現金一括派の本音
車は自分のものとして所有したいから現金で買う――これまで自動車業界では、現金一括購入者は所有意識が強く、ローンやリースよりも自分の車を持つことを重視する層として見られることが多かった。しかし、その前提を揺らす調査結果が出た。
【調査結果を見る】「ローンの利息は払いたくない」 現金派は本当にクルマを所有したいのか? わずか13%が映す価値観の変化とは
ジョイカルジャパン(東京都千代田区)が実施した「現金一括派ドライバーの車購入・乗り換えに関する実態調査」によると、現金一括購入を選んだ理由として車は自分のものとして所有したいと思ったからと回答した人は13.3%にとどまった。一方で、利息や手数料を払いたくなかったからは42.4%、まとまった資金があったからは40.7%となり、購入判断の中心には所有意識よりも支払総額への意識があった。
調査対象は、過去に新車を現金一括で購入し、売却・下取りに出した経験がある全国の20~69歳男女550人。調査期間は2026年4月7日から4月9日で、インターネット調査によって実施された。
この結果は、車の価値が所有することから負担を管理することへ移っている可能性を示している。
コモディティ化とコスト最適化の意識
現金一括購入は、長らく車を長く乗り続ける人や、所有権を重視する人の選択肢と考えられてきた。法的に見れば、所有権とは物を全面的に支配し、自由に使用・収益・処分できる権利である。だが、今回の調査では異なる側面が浮かび上がる。
現金購入を選んだ理由の上位は、利息や手数料を払いたくなかったから(42.4%)、まとまった資金があったから(40.7%)、ローンや分割払いの仕組みに抵抗があったから(29.1%)だった。
一方、車は自分のものとして所有したいと思ったからは13.3%だった。
現金派の多くは所有そのものに価値を置いているというより、ローン金利など追加的な負担を避け、
「支払総額を抑えたい」
という意識から現金購入を選んでいたとみられる。
これは、自動車購入における判断基準が変化していることを示しているだろう。かつて車選びでは、
・車種
・性能
・所有満足度
が重要な要素だった。しかし現在、自動車の製造工程におけるモジュール化や水平分業型の浸透によって製品間の性能差が縮小し、自動車自体のコモディティ化が進んでいる。
製品が均質化するなかで、消費者の関心は製品そのものの魅力から、実質的な利用価値や負担の少なさへ移った。経済学の合理的選択理論が示すように、感情的な所有満足度よりも、
・支払総額の抑制
・将来の支出の回避
というコストの最適化に基づいて意思決定を行う消費者が増えているのかもしれない。
長期保有にともなう総保有コストの負担
一方で、現金購入には別の課題も存在する。
調査では、現金購入経験者の72.0%が車の維持費について負担に感じていたと回答した。内訳を見ると、非常に負担に感じていたが18.4%、やや負担に感じていたが53.6%だった。負担となった費用では、車検費用が68.9%で最も多く、自動車税が55.6%、自動車保険料が49.2%と続いた。
現金一括購入は購入時点でローン金利が発生しない一方、保有期間中には車検、税金、保険、修理など継続的な支出が発生する。消費者は自動車にかかる費用を購入時の初期費用だけでなく、購入から廃棄までに発生する維持管理費用を含めた
「総保有コスト(TCO)」
として厳しく捉え始めている。調査対象者の保有期間を見ると、10年以上が32.5%、7年以上を合計すると51.0%に達した。長く乗ることで購入費用を分散できる一方、年数の経過によって維持費や故障リスクが高まる側面もある。現金購入者の多くは、
・購入時の支払いを抑える判断
・保有中に重くなるTCOのコントロール
という矛盾する課題を同時に抱えているのだ。
一括払い型リースという新たな選択肢
車を巡る価値観の変化は、乗り換え行動にも表れている。調査では、実際の保有期間では長期保有が目立った一方、理想の乗り換えサイクルでは4~5年ごとが19.8%、3年ごとが8.5%となった。
また、車を手放した理由では車が古くなった・劣化したが42.2%で最多だったが、車検のタイミングだったからが33.5%、故障・修理が増えてきたからが19.1%となった。車を長く所有したいという意識がある一方で、維持負担を理由に乗り換えるケースも存在している。
こうした状況の中で、自動車市場では経済的かつ合理的な選択肢として、カーリースの仕組みを応用した新しい金融・利用形態が登場している。法人企業がリースを活用して車両管理業務を委託し、経費の固定化やTCOの可視化を図ってきたように、個人向け市場でも初期負担や維持管理の煩雑さを解消する手段として支持を広げている。近年は残価設定型ローンの普及も進み、利用を前提としたサービスが拡大している。
今回の調査では、契約時に一括払いを行い、税金や車検費用などを含めた3年契約型サービスについて、非常に興味があるやや興味があると回答した人は合わせて50.9%だった。
また、今後検討したい車の持ち方については、従来どおり現金一括購入が49.6%だった一方、契約時に一括で支払う3年契約型サービスは18.4%、一部頭金を入れて残りを月々支払うプランは14.4%となった。従来型の購入を支持する層が残る一方で、購入以外の選択肢を受け入れる余地も広がっている。
利用価値の最大化を競うビジネスモデル
今回の調査が示しているのは、現金購入者が所有を否定しているということではないだろう。現金一括購入を続けたい理由として、ローンや金利がかからないからは53.8%で最も高かった。また、車の所有権が確実に自分のものになるからも36.6%となっており、所有への意識がなくなったわけではない。
一方で、3年契約型サービスを選んだ人でも、一括払いで金利がかからないからが65.3%で最多だった。両者に共通するのは、所有か利用かという違いよりも、
・余計な費用を避けたい
・支払いを把握したい
という意識である。自動車産業において、ハードウェアの製造や販売という所有権の移転だけでは持続的な収益を確保することが困難になっている。今後、自動車メーカーや販売店に求められる対応は、車両性能の訴求だけではなく、購入後の費用や利用期間全体を含めた価値提供になるだろう。TCOを厳しく見積もり、最適解を求める消費者に対して柔軟な金融サービスを提供し、いかに顧客の利用価値を最大化するかが企業競争力の源泉となる可能性がある。
すべての消費者が所有を離れるとは限らない。車を資産として持ちたい人、長く愛車を維持したい人、新しい車へ定期的に乗り換えたい人など、需要は残り続ける。自動車業界はコモディティ化による価格競争から脱却し、変化している所有するか、しないかという二択ではなく、車に支払う費用をどのように管理し、どの価値を選ぶのかという消費者の判断軸に寄り添うビジネスモデルへの転換を迫られているのだろう。(出島造(フリーライター))
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みんなのコメント
「車は自分のものとして所有したいと思ったけど利息は払いたくない」まともな人も多いと思うし
ローンへのハードルを下げる意図がある記事に思える
頭が悪い人にとっては背中を押してくれる記事だろうなw
維持費込の総額云々いうなら、10年分を現金一括、残クレや一括残クレで乗り継いだ場合で比較しろよ。
乗り継ぎ車種の選定云々言うなら5年でもいいわ。
なんだこの記事。