ヘルメットのホールド感で重要なのは、チークパッド
みなさん、こんにちは。MotoGPのパドックでHJCのレーシングサービスを担当している、トミーハセガワ(筆者:長谷川朝弘)です。今回は、2025年シーズン開幕戦タイGPでのお話をしたいと思います。
【画像】ヘルメットに仕込む、走りながら水を口に含むハイドレーションシステムを見る
開幕戦とは言っても、すでに2月のシェイクダウンテストや公式テストで、ある程度のセッティングは出しています。また、オフシーズンの2~3カ月の間にライダーがすごく太ったり痩せたりすることなんてないので、サイズ合わせという点では前年と大きく変わることはありません。
MotoGPクラスにおけるHJCのサポートライダーは、(ファビオ・)クアルタラロと(ブラッド・)ビンダー、そして今季からミゲール・オリベイラが加わりました。
クアルタラロとビンダーは何年も継続しているので、大きなサイズ変更はありません。今季からサポートライダーとなったオリベイラは、MotoGPにやって来る以前にHJCヘルメットを使用していたので、当時のサイズを参考にしました。彼からもセッティングについて難しいことは言われていないですね。開幕前のサイズ調整については、そういう感じです。
ちなみに、ヘルメットを被ったときに、ホールド感を与える重要なパーツは頬、つまりチークパッドなんです。MotoGPクラスでは最高速300km/h以上で走りますから、スピードを出すとヘルメットが揺れるんです。だから、ヘルメットを抑えるために、頬のホールド感を重要視するライダーが多いですね。
それから、ライナーという額から上の部分です。髪質にもよるのですが、まれにライダーが髪の毛をすごく切ってしまうと、ワンサイズ変わったりします。そこは気を付けていますね。あと、坊主や五分刈りなどにすると、髪の毛がけっこう強い人は、内装の食いつきがよくなってしまうこともあるんですよ。ヘルメットを脱ぐと、内装のトップの部分が頭にくっついていたりね(笑)。
過去の話ですが、カル・クラッチロー(※2020年に現役引退。現在はヤマハのテストライダー)が縁あって他社からウチに来てくれたときは、サイズを合わせるのに苦労しました。アメリカまで行ってサイズ調整をして、それでも次に被ったら「だめだ」と。
それで、技術者と3人でマン島まで行きました。そのあとまた3人でカタールテストに行って、ようやくOKにはなったんですけどね。靴のサイズもメーカーによって同じサイズでも違うように、ヘルメットでもそういうことがあります。
ビンダーは細かいところまで気にするライダー!
サイズと言えば、ビンダーは細かいんですよ! 例えば、目線にかかわる目の下あたりの1~2ミリのプレッシャーは分かると思うんですが、彼は後頭部や頭の上の部分の1~2ミリのスポンジの差がわかるんです。
ビンダーの場合は特別に頭の上の部分にスポンジを入れています。もちろん、こちらも測って作業していますが、たまに1~2ミリずれていたりすると、アシスタントを通じて「違う」と言ってきますね。
「1~2ミリ?」と思って調べてみると、確かに違っているんです。ただ、内装の生地って固定されていないでしょ。ヘルメットを被ったときに内装がずれて1~2ミリ違ったりもしますから、なんとも言えないところではあるんですけどね。
余談ですけど、MotoGPクラスの場合、セッションのたびにヘルメットをHJCレーシングサービスまで持ってきたり回収したりするのは、主にライダーのアシスタントが行ないます。だから、僕がライダーと会うことはあまりないですね。何かあればこちらから出向いて話すこともありますが、通常はレーシングサービス、つまり僕とライダーのアシスタントとのコミュニケーションでサービスを行なっています。ライダーの気が立っているときに何か言われるのは、すぐ傍にいるアシスタントだから、彼らは大変だなと思いますね。
ビンダーの場合は、例えば1個のヘルメットをウイークを通して使った場合、6回のセッションをそのヘルメットで走ることになります。そうすると、通常は2レースに1回、内装のスポンジを全部交換します。すごくへたるわけではないのですが、汗をかいて乾かして、を繰り返しますからね。あとは、チークパッドの表面のグリップ感がなくなるみたいです。
今回は2度の公式テストを終えたあとに内装を新しくしたのですが、1回目の走行を終えたあとにヘルメットを持ってきたアシスタントを通して、ビンダーが「最高! グリップが良い。この内装だよな」と言っていたと聞きました。
ヘルメット屋さんは、何も言われなくて当たり前です。文句も良いコトも言われず、ただヘルメットを被って走行を終えてもらう。それで十分なんです。ただ、何かあってはいけない。プラスアルファで「変えて良かった」などと言われると、やりがいを感じますね。僕も人間だから、「面倒だな」と思うことだって、もちろんあります。でも、そういう言葉を聞いて、チャラになりますね。
また余談ですが、僕は食事にカップラーメンを食べることが多いです。でも、スープヌードルは食べないようにしています。ライダーやアシスタントなどが来ると、食事中でも作業をしなくちゃいけないこともありますからね。スープヌードルだと、麺が伸びてしまうんです。
もちろん、チームのホスピタリティに行けばごはんを食べられるのですが、アシスタントがライダーの要望とともにヘルメットを持ってきたり、いつ誰がレーシングサービスに来るかわからないので、この部屋にいるようにしています。
暑かったタイGPでは、ハイドレーションシステムを要望するライダーも
今季からHJCのサポートライダーになったオリベイラは、今回、ハイドレーションシステム(※レーシングスーツのハンプ部分に水を搭載し、レース中に水分補給を可能とするもの)を積みたいというので、ヘルメットにセッティングしました。(編集部注:タイGPの週末は気温が高く、土曜日のスプリントレースは37度、日曜日の決勝レースは36度でした)
レーシングスーツの方はレーシングスーツメーカーがやるので、僕はヘルメットの中にハイドレーションシステムを通して、出口からレーシングスーツのチューブまでをセットします。
でも、レーシングスーツまでの距離が分からないワケです。だからミゲールのピットまで行って、彼にバイクにまたがってライディングポジションをとってもらいます。頭を左右に動かして、そこでチューブがはねたり曲がったりしないような長さでカットして、最終的にジョイントするんです。
このハイドレーションシステムは、ライダーの希望です。でも、水を飲むと言っても、ちょっと唇を濡らすかな、という程度です。「ゴク」なんて飲めないですよ。
口元までチューブが来るようにしてあって、ゴムのパーツを噛むと水が出てくるようになっているんですが、唇や口内を濡らす程度です。搭載する容量は300mlくらいですね。
秋にカタールGPが開催されていたころは、すごく暑かったのでハイドレーションシステムもよくセッティングしていましたが、今はカタールGPが春に開催されるようになってそれほど暑くないので、開幕戦でハイドレーションシステムをつけるのは久しぶりですね。
ハイドレーションシステムと言えば、(アンドレア・)イアンノーネ(元MotoGPライダーで、現SBKライダー)に、あるとき「ハイドレーションシステム、いる?」と聞いたことがあるんですが、彼は「おれは男だ。バイクレーサーはレース中に何かを飲むなんてことはしない!」と言っていたことがありました。
※ ※ ※
2025年シーズンも開幕して、もちろん、会社としてはサポートライダーの結果が良ければいいなと思います。ただ、僕個人としては、何もなく終わってくれればいいな、と思っているんです。
悪いことも良いこともなくていい。みんな、淡々とヘルメットを被って、サービスして、走り終える。それがいいです。もちろん、欲を言えば、成績が良ければいいなとは思いますけどね。快適に文句なくヘルメットを使ってもらえたら、それで十分です。それは昔からずっと、思っていますね。
■HJC HELMETS韓国のヘルメットメーカー「HJC」は、2025年シーズンは3名のMotoGPライダー、ファビオ・クアルタラロ、ブラッド・ビンダー、ミゲール・オリベイラをサポート。彼らが使用するのは市販製品である「RPHA1」(※モデル名は販売国によって異なる)
(まとめ:伊藤英里)
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