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人が主役の製造ラインと自動化実験|トヨタ モノづくりワークショップ2023 その3|

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人が主役の製造ラインと自動化実験|トヨタ モノづくりワークショップ2023 その3|

トヨタは「クルマの未来を変えていこう」をテーマにした「トヨタモノづくりワークショップ2023」をメディア向けに開催した。モノづくりのスタートアップ拠点となる貞宝工場から始まり、ギガキャストとモータースポーツ技術の説明で明知工場を見学。次に見るのはトヨタ初の量産工場である元町工場だ。
 

現場のリアルが生み出す創意工夫
 
1959年に東洋一の自動車生産工場としてトヨペット クラウンの生産を開始。以来64年の歴史を刻む元町工場の生産ラインは、現在BEVやFCEV、HEV、ICE(純ガソリンエンジン)といったさまざまなパワートレーンや、セダン、ミニバン、SUVなど異なるシルエットのクルマ9車種を同一ラインで生産している。
 
これを実現するために現場のさまざまな知恵と工夫が生かされているという。実際にサイズの違う車種が混在して流れるラインでは、作業員は異なる車種に対応した高さを変えられる移動式の踏み台を使用。作業員の負荷低減に役立つうえに作業品質の向上にも貢献する。
 
組み立てラインの床は作業員が移動可能なエリアの床は緑色に、立ち入りを制限する区域を黄色に色分けられていて、この黄色部分が天井照明の光を反射することでボディ裏側を明るく照らし、部品の組み付けや確認作業をしやすくしている。
 
また、ラインの流れとともに移動する作業台は、次の作業に移るときに楽に動かせるよう作業台の重量を軽減する重りに滑車とロープでつながれている。この装置により、約15kgの作業台を半分ほどの力で移動できるようにしている。塗装時に使われたドアヒンジの廃ボルトをペットボトルに詰めた重りは、手作り感たっぷりで、創意工夫にあふれたカラクリ装置だった。
 
こうした改善につながるアイデアは随所に盛り込まれており、作業性を向上するために作業員がさまざまなアイデアを持ち寄る。そして採用された数は何と1500にもおよぶという。まさに作業を楽にしたいという取り組みは、現場でリアルに実践されているのだ、というのを感じ取れた。
 
また、品質教育やリーダーの育成、多能工化など人づくりを進めてきた成果も組み立てラインでは存分に生かされており、スムーズで間違いを起こさない作業環境が構築されている。
 
このほか、混流生産を支える技術として採用されるのが汎用トレイ。さまざまなパワートレーンの搭載に対応するため、搬送トレイはパワートレーンを固定する金具を脱着式として対応し、汎用性を高めることで作業性を高めている。
 
 
自動運転のラインも着々と
 
人が支える組み立てラインの先には、未来へ向けた取り組みも行われていた。それが次世代BEVの実証ラインだ。
 
次世代BEVを生産するラインは、ギガキャストを用いた3分割のシャシーを組み合わせ、サスペンションやタイヤ、ハンドルなどの走行装置とバッテリーを組み合わせることで自動走行可能な状態に仕立てたうえで、その他の部品を組み付けることを想定している。
 
つまり、最初に組み立てるのはシャシーと足まわりで、上屋は後から組み付けるということだ。これまでのモノコック化したボディが組み立てラインを流れ、開口部から部品を組み付けていくという工法とはまったくの別モノとなるわけだ。
 
これにより、足元の内装材やシートなどの取り付け作業がグッと楽になり、作業の効率化や生産性の向上が図れ、工程を短縮することが可能となる。上屋部分は分割したサイドパネルや前後、上部のパネルを結合して組みあげて方式を採用という。
 
自走システムには、自動運転技術の開発で培った制御技術を活用。工場内のレイアウトをデータ化するとともに、センサーやカメラなどを用いて車両を制御、極低速で安定した走行を可能としている。部品の搬送も自動搬送ロボットにより作業員のそばまで運ぶシステムを構築するという。
 
生産する車両が自走することにより、これまでのコンベア用いた長大な固定式の生産ラインが必要なくなる。工場内の設備レイアウトの自由度がグッと高まり、作業員は組み付け後に定位置に戻るといった負担もなくなる。生産ラインの設備やレイアウト更新を行う時間は短縮され、作業員の負担は軽減。なるほど工場の景色は大きく変わる予感がする。
 
ちなみに元町工場ではコンベアを用いない搬送装置をノア/ヴォクシーの溶接ラインですでに採用しており、製造ラインのシンプル化を図っている。
 
完成車の出荷作業も自動搬送に!?
 
完成した車両は、出荷までヤードに整列し、積載場に到着したトレーラーに乗せられ、全国の販売店や輸出港に運ばれる。現在、工場から出てきた完成車は広大なヤードまで構内運搬員の手で運ばれ駐車し出荷を待つ。そして出荷の際は、トレーラーのドライバーが運搬すべき車両をピックアップしてみずから運転し、積み込む。ヤード内の移動はすべて徒歩となり、その労力は相当なもの。
 
トラックドライバーは高齢化や激務による高い離職率、そしてなり手不足もあり人材確保が深刻な問題となっている。こうした負担軽減を図る法制度、いわゆる2024年問題も喫緊の課題となっていることから、改善は急務である。
 
この出荷作業を軽減するために車両搬送ロボット(VLR=Vehicle Logistics Robot)の実証実験が行われている。工場から出てきた完成車はヤード入り口でVLRのパレットに自動で積載。そしてヤード内の指定された位置に降ろされる。出荷される完成車はVLRによりピックアップされトレーラーの駐車している集荷場まで運ばれる。これによりドライバーは目の前にある完成車を積み込むだけとなり、これまで集荷のために8km/日ほど歩行していた労力が激減するというわけ。
 
さらに完成車がヤードまで自走するシステムも構築中だという。これは次世代BEV生産ラインで取り組む自走システムとともにBEVでの運用を想定しているが、HEVやPHEVなどの電動車でも対応できそう。遠くない未来に自動搬送され、出荷される姿が見られるかもしれない。
 
 
〈文=ドライバーWeb編集部・兒嶋〉

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