離島輸送の構造課題
日本の離島地域は、日常生活や産業活動の多くを本土からの物流に依存している。その物流を支えるのが内航海運だ。内航海運とは、日本国内の港と港のあいだで貨物や旅客を運ぶ海上輸送のことを指す。たとえば、東京から北海道や九州、離島などへ貨物を輸送する船舶が該当する。
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特徴は4点ある。第一に、国内専用の輸送手段であること。外国の港を経由せず、すべて日本国内の港で完結する。第二に、貨物中心の大量輸送に適していること。自動車や建設資材、食品、生活物資など、幅広い物品を効率的に運べる。第三に、離島のライフラインとしての役割を担っていること。陸路や鉄路が届かない地域では、生活と産業の基盤を支える唯一の手段となる。第四に、国内法に基づく制度保護がある点だ。原則として、日本船籍の船舶を使い、日本人の船員が乗務する。
内航海運は陸上輸送と比べて環境負荷が低く、物流の将来を担う手段として期待されている半面、深刻な課題も抱える。船員の高齢化と人手不足が進み、運航コストも上昇している。とくに離島輸送は収益性が低く、担い手不足が深刻だ。
こうした現状に対し、国や自治体、民間企業が連携し、支援策を講じる動きが広がっている。持続可能な物流インフラとして、内航海運の再構築が求められている。
週数便で支える生活基盤
日本は、本州や九州を含む1万4125の島々からなる海洋国家である。そのうち416島(約3%)が離島地域に分類される。こ
れらの離島に暮らす人々にとって、安定した物資供給は生活の根幹を成す。しかし、本土との間に物理的な隔たりがあるため、物流インフラの確保には多くの課題がある。内航海運は海の公共交通として、内航海運は長年にわたり離島の物資輸送を担ってきた。
離島では、ほぼすべての生活物資を本土からの輸送に依存している。こうした輸送を担うのが、
・貨物船
・フェリー
・RORO船(貨物を車両ごと輸送する専用船)
などだ。奄美諸島、小笠原諸島、五島列島といった遠隔地では、週に数便の定期船が生活物資を運ぶ。伊豆諸島や瀬戸内海のような近距離の離島では、日用品の物流だけでなく、通勤・通学、観光客の移動といった人流も担っている。
このように、内航海運は離島の生活と経済活動を、根底から支える基盤なのである。
運賃転嫁困難な離島の物流課題
離島物流には依然として大きな課題が存在する。
最も深刻なのは船員不足である。内航海運の船員の半数以上が50歳を超え、高齢化が進んでいる。若手の確保は難しく、特に離島航路は
・長時間労働
・船内生活の特殊性
から敬遠されやすい。そのため人手不足が慢性化している。加えて燃料費や船舶維持費の高騰も重くのしかかる。燃油価格の上昇は運賃値上げの要因となり、結果的に住民の生活コストが上昇する。一方で離島の購買力には限界があり、運賃転嫁にも制約がある。この構造的ジレンマが物流維持をさらに困難にしている。気候変動による海上輸送の不安定化や老朽化した港湾施設も無視できないリスクである。
離島を取り巻く環境は一層厳しさを増している。過疎化と高齢化が進行し、第一次産業の衰退も定住環境の悪化に拍車をかけている。しかし、これらの地域を守ることは単なる住民支援にとどまらない。海洋資源の確保や国境管理など、国益に直結する課題である。
こうした背景から国や自治体は対策を強化している。2023年には離島振興法が改正され、期限を10年間延長した。新たに「関係人口」の概念を盛り込み、外部人材との接点強化を図った。関係人口とは地域に定住していないものの、継続的かつ主体的に地域と関わる人々を指す。移住者や観光客とは異なり、地域イベント参加やリモートワーク、地域産業への関与などを通じて地域を支える存在である。
さらに農林水産業の基盤整備、職業訓練、生活環境の整備、教育、再生可能エネルギー導入、防災対応など、多方面で支援の幅を広げている。
物流分野では、高速航行が可能な新型船や航空機への設備投資支援、ドローン活用、通信インフラ整備などの施策が追加された。内航海運の現場では、船員法改正による船内環境の改善、女性船員の受け入れ、自動運航技術の導入など、省力化に向けた取り組みも始まっている。
ドローン配送 実証進む離島物流
今後の離島物流は、デジタル技術の活用と省人化、環境負荷の低減が求められる。具体例としては、ドローンや無人ヘリコプター、自動運航船を用いた小口配送の効率化が挙げられる。貨物のトレーサビリティ向上による物流最適化の取り組みも注目されている。
五島列島や奄美瀬戸内町では、すでにドローンによる物資配送の実験が進んでいる。災害時だけでなく平常時にも、生活物流を船舶に依存する二次離島へ医薬品や日用品をドローンで定期配達する試みだ。数多くの実証実験を経て、補助者なしでの輸送が可能なレベルに達している。現在では島民の生活を支えるインフラのひとつになりつつある。
一方、離島物流の主力である大量輸送においても、自動運航による省人化が進展している。日本財団は無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」を立ち上げた。無人運航の推進により、流通や人手、コスト、交通を効率化し、2040年までに国内船舶の半数を無人運航船にすることを目標としている。
2020年から2022年までの第1フェーズでは、東京湾を含む五つのコンソーシアムによる6隻の船で実証運航を実施した。実験対象は船舶交通の多い海域や長距離航行、大型船や小型観光旅客船、水陸両用船など多岐にわたる。これらは世界初の挑戦である。
現在は第2フェーズに入り、2025年7月から順次4隻の船でさらなる実証実験を進める予定だ。将来的には新型コンテナ船の開発や遠隔運航支援を実現し、船上での省力化を達成。無人運航船の実用化へとつなげていく計画である。
船員不足と技術革新の狭間
日本の離島物流は内航海運によって支えられている。これは単なる物流手段を超え、「地域の命綱」としての役割を果たしている。
しかし課題は多い。持続可能な物流を維持するには、船員確保、コスト削減、環境配慮、技術革新など多角的な取り組みが不可欠だ。
内航海運は今後も島国日本の特性を支える重要なインフラであり続ける。その存在価値を再認識し、未来に繋げる努力が求められている。(岩城寿也(海事ライター))
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それと不人気、志願者が定員割れすると、質が低下していじめや暴力が発生してしまい、海の上では人間関係の逃げ場がなく、さらなる人気低下につながるという悪循環というのもあるだろう。