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マツダの新たなる傑作──新型マツダCX-5 L試乗記

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マツダの新たなる傑作──新型マツダCX-5 L試乗記

フルモデルチェンジしたマツダの新型「CX-5」は、完成度の高いSUVだった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキが試乗時の印象をリポートする。

新型マツダCX-5 Lの特徴

感性に深く寄り添うSUV──新型マツダCX-5 L詳報

1.「人馬一体」の最新の境地2.引き算の美学3.シートアレンジと積載空間4.マツダの歴史とDNAが息づく1台1.「人馬一体」の最新の境地

(前のページから続く)いよいよ新型CX-5のステアリングを握り、横浜の街へと滑り出した。

まず驚いたのが、フロントシートの絶妙な座り心地。マツダは近年、骨盤を立てて背骨のS字カーブを維持する理想的なドライビングポジションを提唱してきたが、新型CX-5のシートは、その哲学をさらに推し進め「一体感」と「快適性」、ふたつの要素を両立させている。

一部の先行車種で採用されていたシートは、一体感を重視するあまりやや硬めの座り心地であったが、新型CX-5では座面や背もたれのクッション材や構造を見直し、座った瞬間から身体を優しく包み込む。

路面からの微小な振動をシートが効果的に吸収しながらも、コーナリング時などクルマが大きく動く場面では、乗員の身体の軸をしっかりとホールド。無意識のうちに身体のバランスを保ってくれる。

走り出して最初に感動したのは、やはり動き出しの圧倒的な軽やかさである。

マイルドハイブリッドのモーターアシストが、車両の重量を感じさせないほどにスムーズに車体を前に押し出してくれる。

先代モデルで感じていた低速域でのステアリングの重さも払拭され、交差点を左折する際にも、手首の軽いスナップだけでスッとノーズが意図した方向へと向きを変える。「ペーパードライバーが運転してもまったく苦にならない」といった開発陣の言葉が、決して誇張ではないのを理解した。

市街地を抜け、首都高速への合流ランプへと向かう。

アクセルペダルを深く踏み込むと、SKYACTIV-G 2.5エンジンが心地よいエグゾーストノートを奏
でながら、リニアに回転数を上げていく。ターボエンジンのような暴力的な加速ではないが、ドライバーの右足の動きと完全に直結した、どこまでも伸びやかで爽快な加速感だ。トランスミッションの変速もスムーズであり、ショックを一切感じさせず、瞬時に必要な駆動力を引き出す。

高速道路の本線に合流し、巡航速度へと移行すると、今度は圧倒的な静粛性とフラットな乗り心地に驚かされた。

横浜ベイブリッジを吹き抜ける強い横風を受けても、ボディは矢のように直進し続け、風切り音はほとんど車内に侵入してこない。

足元のサスペンションは、橋の継ぎ目を越える際の「タンッ」といった衝撃を吸収し、車体の上下の揺れをまろやかにいなす。新開発の55mm径ダンパーが、まさに路面に吸い付くような接地感を生み出しているのが体感できた。

減速のため、ブレーキペダルに足を乗せる。新採用の電動ブースターの恩恵は絶大であり、足の裏のミリ単位の力加減に対して、ブレーキが正確に反応してくれる。

完全停止の瞬間、ペダルからわずかに力を抜く「踏力コントロール」が嘘のように決まり、同乗者の頭を揺らさず、まるで水面を滑るようにピタリと停止できた。

少しペースを上げてタイトなコーナーを曲がってみる。柔らかく設定されたスプリングにより、車体は自然なロール(傾き)を許容するものの、ロールのスピードが穏やかで、かつ予測しやすいため、ドライバーには不安感がない。

むしろ、外側のタイヤにしっかりと荷重が乗っているのがステアリングを通じて鮮明に伝わってくるため、クルマとの深い対話を楽しめた。

これこそが、マツダが長年にわたって追求し続けてきた「人馬一体」の最新の境地であり、Emotional Daily Comfort SUVのコンセプトが、机上の空論ではなく、現実の路面上で具現化されているのを、確信した。

2.引き算の美学

新型CX-5の魅力を語る上で、マツダが世界に誇る「魂動(こどう)-Soul of Motion」デザインのさらなる深化に触れないわけにはいかない。

試乗の合間、初夏の陽光の下で大黒ふ頭に佇む新型CX-5の姿をあらためて眺めると、研ぎ澄まされた造形美に思わず息を呑む。

ボディサイドの豊かな面の変化は、周囲の景色や光と影をダイナミックに反射し、クルマが静止している状態であっても、まるで獲物を狙う動物のような生命力と躍動感を放つ。

フロントフェイスは、より立体的で力強いシグネチャーウィングと、獲物を鋭く見据えるかのような薄型のLEDヘッドライトが組み合わされ、先代モデルの端正な顔立ちを継承しつつも、より精悍で知的な印象へ進化を遂げた。

しかし、マツダのデザインが単なる表面的なスタイリングにとどまらないのは、細部の造り込みを見れば明らかである。

例えば、徹底的な風切り音の低減のために形状が見直されたAピラーやドアミラーは、空気力学的な機能性を追求した結果として導き出された必然のフォルムであり、それがそのままエクステリアの美しさへと直結している。

インテリアに目を移せば、そこには美意識と最新のテクノロジーが見事に調和した、上質で居心地の良い空間が広がっている。

ダッシュボードからドアトリムへと連続する水平基調のデザインは、視覚的な広がりを感じさせると同時に、ドライバーに安心感と車両感覚の掴みやすさを提供。手に触れる部分の素材は吟味され、ステアリングホイールの本革の滑らかな感触や、スイッチ類のクリック感ひとつに至るまで、人間の感性に直接訴えかけるような精密なチューニングが施されている。

そして、夜間のドライブにおいて乗員を優しく包み込むアンビエントライトやウェルカム照明は、派手さを抑えた上品な色調で統一されており、マツダが目指す「引き算の美学」を体現。

新型CX-5は、単に移動のための機械としての性能を高めただけでなく、所有する喜び、眺める喜び、そして乗るたびに心が豊かになるような風格と存在感を確固たるものにしている。

3.シートアレンジと積載空間

SUVの本来の存在意義である「ユーティリティ(実用性)」においても、新型CX-5は進化を遂げている。週末のキャンプから日々の大量の買い出しにいたるまで、多様なライフスタイルをサ
ポートするための荷室空間は、単に容積を拡大するだけでなく、使い勝手の質が磨き上げ
られた。

バックドアを開けると目の前に広がるラゲッジスペースは、フラットでスクエアな形状を確保。デッドスペースが排除されているため、大型のクーラーボックスや長さのあるテントの支柱なども、パズルのように悩まず、スッと収められる。荷室のフロアボードの高さも絶妙だ。

さらに、後席のシートバックは、荷室側に設けられたレバーを引くだけで、力を使わず滑らかに前方へと倒れ込み、広大なフラット空間を一瞬にして創出。シームレスなシートアレンジ機構により、長尺物の積載はもちろんのこと、近年流行している車中泊のベースキャンプとしても十分なポテンシャルを発揮する。

一方で、日常の買い物シーンにおいては、ワンタッチで開閉できるパワーリフトゲートが威力を発揮。両手が買い物袋などで塞がっている状況でも、キーを持っていればバンパー下へのキック動作だけでリアゲートが静かに、そして確実に応答して開いてくれる。

4.マツダの歴史とDNAが息づく1台

新型CX-5のステアリングを握り、横浜の市街地を流していると、このクルマの背後にあるマツダという会社の来歴について考えざるを得なくなる。

マツダは巨大メーカーではない。

しかしその規模ゆえに、独自の道を選び続けてきた歴史がある。ロータリーエンジンの実用化、ライトウェイトスポーツの金字塔であるロードスター、そして内燃機関の効率を根本から問い直したSKYACTIVテクノロジー。いずれも「走る歓び」という軸を手放さないまま、技術的な困難に正面から取り組んだ結果として生まれたものだ。

新型CX-5にも、その系譜は明確に読み取れる。フルモデルチェンジで刷新されたサスペンションのストローク管理やダンパー応答性の向上は、ロードスターで磨かれてきた「人馬一体」の思想をSUVに移植する試みといえる。車高の高さという物理的制約を抱えながらも、ステアリング操作に対するヨーの立ち上がりやロールの収束に、スポーツカーと同じ文法でチューニングを施しているのが、走り出せばわかる。

2.5リッター自然吸気にマイルドハイブリッドを組み合わせたパワートレインの選択にも、マツダらしさが出ている。ダウンサイジングターボという業界の主流に乗らず、アクセル操作に対するリニアなレスポンスと自然な吹け上がり──つまりドライバーの感性に沿った気持ちよさを優先した判断である。

数値上の効率だけでなく、運転していて心地いいかどうかを重視するこの姿勢が、マツダが根強い支持を集め続ける理由だろう。

電動化と自動運転が加速する時代にあって、クルマが単なる移動デバイスになるリスクは現実のものとなりつつある。

マツダが掲げる「Emotional Daily Comfort SUV」という開発コンセプトは、その流れへの明確な回答だ。

先代CX-5の成功に安住せず、ユーザーの不満に向き合い、走りの質を根本から見直したことで、このクルマは次世代SUVのひとつの基準を提示している。

▲前のページ:「感性に深く寄り添うSUV」

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文:GQ JAPAN 稲垣邦康(GQ)
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