世界中の旅客機が皆、似たような形になったワケ
旅客機という工業製品は、驚くほど保守的な進化を遂げてきました。空を見上げたとき、そこに飛んでいる機体は、半世紀前のジェット旅客機と形状的に大差ない形状です。機首、胴体、主翼、尾翼というおなじみの「管に翼が生えた」姿。良く言えば極めて洗練された形だと形容できるかもしれない一方、進化の行き詰まりに到達してしまったような佇まいでもあります。
【なんじゃこりゃ!?】これが日本で研究中の超異形な「未来の旅客機」です。
今、世界の民間航空機産業は、「二つの巨人」に支配されています。ヨーロッパのエアバスと、アメリカのボーイングの二社です。航空業界における彼らの覇権争いは熾烈を極め、各社が最新鋭機に込める技術と戦略は、まさに国家の威信を背負う知の集積と言えるものですが、その激闘の果てに生まれた現代の旅客機たちは、あまりにも似通った外観です。
それこそ、空港に並ぶエアバスA350とボーイング787を見比べてみた場合、両者は異なる哲学と設計思想に基づいて生まれたはずなのですが、そのシルエットからは違いを感じとることは難しく、多くの人にとっては違う飛行機であることさえ気づかないでしょう。
なぜ、これほどまでに似てしまうのか。答えは単純です。旅客機という存在が、すでに「空力的な最適解」に収束してしまっているからです。
大気圏内を巡航するという条件下において、円筒形の胴体と若干の後退角を持った主翼、尾翼という組み合わせは、経済性、安全性、整備性、さらには空港との互換性といった複雑な要請をすべて満たす、いわば現実的な理想形なのです。
軍用機ではすでに実績あり
では、民間航空機の技術革新は、もはや天井に達してしまったのでしょうか。実は、そうとも限りません。旅客機のシルエットを大幅に刷新し得るひとつの「革命的選択肢」が長年にわたり研究されています。それが「全翼機(Flying Wing)」や「ブレンデットウイングボディ」という形状です。
全翼機とはその名の通り、胴体と翼の区別を取り払い、機体全体を一枚の翼として設計するというものです。全翼機は空を飛ぶための「揚力」と、それを生み出すための副産物である「抗力(空気抵抗)」の比率、いわゆる揚抗比が大幅に改善される可能性を秘めています。
ちなみに、軍用機の世界ではすでに実用化されており、アメリカ空軍のB-2ステルス爆撃機が存在します。ブレンデットウイングボディは全翼機と翼のある飛行機の中間的な存在です。
B-2のあの独特なフォルムは、敵のレーダー網をかいくぐるステルス性のみならず、空力を極限まで効率化した結果でもあるのです。理論的には、全翼機またはブレンデットウイングボディ構造の旅客機を実現できれば、従来モデルの旅客機と比べて燃料消費を大幅に削減でき、また構造内部に無駄のない広大な空間を設けることで、より多くの乗客を収容することも可能になると考えられます。すなわち旅行者はより安価に、航空会社はより利益を求めることが可能になるのです。
しかし、全翼機やブレンデットウイングボディ機の旅客化という構想は、いまだ「夢」の域を出ていません。かつて全翼機は開発や飛行制御が困難であるという欠点を抱えましたが、現在では技術的な問題はほぼ解決しています。では、何が実現を阻んでいるのか。その理由はむしろ社会的・運用的な課題です。
乗客が好むシート配置も大きく関係
最大の障壁のひとつが「快適性」です。航空会社にとって、客の満足度は命綱です。旅客が座席を選ぶ際、圧倒的に人気が高いのが「窓側」と「通路側」です。ですが全翼機やブレンデットウイングボディ構造では、機体が横に広がるため、座席の多くが「中央席」となってしまいます。
窓のない空間、外界と遮断された広間のような機内は、多くの人にとって圧迫感を与え、不安を呼び起こします。空飛ぶ劇場のような斬新な内部空間を演出しようとする試みもありますが、そうした文化的・心理的バリアは依然として大きいと考えられます。
また、空港との親和性という現実問題も無視できません。現在の旅客機は、世界中の空港インフラとの互換性を前提に設計されています。搭乗ゲート、ボーディングブリッジ、タキシング通路、整備機材、その他さまざまな機器類すべてが「円筒胴体の航空機」に合うよう最適化されてきました。
全翼機やブレンデットウイングボディ機は、その幅広く独特な形状ゆえに既存設備と噛み合わず、新たなインフラ整備を余儀なくされると推測されます。一機種の導入のために空港設備を刷新するというのは、経済合理性を著しく損なう決断であり、現実的ではありません。
こうしたことを鑑みると、将来的には空港の滑走路に静かに滑り込む翼だけの機体が、乗客を乗せて飛び立つ時が来るかもしれませんが、そのような旅客機が誕生するまでにはクリアすべきさまざまな課題が数多く横たわっており、ゆえに現実的な段階にあるとは言えないようです。(関 賢太郎(航空軍事評論家))
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