■SUVを凌駕する軽トラの異端児
近年、SUVの人気はとどまることを知らず、都市部からオフロードまで幅広いシーンでその姿を見かけるようになりました。
【画像】超カッコイイ! これが三菱「斬新“軽トラック”」です!画像を見る!(30枚以上)
力強いデザインと悪路走破性が魅力のSUVですが、かつて三菱が展開していたある軽トラックは、そんなSUVの性能も兼ねた驚異の走破力を誇っていました。
一体どのようなクルマなのでしょうか。
そのモデルとは「ミニキャブトラック4クローラー」です。
三菱「ミニキャブ」は、1966年のデビュー以来、軽バンや軽トラックとして長きにわたり愛されてきたモデルです。
初代は軽トラックのみでスタートし、1968年には軽バンも追加。
以来、軽トラックは7代、軽バンは8代にわたり進化を続けてきました。
その中でも、5代目「ミニキャブトラック」の4WDモデルをベースに生まれたのが「ミニキャブトラック4クローラー」です。
このクルマの最大の特徴は、その名の通り「クローラー(無限軌道)」を装着できる点にあります。
クローラーとは、ゴムベルトを備えた三角形のユニットで、戦車や建設機械、農業機械などで使われる足回り。
泥沼、砂地、深雪といった過酷な環境でも確実にグリップし、荷物を運ぶための頼れる相棒として設計されました。
現代のSUVブームでは、4WDシステムや高い地上高を活かした悪路走破性が注目されますが、ミニキャブトラック4クローラーではクローラーユニットを装着することで、タイヤでは太刀打ちできない泥濘地や雪深い山間部でも安定した走行を実現します。
この特性は、農林業や建設現場など、過酷な環境での作業を支える商用車として重宝されました。
さらに特筆すべきは、クローラー装着時でも普通免許で公道走行が可能な点です。
車検証にはクローラーとタイヤの両方の諸元が記載でき、一般的な軽トラックとして登録できるため、特殊車両の免許が不要。
これは、現代のSUVにはない柔軟性と言えるでしょう。
ただし、クローラーユニットは1つ約70kgと重量級で、交換は気軽にできる作業ではなく、専門業者への依頼が一般的でした。
ミニキャブトラック4クローラーの心臓部には、660ccの直列3気筒自然吸気エンジンを搭載。トランスミッションは5速MTのみで、オートマチックの設定はありません。
シンプルかつ堅実な設計は、働くクルマとしての信頼性を高めています。
1994年に登場したこのモデルは、当時の新車価格が182万6000円(税抜)と、特殊装備車としては比較的リーズナブルでした。
しかし、ミニキャブトラックのフルモデルチェンジに伴い、残念ながら販売は終了。
現在では中古市場でも希少な存在となっています。
ただ興味深いことに、クローラー装備の軽トラックはミニキャブトラック4クローラーだけではありません。
同時期には、ホンダ「アクティ」やダイハツ「ハイゼット」にもクローラータイプが存在し、1990年代のユニークなトレンドを象徴していました。
現代のSUVブームは、スタイリッシュなデザインや快適性を重視する傾向にありますが、当時のクローラー軽トラは「実用性」と「極限の走破力」を追求した、まさに異端の存在。
今見ても、その特異な魅力は色褪せません。
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