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ガンディーニが魔法をかけたデ・トマソ「パンテーラ 90Si」の製作台数はわずか41台!約4470万円で落札

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ガンディーニが魔法をかけたデ・トマソ「パンテーラ 90Si」の製作台数はわずか41台!約4470万円で落札

魔改造? でも新しい魅力を獲得した1990年代のパンテーラ

RMサザビーズ北米本社が2025年2月27~28日にフロリダ州マイアミ近郊の町、コーラルゲーブルズにある歴史的なビルトモア ホテルを会場として開催した「MIAMI 2025」。オークションに出品されていたデ・トマソ「パンテーラ」の最終モデル「90Si」をピックアップ。そのモデル概要と注目のオークション結果について、お伝えします。

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名匠チャーダの基本線に巨匠ガンディーニがお色直し

イタリアのカロッツェリア「ギア」社と、同社に属していたアメリカ生まれの名スタイリスト、トム・チャーダ率いるチームによってデザインされたデ・トマソ パンテーラ。1970年にイタリア・モデナでデビューし、その年のニューヨーク・モーターショーでは北米デビューを果たした。

パンテーラはスーパースポーツとしては異例な量産を目指したモデルだ。とくにメインマーケットと目された北米ではフォード販売網の助力もあり、全生産台数7260台のうち5000台以上が販売された。ただし、「ヌォーヴァ(新)パンテーラ」とも呼ばれる最終バージョンの「90Si」は、希少かつもっともエクスクルーシブなパンテーラといわねばなるまい。

1980年代末、デビューから20年近い時を経ながらも細々と生産継続していたパンテーラは、完全な生産中止か大幅なアップデートの選択を迫られる。当時のデ・トマソ首脳陣が選んだのは、大胆なイメージチェンジによる延命策。そこで、1990年代にも通用するパンテーラを求めて、この時代スーパーカーデザインの巨匠として脂の乗り切っていたマルチェロ・ガンディーニに、スタイリングの変更を依頼することになった。

ベルトーネ時代にはランチア「ストラトス」やランボルギーニ「ミウラ」、「カウンタック」。フリーランスとなったのちにもランボルギーニ「ディアブロ」などを手がけたことで知られるガンディーニは、明らかに古さを隠せなくなっていたパンテーラに、魔法のごとく手をくわえる。

フェラーリ「F40」と同じブレンボ製ブレーキを採用

チャーダのオリジナルデザインは、前世紀中には長らく過小評価されていた感もあったのだが、現在ではクリーンかつモダンな傑作としてスーパーカー愛好家や識者の間でも高く評価されている。一方ガンディーニのモディファイも1990年代のトレンドをリードする、アグレッシヴながらイタリア的エレガンツァを湛えたものとなったのだ。

また、デ・トマソ技術陣はサスペンションにも手を加えたほか、フェラーリ「F40」と共通のブレンボ製キャリパーを備えた4輪ベンチレーテッド&ドリルド・ディスクブレーキも装備させた。

さらにフォード製V8 OHVエンジンも、当時最新スペックの4942cc「5.0HO」にアップデート。「Si」の名が示すように電子制御インジェクション(イタリア語で「iniezione」)を採用し、シリンダーヘッドやインテークマニホールド、カムシャフト、バルブ、ピストンを改良したもので、ZF5速マニュアルトランスミッションと組み合わされた。

ただ、排気量が以前のパンテーラの5.8Lから縮小されたことから、パワーも305psに留まったとのことである。

ヌォーヴァ パンテーラは、じつはクラシック・パンテーラよりも高価格?

ネーミングが示唆するとおり、1990年代を見越して開発。1990年4月のトリノショーで発表されたパンテーラ90Siは、年間75台の生産が期待されていた。ところが世界的好景気のあと、1990年代初頭の市場低迷に抗えなかったことから、実際に製作されたのはわずか41台のみ。うち2台は衝突実験用に使われ、1台はデ・トマソ社のミュージアム用に確保された。

結果として、一般ユーザーにデリバリーされたのはわずか38台で、そのうち4台はミラノのカロッツェリア「パヴェージ(Pavesi)」によって、以前のパンテーラには設定されていなかったデタッチャブル(脱着式)トップに改造された。そのかたわら、最有力なマーケットになるはずだった北米市場への正規導入は、果たされないまま終わってしまう。

それゆえ、このほどRMサザビーズ「MIAMI 2025」オークションに出品されたパンテーラ90Siもまた、ヨーロッパ仕様の1台だった。シャシーNo.は#9617で、現在と同じ「ジャッロ(Giallo:黄色)」に「ネロ(黒)」のレザーインテリアで仕上げられ、ドイツに新車として納車された。そののち、2020年にベルギーから今回のオークション出品者でもある現オーナーのためアメリカに上陸するまで、ヨーロッパに留まっていたとされる。

現時点においても走行距離は限られており、公式オークションカタログ作成時にオドメーターが示していたマイレージは、わずか1万8763km。それを裏づけるように、内外装のコンディションは極めて優れ、基本新車時のオリジナルが保たれている。

ところがエンジンについては、いつの時点でのことかは不明ながら、かつてのパンテーラに搭載されていたのと同じ、キャブレターつきのフォード351「クリーヴランド」5.8L V型8気筒に換装されていた。

さらに米国に到着したのちには、「ホーリー」社製4バレルキャブレターやディストリビューターを新品に交換したほか、点火系のコンポーネンツもリニューアル。信頼できる性能を確保しているとのことである。

コンクールデレガンスやカーショーにうってつけの1台

現在でも内外装ともに使用感はほとんどなく、今後このモデルにも参加が許されるであろう、コンクール・デレガンスやカーショーにもうってつけの1台。加えて、デ・トマソ社の注文書や製造情報、保証書、請求書のコピーを含む膨大な資料も添付されているとのことである。

RMサザビーズ北米本社は、公式カタログにおいて

「パンテーラ90 Siは、1990年代におけるもっとも希少な高性能自動車のひとつであり、イタリア車のエンジニアリングとデザインの顕著な例である」

とアピールしつつ、現オーナーと協議のうえ15万ドル~20万ドル(邦貨換算約2250万円~約3000万円)といささか控えめにも映るエスティメート(推定落札価格)を設定することになった。

ところがふたを開けてみれば、競売ではみるみるビッド(入札)が集まり、最終的にはエスティメート上限の1.5倍を超える31万3000ドル。つまり現在の為替レートで日本円に換算すれば、約4470万円というけっこうな高価格で競売人のハンマーが鳴らされることになったのである。

ただしこの落札価格は、ここ数年におけるパンテーラ90Siのセールス事例にほぼ準拠したものともいえる。希少性が大きな理由となっているのだろうが、90Siは1970-80年代のパンテーラよりも高めのマーケット価格が定着しているようなのだ。

ほぼ同時期に生産されたランボルギーニ カウンタックでは、オリジンである「LP400ペリスコピオ」が現代のマーケットではもっとも高く評価される。一方で最終モデルである「ユビリオ(アニヴァーサリー)」が比較的低めの相場価格で推移しているのに対して、パンテーラではともすれば「魔改造」ともいわれそうな「ヌォーヴァ」が高く評価されるというのも、じつに興味深いことといえるだろう。

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みんなのコメント

3件
  • fxnhe501
    むしろ40台も売れたのかと。かつてコミケのNECブースで売られた、PC-FX張りの売れっぷりである。

    そんな落ち目のデ・トマゾグループに最後まで付き合った、ガンディーニの人としての不器用さも伝わってくる。
  • 上州 浪漫
    ふつうの(?)パンテーラの方が、ワイルド感在って善いなぁ。フロントバンパーの半端なトコや、マットブラックをあしらったツートーン・カラーもならではと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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