「基幹産業」が使われる理由
自動車産業は「日本の基幹産業」と称される。その根拠はどこにあるのか。
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日本自動車工業会によると、2022年の自動車製造業の出荷額は62兆7942億円。全製造業の約17%、機械工業全体の約39%を占める。設備投資では主要製造業の2割超、研究開発費でも全体の3割近くを担う。こうした数値が、自動車産業が日本の主要産業であることを裏づけている。
政治やメディアの扱いも、自動車産業の存在感を際立たせる。歴代首相が自動車メーカーのトップと頻繁に会談し、主要メディアも自動車関連のニュースをトップで報じる傾向がある。こうした光景が基幹産業としての印象を強めてきた。
自動車産業への保護や支援には、国益を掲げるレトリックが多用される。鉄鋼、造船、石炭と並び、かつてから基幹産業とされてきた。生活基盤を支える産業として、自動車は別格の扱いを受けてきた側面がある。
本稿では、自動車産業がいまも日本経済の中核を担っているのかを再検証し、その将来を考察する。
数字から見る自動車産業
自動車産業の輪郭を、各種の数値から整理する。
製造業が国内総生産(GDP)に占める割合は約2割。そのうち自動車産業が約半分を構成し、GDP全体の1割を担っている。サービス業(約4割)に次ぐ規模であり、国内経済の中核的存在といえる。
2023年の日本の輸出総額は約100兆円。そのうち自動車の輸出額は約22兆円に達し、輸出品目のトップを占めた。一方で、自動車の輸入額は約3兆円にとどまっており、自動車産業が輸出主導型であることがわかる。
雇用面では、自動車関連産業の就業者数は558万人。全就業者のおよそ8%に相当する。税収への寄与も大きい。2024年度の租税収入117兆円のうち、自動車関係諸税は約9兆円を占める。消費税、重量税をはじめとした保有・走行に関する9種前後の税負担が課されており、自動車ユーザーは国家財政を支える存在ともいえる。
系列構造と地域分散
自動車産業は、完成車メーカーを頂点とし、複数のティア(階層)に分かれた部品サプライヤーによって支えられるピラミッド型の構造を持つ。その周囲を、
・自動車や部品の販売店
・修理・整備業者
・金融業
・運送業
などが取り巻く。
自動車メーカー各社は、それぞれの地域を基盤に事業を展開しており、企業城下町的な風土を色濃く残す。こうした背景から、自動車産業が地域経済に及ぼす影響は極めて大きい。地域によっては、自動車産業が主要産業として位置づけられている。
サプライヤーチェーンは複数のティアで構成されており、産業の裾野が広い点が自動車産業の特徴とされる。こうした重層的な構造は、地域経済の基盤であると同時に、他産業への転換を難しくする要因ともなり得る。
地域ごとの産業転換やイノベーションの推進において、自動車産業が障壁と化していないか。いま一度、その構造と影響を検証する必要がある。
「技術力の象徴」という神話
自動車産業では、トヨタによるTPS(トヨタ生産方式)やカイゼン活動が製造業の手本として広く浸透してきた。また、業界特有の品質マネジメント規格「IATF16949」に基づく管理手法も定着し、高品質の維持に寄与してきた。しかし、こうした従来の仕組みにも限界が見えつつある。
IT技術の進展により、品質管理の情報はデータで一元管理される方向にある。手書きによる記録や目視による確認といった人に依存する作業は、信頼性の面で弱点となりつつある。一方で、データによるトレーサビリティの確立が求められている。
欧州では2021年から「Catena-X」が始動している。自動車メーカーと関連企業が、データ交換の共通基盤づくりを進める取り組みだ。ここに加わらない企業は、将来的に業界から取り残される可能性がある。
また、自動車産業は、半導体や新素材、ロボティクスといった周辺技術を取り込みながら発展してきた。とりわけロボティクスは、生産性に直結する要素であり、いかに最新技術を導入できるかが収益力を左右する。
自動車メーカーは、技術をどう育て、どのように付加価値を高めていくかで競い合っている。ただし、実際の消費行動においては、コストやサービスといった技術以外の要素も大きな影響を与える。こうした点が、産業全体に構造的な問いを投げかけている。
成熟市場と空洞化
国内の新車市場は、総需要の縮小という長期的トレンドに直面している。少子化と高齢化による購買層の減少は構造的な要因であり、短期的な施策では覆せない。これに加えて、
・カーシェアリング
・サブスクリプション
といった利用形態の変化が、新車保有のインセンティブを弱めている。特に都市部の若年層にとって、自家用車の購入は選択肢のひとつにすぎず、利便性や支出の最適化を重視する傾向が定着しつつある。
こうした変化は、新車販売台数の鈍化のみならず、製造拠点の再編や国内生産の縮小を招く。部品メーカーを含むサプライチェーン全体への影響は不可避であり、空洞化という単一の概念では捉えきれない多層的な収縮現象が起きている。
就業者数の減少は、労働市場のミスマッチを加速させ、既存の雇用吸収力に依存してきた地方経済の基盤を不安定にする。人的資本の再配置が必要とされる一方で、その準備は制度・教育両面で不十分なままだ。
他方、自動車産業には多様な支援策が恒常的に講じられている。購入補助金や減税措置に加え、
・道路整備
・ITSインフラの整備
・災害時の復旧優先
など、直接・間接を問わず公的資源が集中投入されている状況がある。これらの政策的支援は、自動車が生活インフラの一部であるという前提に基づいて正当化されている。しかし、この支援水準が他産業との比較において妥当かどうかの定量的評価は乏しい。
加えて、個人負担の軽減という名目で展開される支援が、産業側の構造維持に寄与する形で制度設計されている点も看過できない。現状維持を前提とした政策フレームは、環境変化への適応を阻害し、逆に競争力を損なうリスクさえある。支援と保護の境界が不明確なまま継続されれば、産業全体の進化速度に歪みをもたらす。
さらに、国内市場が縮小するなかで、製造・販売にとどまらない事業転換が必要とされている。にもかかわらず、多くの企業は依然として完成車の販売台数や市場シェアを中心とする業績指標に依存しており、移動サービスやプラットフォーム型事業へのシフトは限定的である。需要側の変化に対応できていない構造のままでは、グローバル競争のなかで日本の自動車産業が優位性を維持することは難しい。
自動車産業の「これから」
地政学的リスクの高まりと通商政策の変化も、製造拠点の海外移転に慎重な判断を迫っている。
調達網や市場アクセスに関わる不確実性が高まるなかで、どの国で何を生産するかという戦略的判断は、従来のコストベースを超えた多変数の最適化問題になりつつある。したがって、単に国内雇用を維持するための政策誘導では、産業全体の競争力を保証することはできない。
結果として、自動車産業の現在の位置づけは再検討を要する。かつては国民経済のけん引役であり、多くの関連産業を統合する中核的存在であった。しかし現在は、外部環境の変化と内部構造の硬直性が同時に進行しており、産業としての再定義が求められている。産業政策は、守るべきかではなく
「どう再構成するか」
に焦点を移す必要がある。政策と制度、そして企業戦略が、これまでの前提条件を前提としない形で再設計されるべき時期が来ている。
自動車産業の歴史と未来の狭間
一国の基幹産業は、影響力の大小で決まるのではない。社会構造にとって必要かどうかで判断されるべきである。時代の変化に応じて、基幹産業は交代することも念頭に置く必要がある。
自動車産業はモータリゼーションの中心として、長らく基幹産業の役割を果たしてきた。その歴史を踏まえ、今後の日本における位置づけをどう定めるかが問われている。その決定は、国の政策や制度、国民の支持、そして企業の意思によってなされるものである。
現在こそ「基幹産業であるか」を問い直すべき時期だが、拙速に結論を急ぐべきではない。
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ライターは文系パヨばかりなんだろう
しかも自身を優秀と勘違いしているタイプで企業就労未経験者