新車購入の手続きができる24時間営業のバーチャルショールーム「ClickShop(クリックショップ)」を開設すると発表した。
このClickとは、PC(パーソナルコンピュータ)やスマートフォン等のデジタル機器を操作する際の行為や音を指す。
クリックショップでは、米国三菱自動車のホームページから、購入を検討しているモデルを選ぶと、ユーザーの自宅近くにある在庫の状況がリアルタイムでわかる。加えて、オプションパーツの装着などについても、在庫車に対するディーラーオプションの設定が可能となる。
また、具体的な購入手続きについて、米国三菱自動車から各地域の販売店に対して一律で行っている販売奨励金(実質的な値引き)や、電動車等での税制優遇など各種費用をわかりやすく表示する。
さらに、トレードイン(下取り車)がある場合の査定額を含めてのローン契約や、リース契約などによる支払い内容も確認できる。
購入の最終的な手続きについては、オンラインでユーザーの自宅に近いリアル店舗に出向き、必要書類にサインするなどの最終的な作業をするだけで、その場で車両を自宅に持ち帰ることができる。
参考までに付け加えると、こうした契約直後の車両持ち帰りは、クリックショップだから行える特別なことではなく、アメリカでの新車購入では常識的だ。ナンバープレートなしで仮使用の書類を携帯し、数週間後にDMV(運輸局)からリアルなナンバープレートが自宅に郵送されてくる仕組みである。
■アメリカのユーザーにとっては大きなメリット
アメリカのほうが来店する時期によって値引きに差があると不信感を持つユーザーが多いようだ(Valeriya Zankovych@AdobeStock)
デジタルショールームにおけるオンラインでの新車購入は、すでにテスラがサービスを実用化しており、アメリカでは三菱自動車が2番目の事例となる。
こうしたオンライン新車購入について、衣料や食品など日用品から趣味用グッズまでアマゾンなどの電子商法(EC)が一般的になってきた2010年代から、ユーザーの間で要望する声が高まっていた。
その理由として、長年に渡るユーザーの自動車ディーラーに対する”不信感”がある。
アメリカでは一般的に、「日常生活で必要がなければなんとか行きたくない場所は、歯医者と自動車ディーラー」という認識がある。
歯医者は、治療中の痛みに対する不安感。
一方、自動車ディーラーに対しては、ディーラー販売員との値段交渉に対する面倒くささと、それに伴う値引き額の適正化に対する不信感が根強くある。
前述のように、クリックショップでは在庫がリアルタイムでわかるのだが、アメリカの自動車ディーラーはメーカー直系の経営体制を敷くケースはほとんどなく、独立系企業がディーラー契約をして、メーカーから新車を買い取る形で在庫を抱えて販売するのが一般的だ。
そのため、グレードや色、そしてメーカーオプションなど、最終組立工場に対する発注を各ディーラーが事前に、複数回に分けて行う。
もちろん、ディーラーからメーカーへの個別発注も可能ではあるが、多くの場合はディーラーの手持ち在庫から販売されるし、ディーラーとしてもユーザーに対して在庫販売を推奨する。クリックショップでのカスタマイズは、基本的にディーラー在庫に対するディーラーオプションを意味していると思う。
要するに、アメリカではイヤーモデルと称して、毎年夏前から翌年の春過ぎまでに、その年のモデルの販売を消化するというサイクルで動いているのだ。
そのため、ディーラー側の言い値がユーザーの来店する時期によってかなり差が出るなど、支払い総額が不透明というイメージをユーザーは持つようになった。
実際、筆者もこれまでアメリカでさまざまな新車を購入してきたが、その都度ディーラーでのやり取りに対して違和感があった。
こうしたアメリカにおける自動車販売の手法に対して、デジタルショールームにおけるオンラインによる新車購入の効果は高い。
■デジタルショールームは日本でも普及するのか?
今年秋の発売を予定しているボルボのEV第一弾となるC40。ボルボのEVオンラインのみの販売
このように24時間営業デジタルショールームでの新車オンラインショッピングは、アメリカでの導入メリットが大きい。しかし、ユーザーとの契約ごとにメーカーに発注する日本の新車販売形式では導入メリットがないのではないか、という解釈もできる。
だが、現実的には日本でのオンラインでの新車販売を実用化する動きが出てきている。
具体的には、ボルボが2021年中に発売するEVのC40から採用する。ボルボによると「2030年までにグローバルでEV専業メーカーに完全移行し、販売方法はオンラインが主体となる」としている。
日本市場では2025年までに販売台数の25%をEVとし、販売方法はオンラインとし、2030年に完全移行する。
日本メーカーにとっても、EVシフトをきっかけにオンライン販売強化の動きが高まる可能性もある。
2030年頃には日本でも新車はオンラインで決済まで完了する時代がやって来るのかもしれない。
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みんなのコメント
DXって今の作業をデジタルに置き換えることじゃないぞ。