自社の車両を他メーカーへと供給するOEM。ごく一部の小型車を除くと、全体的に売れ行きは低調だ。
しかしスズキが日産に供給するOEM車である軽商用バン、NV100クリッパー(エブリイのOEM)は、堅調に売れている。
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NV100クリッパーが好調な売れ行きを見せる理由を渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎、写真/NISSAN、SUZUKI、MAZDA、MITSUBISHI、HONDA
【画像ギャラリー】軽自動車OEMでは販売数最多!! スズキ エブリイを祖とするNV100クリッパーの兄弟姉妹たちをご紹介!!
■軽自動車OEMでは販売数最多のNV100クリッパー
日産 NV100クリッパー。スズキ エブリイのOEM車だ。全般的に低調なOEM車にあって堅調な売れ行きを見せている
ほかのメーカーに車両を供給するOEMは、ダイハツが製造してトヨタが販売する小型車を除くと、全般的に売れ行きが低調だ。
ところがスズキが日産に供給する軽商用バンのNV100クリッパーは、堅調に売られている。スズキエブリイと基本的に同じクルマで、2021年上半期(1~6月)の届け出台数は、1か月平均で2600台であった。
ほかのOEM軽商用車の売れ行きは、NV100クリッパーの姉妹車になるスズキ製のマツダスクラムバンが1か月平均で429台、同じく三菱ミニキャブバンは413台だ。
ダイハツハイゼットカーゴのOEMになるトヨタピクシスバンは886台、スバルサンバーバンは355台だから、いずれも少ない。NV100クリッパーは、軽自動車のOEMでは最多販売車種になっている。
日産はもともと軽自動車を扱っていなかったが、2002年にスズキMRワゴンのOEMを日産モコとして販売するようになった。「日産車ユーザーの22%がセカンドカーとして軽自動車を使っている」という調査データがあり、OEMでも軽自動車を扱えば、売れ行きを伸ばせると考えた。
これはOEMを扱う通常の経緯とは逆のパターンだ。通常は軽自動車を自社で開発/製造してきたメーカーが、軽自動車事業から撤退することになり、穴埋めとしてOEMを利用する。
軽自動車の取り扱いを完全に終了すると、顧客が別のメーカーに流出して、販売会社では車検や点検の仕事まで失う。場合によっては、その顧客が併用する小型/普通車まで、他社製品に乗り替えられる心配が生じる。
そこで自社の顧客を繋ぎ止めて他社と接触するのを防ぐため、軽自動車を廃止した後もその代わりになるOEMを導入する。自社の顧客を守るため、車両の販売では儲からなくても、OEM車を扱うわけだ。
■自社製造のライトバンからも顧客を奪う勢い
日産 AD。このADからNV100クリッパーに乗り換える顧客も多い。ADよりも広い荷室と軽自動車の安い税金が魅力となっている
それが日産の場合は、攻めるためのOEMだった。一番の理由は前述の通り日産車ユーザーが併用する軽自動車を自社ブランドに変えることだが、当時の日産の商品企画担当者は次のような目的も語っていた。
「日産の(OEM)軽自動車を購入していただくと、そのお客様が併用されている小型/普通車も、日産車に導くことが可能になる。あるいは軽自動車から日産の小型車に上級移行するお客様も生じるだろう。さまざまな相乗効果が期待される」。
今になって振り返ると、この日産の軽自動車戦略は、予想以上の効果をもたらした。NV100クリッパーが好調に売られている理由を日産の販売店に尋ねると、以下のように説明した。
「NV100クリッパーの売れ行きは好調だ。一番の魅力は、軽自動車なのに荷室が広いことだろう。荷室長が長く、荷室高にも余裕があるから荷物をタップリと積める。
そのためにライトバンのADから、NV100クリッパーに乗り替えるお客様もおられる。商用車の場合、法人のお客様が複数の車両を使うことも多いので、軽自動車の税金の安さも魅力になる」。
NV100クリッパーの荷室長は1910mmで、荷室高は1240mmだ。ADは1830mm・940mmだから、軽自動車でもNV100クリッパーの荷室はADに比べて圧倒的に広い。そのためにADのワゴン的な運転感覚に魅力を感じるユーザーを除くと、NV100クリッパーを購入する。
OEM車が自社で開発と製造を行うADの需要を奪ったことになる。
■商用車としての長所が突出するNV100クリッパー
日産 NV200バネット。NV100クリッパーはこのNV200バネットよりもわずかに長い荷室長を持つ
日産にはNV200バネットという商用車もあるが、これはNV100クリッパーやNV350キャラバンのようなエンジンを前席の下に搭載するキャブオーバーバンではない。乗用車用の「Bプラットフォーム」を使う前輪駆動車だ。
そのためにNV200バネットの荷室長は1900mmで、小型車でも軽商用車のNV100クリッパーに比べて若干短い。こうなると日産の商用車は「手軽に使えて経済的な軽商用車のNV100クリッパーか、大容量の荷室を備える本格的なNV350キャラバンか」という二者択一に絞られる。
そしてセールスマンが述べた通り、法人ユーザーは複数の商用車を使うことが多い。1人に1台の割合でクルマを使う世帯と同じで、クルマの税金を抑える必要が生じるため、軽商用車が好まれる。
販売店の出店状況も影響を与えた。スズキやダイハツの販売店は、軽自動車が普及している地域に多く、都市部には少ない。そうなると都市部の法人が商用車を購入する場合、販売店が多いのはトヨタ、ホンダ、日産になる。
この3メーカー内、トヨタは人気車のハイエースに力を入れるので、ダイハツ製のOEM軽商用車はあまり取り扱わない。タウンエースバンはも用意されるが、インドネシア製とあって納期が長いこともあり販売は低調だ。そうなるとトヨタの商用バンは、実質的にハイエースに特化される。
■OEMがあればこその軽自動車市場
ホンダ N-VAN。左側スライドドアやシートアレンジの工夫で使いやすくなってはいるが、荷室長はNV100クリッパーよりも短い
ホンダは以前はアクティバンを扱ったが、今はN-VANに切り替わった。N-VANは左側のピラー(柱)をスライドドアに内蔵して、前後ともに開くと開口幅が1580mmとワイドに広がる。後席に加えて助手席も畳めるから、運転席以外をすべて平らな荷室に変更することも可能だ。
その代わりエンジンをN-BOXと同じくボディの前側に搭載するので、荷室長は1510mmに留まる。NV100クリッパーの1910mmに比べると、N-VANの荷室長は400mm短い。
そうなると荷室長に余裕のある軽商用車が欲しい都市部のユーザーは、必然的にNV100クリッパーを選ぶ。
OEMのNV100クリッパーが好調に売られて、日産製のADやNV200バネットが低調なのは皮肉な話だが、都市部のビジネスユーザーにとって豊富な日産の販売店からNV100クリッパーを買えるメリットは大きい。
ここまで堅調に売られるなら、軽商用車もデイズやルークスのように三菱と共同開発すれば良いと思うが、薄利多売だからそれは難しい。スズキやダイハツが軽商用車の開発や製造を行えるのも、他社に供給して売れ行きを伸ばせるからだ。つまり軽商用車は、OEMがあるからこそ、ビジネスとして成立している。
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みんなのコメント
日産ADバンや、バネットNV200が古すぎて魅力がないのか、
日産の商品企画する方は真剣に考えた方がいい。
売る車がないから、消去法でクリッパーが売れているのは由々しき状況だが、逆に日産ディーラーに来てくれる客が未だいるということ。
日産は、今が踏ん張り時。