バルセロナ合同テスト2日目はピエール・ガスリーがレッドブルRB15を初めてドライブすることとなり、チームとしても彼がスムーズにチームとマシンに馴染むことができるようにと、まずは習熟を中心としたテストプログラムを用意してきた。
午前中はセッション開始直後にアレクサンダー・アルボン(トロロッソ・ホンダ)がスピンを喫して出した赤旗が解除されると同時にコースインして走行開始。まずはマシン習熟を目的としたランを重ね、それと並行してチーム側ではフロントサスペンションやフロアなど様々な箇所に蛍光色の揮発性オイルを塗布して気流を可視化するフロービズを行うなど、データ収集を行なって時間を有効的に使っていった。
ガスリー「レッドブル・ホンダのパッケージに大きなポテンシャルを感じた」。クラッシュで走行切り上げも、挽回を誓う
午前中のセッションだけで69周を走り込んだガスリーは、気温・路面温度ともに上昇して好条件となった午後のセッションではショートランでのより本格的な走行を開始。様々な箇所のセッティングを変えながらそれに応じたデータの収集を進めていった。
「今日は久しぶりにF1マシンに乗り込んで、とてもエキサイティングな1日だったよ。1日を通していくつもポジティブなテスト項目をこなしていったけど、僕にとってはまずクルマの中で気持ち良く走れるようになるというのが重要なことで、実際にそれをやってのけて90周をこなすことができた」
これまでテストドライバーとして単独テストの機会を与えられたりチームの一員としてレースに帯同したりといった経験はあったが、やはりレースドライバーとして自分好みのマシンに仕上げていくとなればその立ち位置はまったく異なる。
レース週末を運営する相棒であるレースエンジニア、データ解析のプロであるパフォーマンスエンジニア、パワーユニット側のエンジンエンジニア、エネルギーマネジメントを担当するデータエンジニア、タイヤマネージメントを統括するタイヤエンジニアなど、何人もの技術者たちと一丸となって作り上げて行かなければならない。
その関係値を作るのもF1ドライバーの重要な仕事のひとつであり、新加入のドライバーにとっては開幕前のわずか8日間のテストでそれを煮詰めることが求められる。
そんな中でガスリーは初日からRB15に違和感を覚えることなく自然に気持ち良く走ることができた。これはドライバーにとって非常に良い流れだ。
「本当に素晴らしかったね。冬休みを終えてマシンに戻ること自体にワクワクしていたし、僕にとってはレッドブルと過ごす初めての日だったけど、それがとてもポジティブな1日になったよ。本当に気持ち良くドライブすることができたんだ」
「このクルマにはとても良いポテンシャルがあると感じられたよ。もちろんこれからもっとポテンシャルを引き出していくためにマシンパッケージに対する理解を深めていかなければならないけど、第一歩のフィードバックはとても良かったよ」
■ガスリー、終盤にクラッシュも大事には至らず。「まだまだやれることはある」
だが好事魔多し。最後に驚くような結末が待っていた。
92周目のターン11を抜けターン12へ右にステアリングを切っていった瞬間、ガスリーはリヤの挙動を乱してカウンターを当てたが、あの速いコーナリング速度では間に合わずにリヤが抜け、マシンはスピン状態に。後ろ向きのままグラベルを突っ切ってバリアに突っ込んだ。
「僕らはいつもマシンを限界までプッシュしているし、その限界近くのエリアでマシンをコントロールしているんだ。そんな中でスロットルを踏みすぎてリヤのコントロールを失った。単純にそれだけのことだよ」
幸いだったのはぶつかったのがテックプロ・バリアと呼ばれる樹脂製バリアで、リヤウイングやリヤカウルの一部は破損したものの、リヤサスペンションやカウル内部にはそれほど大きなダメージが及んでいないようだったことだ。残り1時間の走行時間は失ったが、翌日以降のテストプログラムに影響を及ぼすようなクラッシュにならなかったのは幸いだった。
「ちょっとビックリしたけど、でも起きてしまったことはどうすることもできないからね。まだテストは6日間残されている。まだまだやれることはあるよ」
ガスリーにとってのレッドブル初日は、クラッシュという苦い経験もありながらも、それ以上に得たものと今後に向けて感じられた希望の方が圧倒的に大きかった。午後6時のセッション終了を待たずして早々に私服のデニムとチームシャツに着替え終えたにも関わらず余裕の笑顔を浮かべたガスリーの表情からは、はっきりとそのことが窺えた。
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