「トランプの独壇場」だったNATO首脳会談
2026年7月7日と8日の両日、トルコの首都アンカラでNATO(北大西洋条約機構)の首脳会談が行われました。出席したアメリカのドナルド・トランプ大統領は、閉幕後の会見でこそ自らが求めているNATO加盟国の防衛費をGDP(国内総生産)比5%に引き上げるという目標に向けて「大きな進展を遂げている」と評価したものの、実態はやや乖離していました。
【これが現実に!?】幻となった「トルコ空軍仕様」のF-35(写真)
首脳会談中やその前には、イギリスなど一部のNATO加盟国の防衛費引き上げの努力不足をなじったほか、その後撤回したものの、イラン攻撃で非協力的な姿勢を示したスペインに対して、一切の貿易を停止すると主張。さらにはデンマーク領グリーンランドの領有に改めて意欲を示すなど、まさにトランプ大統領の独壇場であった感すらありました。
ヨーロッパ諸国に対して、終始批判的な姿勢を示していたトランプ大統領ですが、その中で彼が、気味が悪いほどの好意を示した国も2か国ありました。
批判のなかで“好意”を示した2か国
その一つが首脳会談のホスト国を務めたトルコです。
トルコはかつて、F-35戦闘機を開発する「JSF」計画に正式なパートナーとして参加しており、CTOL(通常離着陸)型のF-35Aと、STOVL(短距離離陸垂直着陸)型のF-35Bの導入を予定していました。トルコ空軍向けのF-35Aは数機が完成し、アメリカ国内でトルコ空軍の要員訓練も開始されていたのですが、トルコがロシアからS-400防空システムを導入すると様相が一変しました。
S-400のレーダーにF-35がどのように映るのかがロシアに筒抜けになることを懸念したアメリカ政府がトルコをF-35計画から排除する制裁を下したため、2026年7月の時点でトルコにはF-35は引き渡されていません。
トルコの排除決定は2019年のことで、その決断を下したのは前回大統領の職にあったトランプ大統領なのですが、そのトランプ大統領が今回のNATO首脳会談でトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と個別会談した際、F-35の引き渡しと、トルコをF-35計画から排除する制裁の解除に意欲を示しています。
「ロッキード・マーティンとかにはまだ話してないけど、うまくいくだろう」
トランプ大統領が好意を示したもう一つの国がウクライナです。ウクライナはNATO加盟国ではありませんが、NATOの活動範囲であるヨーロッパの防衛についてウクライナ抜きで話し合いをしても意味が無いことから、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領をはじめとする代表団が首脳会談に招聘されました。
ゼレンスキー大統領は2025年2月28日に訪米し、トランプ大統領と初めて顔を会わせていますが、この際両大統領が激しい口論を行っており、アメリカのウクライナ支援はおしまいなのではないかと見る向きもありました。その後もトランプ大統領はウクライナに侵攻したロシアに好意的な姿勢を示していたのは周知のとおりです。
しかし、このNATO首脳会談でゼレンスキー大統領と個別会談を行ったトランプ大統領は、「パトリオット」防空ミサイルシステムのウクライナでのライセンス生産を容認すると伝えています。
ロシアの弾道ミサイルの攻撃と、弾道ミサイルを迎撃する防空ミサイルシステムの弾体の枯渇に悩まされているウクライナにとって、この話は大きな福音でしょう。
トランプ大統領も渋々容認したというわけではないようです。パトリオットの生産を担当しているロッキード・マーティンとRTXには自分の決断をまだ伝えていないとしつつも、「だが、うまくいくだろう」と笑顔で述べたと報じられています。
トランプ氏の心を動かしたものは何か?
トランプ大統領の突然にも見える態度の変化の真意はわかりませんが、トルコとウクライナには「自国の技術で自国を守る」という確固たる意志を示しているという共通点があります。
トルコはF-35計画から排除されて以降、開発を進めていた国産戦闘機「カーン」の開発を加速。またF-35Bの搭載を計画していたトルコ海軍の強襲揚陸艦「アナドル」にはF-35Bに代わる固定翼UAS(無人航空機システム)の「バイラクタルTB3」と、ジェット機型UAS「クズルエルマ」の搭載を計画しており、艦上運用試験を進めています。
一方のウクライナも「トマホーク」巡航ミサイルのアメリカからの供与が沙汰止みになってしまったものの、国産巡航ミサイル「フラミンゴ」を実戦に投入するとともに、UASを含めた国産無人装備品を活用した戦い方で、アメリカを含めた世界を驚かせています。
西洋には「神は自ら助くる者を助く」(他人に頼るのではなく、自分で努力を重ねる者にこそ神や天が加護を与えてくれる)という格言があります。トルコのF-35計画への復帰はアメリカ連邦議会やイスラエルの反対、ウクライナのパトリオットのライセンス生産は、仮に容認されても軌道に乗るまで数年かかるといった問題があるのも確かですが、トランプ大統領の心を動かせるのは「自ら助くる力」を持った国だけなのかもしれません。
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