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生まれたのが早すぎた!? スズキ X-90【記憶に残る珍名車の実像】

 世の中には「珍車」と呼ばれるクルマがある。名車と呼ばれてもおかしくない強烈な個性を持っていたものの、あまりにも個性がブッ飛びすぎていたがゆえに、「珍」に分類されることになったクルマだ。

 そんなクルマたちを温故知新してみようじゃないか。ベテラン自動車評論家の清水草一が、往時の体験を振り返りながら、その魅力を語る尽くす当連載。第1回は、珍し過ぎて実車を見かけたことがない人も多い、スズキ X-90を取り上げる。

【車名当てクイズ】この名車、珍車、ご存じですか? 第67回

文/清水草一
写真/スズキ

[gallink]

■わずか3年で販売を終了した挑戦車

 国産珍車界における不動のエースと言えば、1995年に発売されたスズキのX-90をおいてほかにない。このクルマ、別にデザインが珍獣的にヘンテコだったわけではない。いや、珍獣と言えば珍獣だが、そのフォルムはシンプルかつ滑らかで、フィアット・ムルティプラのような、鬼面人を驚かす造形はどこにもない。

 このクルマが珍車であるゆえんは、2シーターオープンスポーツと、クロカン4WDの融合だった点にある。今ならこのクルマ、クロスオーバーSUVに分類されるだろうが、1995年当時は、まだクロスオーバーSUV自体が登場したばかりで(CR-VとRAV4はともに1995年の発売)、そういう呼び方があることも知られていなかった。

 思えばX-90は、CR-VやRAV4と同期の桜だが、他の2台はその後、車名別の世界販売台数ランキングで、仲良くトップ5入りするほどメジャーになった。どちらもグローバルで見ると、年間100万台近くが売れている。一方のX-90は、発売当初から極端な販売不振にあえぎ、わずか3年で絶版になったのだから、あまりにも対照的と言えば対照的である。

近年、流行からスタンダードになりつつあるクロスオーバーSUV。しかし2シーターでオープンという変わったボディ形状を持つX-90

 X-90の歴史をおさらいすると、初登場は1993年の東京モーターショー。その時点ですでにコンセプトカー然とはしておらず、ほぼこのままの形だったことを思うと、スズキは最初から市販化が視野にあったのかもしれない。その後、海外のモーターショーでも注目を集め、スズキ首脳は即断即決、市販化を決定。2年後に発売に漕ぎつけた。主な狙いは北米市場だった。

 X-90のシャシーベースは、初代エスクード。つまり、本格クロカン4WD用のラダーフレームの上に、ユーノス ロードスターのボディを載せたような構造だった。

 当時はパジェロを筆頭にクロカン4WDがブームになっていて、「RVブーム」と呼ばれていた。初代エスクードもRVブームに乗って、販売を伸ばしていた。それと入れ替わるように、スポーツカーは退潮を見せていたが、それでもまだ多くの若者はスポーツカーに欲望を燃やしていたし、初代ロードスターの人気も根強かった。

 オープン機構は、ロースターのような幌のフルオープンではなく、デタッチャブル・グラスルーフを持つTバールーフ構造。外したルーフ部は、ケースに入れてトランクに格納できるようになっていた。日本でも北米でも、クロカン4WDとスポーツカーは、若者の人気を二分していた。そのふたつを融合したら、すごい化学反応が起きるかもしれない。いかにもスズキらしい挑戦的な発想である。

■乗って驚愕! その乗り心地とは?

 個人的には、93年のモーターショーでのX-90は記憶にない。私が鮮烈に記憶しているのは、実物と初めて対面し、試乗した時のことである。

 当時の自分は、フェラーリに人生を捧げる男であり、極めて原理主義的なスポーツカー信者だった。その視点からすると、オープン2シータースポーツとクロカン4WDとの融合であるX-90は、邪道中の邪道。あってはならないクルマに見えた。

 乗り味も「ヒドイ!」と思った。まず乗り心地が恐ろしく悪かった。ベースはエスクードだが、最低地上高を40mm落として160mmとしたことで、サスペンションのストロークが短くなり、その影響が出ていた。

X-90が採用していたTバールーフは、中央部分を残して屋根の左右部分が外せる構造のルーフのこと

 エンジンはエスクードと同じ1.6Lの100馬力。そこに 5速MTあるいは4速ATのパートタイム4WDという組み合わせだ。クロカン4WDならこのパワートレーンで何の問題もないが、スポーツカーとして速いはずはなく、高回転まで突き抜けるわけもない。そのわりにリアウイングなんかもついていて、なんちゃってスポーツカー感が非常に強かった。

 当時の自分は、「スポーツカーが落ち目だからって、なにもクロカンと合体させなくてもいいじゃないか!」と、心狭く憤ったものである。

 が、今は違う。今X-90の写真を見ると、すべてがかわいらしい。この短い車体で高めの車高、小さなキャビン、無意味なリアウイング、安っぽいインテリア。おまけにTバールーフのオープン2シーターだ。これ以上楽天的なクルマはない。それはもう、世の中を完全にブっちぎっている。

■永遠に来ない波を待つクルマ

 今や世界で乗用車の主流になったSUVだが、SUVとオープンの組み合わせは、先代イヴォークコンバーチブルなど、ごくわずかな例しかない。それらもすべて不振に終わり、現在は消えている。2シーターのSUVも存在しない。

 つまりX-90は、誕生から四半世紀を経た今でも、ありそうでどこにもない、世界で唯一の珍車なのである。X-90はよく「生まれたのが早すぎた存在」と言われるが、この波は、未来永劫やってこないのではないか?

 X-90は、発売3年間で、国内ではわずか1348台しか売れず、主力市場の北米でも不振に終わった。結果的にスズキは即断即決で絶版を決めた。ただ、さすがアメリカ。「どうしてもこのクルマがいい!」と言うコアなファンは結構いたという。

 現在国内で流通している中古車は、わずか数台になっている。希少車だけに相場は比較的高く、100万円前後が中心だ。アメリカ市場での国産カルトカー人気を考えると、今後、化ける可能性はあるだろう。

[gallink]

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