9月4日に発売日や価格が正式発表された新型ホンダ・プレリュード。1週間ほど前には、静岡県伊豆市にある自転車の国サイクルスポーツセンター内の5kmサーキットにて、ホンダ主催のメディア向け先行試乗会が開催された。ここでは、オートスポーツweb編集部から参加したクルマ好き編集部員の3人が、試乗で感じた新型プレリュードのインプレッションと良し/悪しをお届けしたい。フォトギャラリーはこちら。
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24年ぶりの復活、新型ホンダ・プレリュードがついに登場。気になる内外装を細かくチェック【フォトギャラリー】
●ゴトー(普段乗りはカルディナ)の新型プレリュード試乗記
■乗り心地評価 ポイント5段階評価運転席からの見やすさ ★★★★★ステアリングの操作性 ★★★☆☆足回りの感触 ★★★★☆アクセル、ブレーキの感触 ★★★★★シートの座り心地 ★★★★☆街乗りオススメ度 ★★★☆☆
総合評価 ★★★☆☆
新型プレリュードでコースインした際に、まず感じたのは運動性能の高さ。シャシーと足回りはFL5型シビック・タイプRをベースにしつつ、新型プレリュードならではの専用セッティングが施されていることに加え、シビックシリーズよりも低い車高とショートホイールベース、ブレーキングまで作動範囲が広がったアジャイルハンドリングアシスト、そして1460kgの車両重量が相まって“ニュートラルステアでよく曲がる”クルマに仕上がっていた。ブレンボ製大容量ブレーキは初期制動こそ控えめだが、ブレーキペダルのタッチフィーリングは良く、踏んだ分だけ車速が落ちる安心さがある。
乗り心地は『コンフォート』『GT』モードのときはグランドツーリングカーならではのどっしり感。ただ、コーナーを曲がるときに車体がロールして足の柔らかさを感じることがあるため、ドライブ中には“スポーツモードの硬さを標準にしても良いかも”と感じる場面もあった。注目の新技術『S+シフト』はe:HEV車ということを忘れさせるほどの完成度で、ホンダによるとシフトレスポンスは2代目NSXを上回るほど速い応答性を実現しているとのこと。ダウンシフトでは、アクティブサウンドコントロールによるブリッピング音により、まるでレーシングカーに乗っているような雰囲気を味わえた。
新型プレリュードは運転席に座ったときの視界の良さとボディサイズの掴みやすさを感じた。視界の良さは大きなフロントガラスとピラーの細さに加え、ルーフトップを頂点に、リヤにかけて落ちていく車体デザインが好影響を与えているのかもしれない。また、内装担当者によると新型プレリュードの着座位置はシビックシリーズとほぼ同じ高さとのことだが、シビックRSに乗ったときよりも車幅感覚がかなり分かりやすかった。このあたりは、タイヤハウス上部をほんの少し上げ、左右フロントフェンダーの位置を視認できるようにされた点も、車両感覚の掴みやすさに繋がっているのだという。
気になった部分はパワー感の足りなさ。新型プレリュードは最高104kW(141HP)の2リッター直噴アトキンソンサイクルエンジンに、最高135kW(184HP)の2モーター内蔵電気式CVT(ハイブリッドシステム)を組み合わせたシビックe:HEVとほぼ同一のパワートレインを搭載。合計最高出力は239kW(325PS)となるが、巡航スピード域からアクセルを踏んだときの“パンチ感”はあまり感じられず。スポーツモード時の低シフト高回転域では、上昇したエンジンレスポンスも相まり“思わずニヤけてしまった”だけに、少し物足りなさを感じた。
そして、一番『う~ん……』と思ってしまったのは、やはり617万9800円という価格。シビック・タイプRのシャシーと足回り、S+シフトといった新技術、ホンダ・センシング標準装備の新型クーペと考えると妥当かもしれないが、プレリュードという名前のクルマにしては、個人的には『購入しやすい』とは言い難い。クルマ自体の素性の良さは感じられただけに、その2点が特に気になってしまった。
■ホイールベース/トレッドはS2000に近い数値
●ヤマウラ(普段乗りはN-ONEカップカー)の新型プレリュード試乗記
■乗り心地評価 ポイント5段階評価運転席からの見やすさ ★★★★☆ステアリングの操作性 ★★★★★足回りの感触 ★★★★★アクセル、ブレーキの感触 ★★★★★シートの座り心地 ★★★★☆街乗りオススメ度 ★★★☆☆
総合評価 ★★★★☆
青空を滑るグライダーにデザインイメージを得たという新型プレリュード。実際のグライダーを見たことはないが、確かにプレリュードのボディラインは伸びやかで、軽快な印象を抱かせてくれた。とくにAピラーからCピラーへと抜けるルーフラインは、オートスポーツweb的に言えば、なかなか“速そう”だった。
2025年シーズンは、現行のFL5型シビックをベースとしたモデルが多くのレースシーンで戦っている。この2台の差が気になり、試乗会の場でホンダ四輪開発本部アシスタントチーフエンジニアの方々に聞いてみると、FL5型シビックのキャビンと比べてプレリュードのキャビンは、リヤまわりのリフト量が軽減されているそうだ。
さらには「レーシングカーとしての素性は確実にあると思います」との嬉しい言葉も。会場での妄想話の域は出ないが、レースシーンへの新たな刺客として、期待せずにはいられなかった。
そして実際の乗り心地は、コーナリングの具合がかなり良い。会場のワインディングロードでそれなりにプッシュしたつもりだが、ハンドルを切れば切った分だけ曲がってくれたのは好印象だった。あとで聞いたところによると、ショートホイールベースかつローワイドのプレリュードは、S2000に近いアスペクトレシオ(ホイールベース/トレッド)だそうで、“それは曲がりやすいはずだ”と納得した。
あとは、ブレーキが扱いやすかったことも好印象。ひとことで言うと“しっとり系”で、制動力がリニアに効いてくれる。ブレーキングとコーナリングがしっくりくると、走りはその分自然と楽しくなる。そしてキャリパーの見た目も、少年心をくすぐる青色に『Prelude』『brembo』とあるのがかっこいい。
そして触れておきたいのがこのプレリュードから新搭載された『ホンダS+Shift』。仮想の多段ギヤマッピングで出力をコントロールするシステムで、“シフト”と名にある通り、あたかもギヤを変速しているかのような出力変動が味わえる。『より速く』というよりもアクティビティに寄った趣向のシステムで、加えてディスプレイのタコメーターとシフトインジケーター、スピーカーから発されるエンジン音も込みで“操る喜び”を演出している。好みが分かれるだろうが、期待していたよりも官能的で筆者は好きだった。
しかしe:HEVという、ふたつのモーターとエンジンが組み合わさったハイブリッド・パワートレインは、率直に言えばパンチに欠けた。総合的にはしっかり速いのだが、馬体に鞭を打つような盛り上がりが得られないのが寂しい。さらにいえばミッションもクラッチもないこのパワートレインは、チューニングもおそらく一筋縄ではいかないだろう。FL5型シビックと兄弟車というところで、e:HEV以外のパワートレインを積んだモデルの登場も期待したいところだ。
■ノーズの入りやすさは好感触も、シフトパドルに難あり
●ヤマグチ(普段乗りは1000ccのSSバイクとレンタカー)の新型プレリュード試乗記
■乗り心地評価 ポイント5段階評価運転席からの見やすさ ★★★★★ステアリングの操作性 ★★★☆☆足回りの感触 ★★☆☆☆アクセル、ブレーキの感触 ★★☆☆☆シートの座り心地 ★★★★☆街乗りオススメ度 ★★★★☆
総合評価 ★★★☆☆
コンセプトの『スペシャリティスポーツ』と『日常での使い勝手』の味付けがどうなのか気にして試乗してみた。乗車すると視界の広さ、後方の見やすさに感動し、センターコンソール部のわかりやすさ、ほどよいシートのホールド感も好印象だった。しかし、試乗コースがクローズドで全開走行したこともあり、スポーツカーらしくもっとシートを下げたかったが予想以上に下げられず、少し高めの視界になったことがイマイチではあった。また、ステアリングは最初に乗り込んだ際には大きく感じてしまった。
いざ走り出し、公道ではなかなか経験しない60km/h超での回り込むコーナリングを体感し、ストレートではアクセルを全開に踏み込むなどしたが、シートから身体がズレることもなく、さらに大きく感じたステアリングはハンドルさばきが容易で、ブレもなく違和感は消えた。筆者は手が大きめなので個人差はあると思うが……。また、コーナー出口でのノーズの入りやすさ、トルクは最高のフィーリングで、レスポンスも早くて街乗りや峠を走っても気持ちよく走れることが想像できた。1000ccバイクに乗っている感覚とも思えたのでこの点にはかなり満足した。
逆にトルクが良い分、パワーは90km/hからの伸びが弱く、高速道路での合流やSA/PA出口は少し苦労すると思ったのが難点だ。ブレーキはホンダ車特有なのだろうが、ヤマウラ氏が述べている“しっとり系”は扱いやすい一方、感覚を掴むのには時間がかかりぼやけている印象だった。
ドライブモードは『GT』、『SPORT』、『SPORT』+『Honda S+ Shift』で1周ずつ計3周変更。パワー感と路面の振動や音の変化においては顕著に違いが表れた。エンジン音は回転数の上昇と音量の感覚がつかみづらく、どのあたりの回転数なのかタコメーターを何度も確認してしまった。コーナー出口で回転数を上げたくなりギヤを下げるためパドルシフトに手を伸ばしたが、パドルが小さいため届かなかった。パドルはもう少し長くするアフターパーツがあればうれしい。
まとめると、スポーティではあるが街乗りにオススメしたいクルマとなる。価格は600万円超のため、シビック・タイプRと比べると高価に感じる。若年層もターゲットにしたいようだが、むしろ新旧のホンダファンや昔のプレリュードに乗っていた/憧れていた親子が乗ると楽しめるんだろうなというイメージになった。Honda Carsレンタカーにも配備されるようなので、是非一度は選んでほしい車種ということは伝えたい。
[オートスポーツweb 2025年09月04日]
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みんなのコメント
車の記者ならもう少しいい車乗って欲しいな。
もしかしてエンジンとモーターの出力を単純に合算したなんてミスはしないよね、、?