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駐車場有料予約システムはSA・PAでの休憩場所に困るトラックドライバーを救うか?

掲載 更新 27
駐車場有料予約システムはSA・PAでの休憩場所に困るトラックドライバーを救うか?

 トラックドライバーにとって、駐車スペースの確保は頭の痛い問題である。トラックドライバーの休憩は法律で厳しく定められているが、SA・PAの混雑時はトラックを停める場所がなく、やむなく路肩などで停車している車両も多く見られ、問題化している。駐車場不足はトラックドライバーの労働生産性の向上や働き方改革にも関わってくるし、交通事故防止の観点からも看過できない話なのだ。

 そんな中、NEXCO中日本は、2019年4月から東名高速豊橋パーキングエリア(PA・下り)で実施してきたトラックドライバー向け「駐車場予約システム社会実験(無料)」について、深夜の混雑時間帯での利用を一部有料化する新たな社会実験を5月1日0時から開始するという。果してこのシステムは肝心のトラックドライバーにどう評価されるのか?

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文/トラックマガジン「フルロード」編集部 
写真/記載以外「フルロード」編集部

【画像ギャラリー】本当にこの国の流通を担うドライバーたちを救えるのか?

■NEXCO中日本が豊橋PAで行なっている駐車場予約システムとは?

 NEXCO中日本は、これまで無料で行なってきた東名高速豊橋PA・下りの社会実験により、特に深夜時間帯で予約上限に達し、その前後の時間帯は比較的空いている傾向を把握。そこで分散駐車を促し、混雑時間帯でも確実に駐車してもらうため、深夜の混雑時間帯での利用を一部有料化する社会実験を開始するという。

豊橋パーキングエリアは2019年4月12日に豊橋本線料金所跡地を転用して開設した(下り線のみ)(写真/ひろしさん)

供用を開始して日が浅いとあって、施設は新しくキレイだ(写真/ひろしさん)

 料金所の跡地を転用して2019年に開設された豊橋PAでは、供用開始の当日から駐車場予約システムの社会実験を行なってきた。これはドライバー不足が進行するなか、確実な休憩機会の確保を目的としているもの。当初から「準備が整い次第有料実験を開始します」としていたほか、モニター募集要件にも「クレジットカード決済が可能な物流事業者」とあった。高速道路の駐車場で有料化の実験を行なうのは初めてだという。

上空から見た豊橋PA。赤線で囲っているところが予約エリアとなる(写真/NEXCO中日本)

 NEXCO中日本はこのほかに、2021年4月1日より「ダブル連結トラック駐車場予約システムの実証実験」を新東名高速浜松いなさIC路外駐車場、および東名高速足柄SA(上り)の2カ所で開始するなど、トラックドライバーの休憩場所確保に向けた取り組みを進めている。

■さらに5月1日からは一部有料化する取り組みも……

 豊橋PAの予約エリアは、全長13m以内の「中型/大型」駐車マスが10台分(うち1台は定期利用)、同25m以内の「特大/ダブル連結トラック」が9台分(うち3台は定期利用)。ETC2.0搭載車両と、事前の会員登録などに加えて、有料実験中はクレジットカードでの決済が必要となる(予約・会員登録などは運営管理などを受託するタイムズ24のサイトから)。

「中型/大型」では0時から3時が課金対象となり、予約開始から60分間は無料、以降30分毎に120円が課金される。定期利用は月1万円。「特大/ダブル連結トラック」は20時から(翌日の)5時までが課金対象で、こちらも予約開始から60分は無料、そのあとは30分毎に250円が課金される。ただし、最大料金は1000円で、定期利用は月2万円だという。

 さて、この「駐車場有料予約システム」は、駐車スペースの確保に苦しむトラックドライバーにとって朗報となるのか、それとももっと根本的な問題があるのか? 高速道路をよく使用する現役トラックドライバーに意見を聞いた。

高速道路のSA・PAの駐車場で大型車枠に駐車する乗用車。トラックドライバーには迷惑な存在だ

■トラックドライバーの意見 その1「解決策になるとはまったく思わない」

 まず、航空貨物の輸送を担当している鰻さんの意見である。

「有料の駐車場予約システムがトラックの駐車場不足の解決策となるのかということですが、一言でいえば、『まったく思いません!』ですね。

 まず、有料化については、高速代(割引)を気にしない、駐車費用も負担してくれるような大手企業ならいいですが、中小企業が多い運送会社では使わないでしょう。そもそも高速代ですら全額出る企業はどのくらいあるの? って話ですよ。深夜割引が基準になるのは当り前、それ以上はドライバー負担という会社もザラだと思います。

 今回の金額が妥当かどうかは、なんとも言えません。ただ、ETCを利用し出入りを管理するなら、時間を15分単位とか1時間単位にしたほうがいいと思います。トラックドライバーは4時間運転したら30分休憩しなければならない、俗にいう430(ヨンサンマル)が法令で決められています。30分停まっていなければならないのに、30分単位だと、出入りの時間を含めると最低1時間分の駐車料金が必要となる気がします。

 あと、予約システムにしてしまうと、予約したSA・PAまで行かなければならなくなります。事故・工事・通行止めなど、道路事情などで運行時間内に予約した場所まで行けない場合もあると思います。

 予約制にして、しっかり休息させるための場所を確保するという目的はいいですが、結局、運転手の負担とされてしまう気がします。

 以前から言われている高速の駐車場不足は、翌着の一般組と夜間の路線組で、同じ時間に物流が集中することが原因のひとつだと思います。現実的にはむずかしいですが、物流時間を分散化しないと根本的な解決にはならないのではないでしょうか。

 法定の休憩・休息時間があるのに、行政や高速道路会社は『高速のSA・PAは長時間利用を前提にしていない』としています。一般道や着先付近には大型車を停められる場所が少なく、そのためSA・PAの駐車場を長時間利用しているのがドライバーの現状です。この現状の『ズレ』が改善されなければ、大幅な改善は見込めないと思います」。

■トラックドライバーの意見 その2 大型車駐車場を効率的に確保することが何よりの解決策 

  大型トラックに乗っているD.Kさんの意見はどうだろう?

「結論から申せば、PAの予約システムには反対です。理由は、駐車マスのキャパシティが増えるものではなく、むしろロスを生む可能性すらあり、根本的な解決にはなり得ないからです。

 運行に見通しが立てやすく、コンプライアンス意識の高い運送会社にはいいかもしれませんが、もともとタイトな運行を強いられている、ブラック運送会社の運転手は、より駐車しづらくなるでしょう。逆に休憩が不十分になるリスクに配慮しなくてはいけません。

 有料化に関しては少しだけ賛成です。言うまでもなく、高速道路の料金は時間ではなく利用距離に応じて決まるので、PAの滞在時間は実質無料です。予約枠の有料化では弱いですが、次世代ETC等のシステムでPAの駐車料金を適切に収受できれば変わると思います。

 深夜割引などのプライシングで、夜間の比較的空いている高速道路の利用を推奨しているように、料金によって混雑を緩和するのは悪くない手法に思えます。その深夜割引によって駐車場不足が引き起こされているのは皮肉なことです。大型車休憩スペースの確保に鑑みると、現在の高速料金の深夜割引は必ず足枷になると言及しておきます。

 話は飛躍しますが、大型車駐車場を効率的に確保することが何よりの解決策と考えます。工業団地などの遊休地を利用できないか、河川敷や公園などの駐車場を活用できないか、あるいは他の運送会社の駐車場を利用できないかなどなど、横断的に検討すべきです。

 特にほかの運送会社の車庫の活用について、一番の問題は貸与する側のセキュリティですが、これも次世代ETCなどで予約・入出庫管理などを可能にすれば、夜間無人の車庫よりもむしろ悪戯などを抑止できる副次的な効果も見込めます。さらに、コインパーキングのように料金の収受が可能になれば、都市圏の地価が高いエリアに立地している運送会社にとっては、副収入も期待できます。

 また、コンビニや飲食店の大型車駐車マスの設置について、補助金を交付する方法も考えられます。現在、コンビニや飲食店の大型車駐車マスの設置については、事業者の自主性に委ねられていますが、駐車マスの確保が行政として取り組むべき課題であり、公共の福祉に適うものであれば、パーキングエリアを創設する以外にもやり方はあるということです」。

深夜帯のSA・PAはトラックで埋まることが常態化しており、駐車できない車両も続出している

■トラックドライバーの意見 その3 深夜帯の駐車車両を円滑に流すことが肝心

 ドレージでトレーラをけん引するヒデさんも否定的だ。

「今回の有料予約駐車場に関してはニュースで目にしましたが、理解に苦しむところがあります。

 そもそも深夜帯のSA・PAの渋滞慢性化は深夜割引待ちのクルマに起因していることが主であって、そこの車両達を円滑に流すことができれば、大部分はクリア可能だと思っています。皆そこに居たくて居座っているのではないということをもっと理解していただきたいと思います。

 仮に有料化が始まったとして、お金を払って中小規模の運送会社が利用するのかといったところにも疑問を抱きます。

 そもそも社会実験が行なわれている豊橋PAが東京発で4時間以内に到達できないことは、430の見地からいっても実験場所として不適格。大都市間の幹線輸送便ですらその手前で止まらなければならないのに、本来の実情が見えるのでしょうか?

 こんな実験をするよりも、ひと昔前にあった30%割引、深夜帯は50%や大都市近郊外の100km未満50%割を復活させてもらいたいです。今と実情は違うかもしれませんが、あの頃は駐車場に停められないなんてことはまずありませんでしたから……」。

■トラックドライバーの意見 その4 「駐車場予約システムは現場を知らない人間の机上の空論だ」

 今回は「豊橋PA」の撮影までお願いしてしまった長距離トラックに乗るひろしさんだが、ひろしさんからはさらに辛辣な指摘が……。

「豊橋PAは毎回見ますけど、予約スペースにトラックが停まっているのを、ほぼ見たことがないですね。大手路線会社が停まっているのを数回見たくらいです。時間を分散したらよいだの、有料にしたらいだの、何かしなければならないからいろいろ考えられているんでしょうが、机上の空論だと思います。高速道路を走っているトラックは、同じような時間帯に同じような場所を走る大手路線会社だけではありません。

豊橋PAの予約エリアへのゲート。ETCカードを車載機に挿入し、予約レーンに入ると自動でゲートが開閉する。予約エリアはガラガラなのに、右手に見える一般車エリアはトラックでいっぱいだ(写真/ひろしさん)

 まず、停まる時間帯を分散するために有料化するなど、体力がない中小零細の運送会社にはなんの利点もありません。高速道路の『深夜割引』を待つためにPAが満車になるとよく言われますが、法律で決まっている8時間の休息や430休憩のほうがPA満車の直接的な原因になっていると思います。

 運転手の走り方を知らない人が考えた法律なんでしょうが、これを守らないといけないがために、夕方すぎにはPAが満車になります。この法律を変えられないのであれば、有料化の実験の前に、より広いスペースを確保するしかないと思います。

 豊橋は場所も中途半端なんですよね。関東~関西なら中間地点なのでいいでしょうけどね。関東から下ると、だいたい4時間地点です。その前後のPAは夜になると満車ですが、豊橋の予約場所はガラガラですよ。

 そもそも毎回そこにたどり着くとも限りませんので、事前予約は運行スケジュール(積時間・出発時間)がキッチリしている仕事じゃないと不便だと思います」。

ガラガラの駐車場予約システムのエリア。まるで現場を知らない人間の「机上の空論」を象徴しているかのようだ(写真/ひろしさん)

■まとめ

 今回は4名のトラックドライバーの意見を聞いたが、いずれもSA・PAの駐車場予約ステムには否定的で、このシステムがトラックの駐車場不足の解消につながるかというと、「まったくそう思わない」というのが共通した認識だった。

 ひろしさんの言葉を借りるなら、「現場を知らない人間の机上の空論」ということになるが、現場で一番困っているのはトラックドライバーである。なぜ日本の交通行政や施策にはトラックドライバーの声が反映されないのだろうか。実効性のある対策を求めるのなら、まずは彼らの声に耳を傾けるべきではないだろうか。

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