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中国勢が次に目を付けたのはトルコ! いまトルコはEV激戦区になっていた

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中国勢が次に目を付けたのはトルコ! いまトルコはEV激戦区になっていた

トルコはEUと関税協定を結んでいる

欧州の玄関口として近年注目を集めているトルコ市場でEV販売が急加速中です。とくに中国勢がシェアを大きく伸ばしながら、現地工場を建設して関税を回避しようとする動きも確認されています。

中国にはBYD以外にも多数のEVメーカーが存在! BYDの成功で日本に押し寄せることはある?

まず、今回取り上げていきたいトルコ市場は、人口約8750万人、国土面積は78.35平方キロメートルと、日本の2倍強の国土を有します。また、2023年シーズンにおける自動車販売台数はおよそ129万台と世界第14位であり、ロシアやオーストラリアと同等という規模感です。自動車生産も年間で147万台と、フランスと同等の生産規模であり、自動車産業が国の主力産業のひとつにもなっています。

このトルコについて重要なポイントは、欧州連合には加盟していないにもかかわらず、EUとトルコは独自の関税協定を結んでおり関税がかからないという点です。さらに、20カ国以上の国と自由貿易協定も締結しています。また、欧州各国と比較しても人件費が比較的安いことから、欧州の自動車メーカーが生産コストを下げるために、関税のかからないトルコを自動車工場に選んでいます。トルコは海に面していることから、自動車の輸出という観点でも地理的に強みを持っています。

なによりもエルドアン大統領はEVに注力する方針をかねてより示しており、実際に国策として自国の自動車メーカーを立ち上げに成功。Toggと名付けられたEVメーカーはすでにEVを発売中であり、トルコ国内で人気を博しています。

そして、トルコに目をつけたのが中国勢の存在です。まず、BYDがBEVとPHEVの生産工場などの設立のために10億ドルを投資中です。年間生産能力は15万台であり、おもに欧州市場向けに出荷されます。さらにCheryも黒海の面するサムスンにおいて、年産15万台となるEV生産工場の建設を正式に発表しています。

このようにして、Toggをはじめとする国内のEVメーカーやサプライチェーンに投資しながら、さらに国内に中国勢などの生産工場を誘致することによって、欧州向けのEV生産拠点の構築を目指そうとしているのです。

それでは、このトルコ市場最新のEV販売動向や人気のEVランキングを俯瞰しましょう。まず3月単体のBEVの販売台数は約1万2800台と、前年同月比+113.5%であり、急速にBEVシフトが進んでいる様子が見て取れます。

次に新車販売全体に占めるBEVの販売シェア率は10.94%と、前年同月の5.46%と比較しても倍増。すでにトルコ国内で販売されている10台に1台以上がBEVに置き換わっているとイメージしてみれば、驚きのペースであるとイメージできるはずです。

さらに、PHEVとEREVの販売台数も着実に上昇しており、3月単体では3600台以上が売れています。よって、PHEVも含めたNEVシェア率は史上最高水準となる14.25%に到達。2025年末にNEVシェア率25%達成にも期待可能でしょう。

ちなみにこのグラフは、日本やオーストラリアと比較してどれほどBEVシフトが進んでいるのかを比較したものです。この通りトルコは日本市場と比較すると、10倍以上という圧倒的な差をつけてEVシフトを進めている様子が確認できます。

もっとも売れているEVはトルコ車の「T10X」

それでは、このトルコ国内で人気のEVをランキング形式で確認していきたいと思います。このグラフは2025年のQ1における主要なBEVの販売台数を示したものです。

トップはトルコのEVメーカーToggのミッドサイズSUV「T10X」です。T10Xは全長4599mm、全幅1886mm、全高1676mm、そしてホイールベースが2890mmというミッドサイズSUVセグメントに該当します。52.4kWhと88.5kWhという2種類のバッテリー容量をラインアップし、ロングレンジRWDグレードの場合、欧州WLTCモードで523kmに達します。充電性能は最大180kWに対応しており、SOC80%まで30分以内で充電可能です。

エントリーグレードでも144万トルコリラ、日本円でおよそ553万円からのスタートとプレミアム価格帯ですが、モデルYの倍売れているというヒット具合です。さらに、Toggは2車種目のセダンセグメント「T10F」も発表済みです。

またその後には、MINI Countryman、Kia EV3、KGモビリティTorres、BYD ATTO 3、BMW iX1、BYD SEAL U、ボルボEX40、BYDドルフィンと続いていくことから、やはりコストを抑えたコンパクトSUVやコンパクトモデルの需要が高い様子が見て取れます。そして、トップ10のうち3車種がBYD製であるという点も注目するべき動向かと思います。

次に、BEVに限らないすべての自動車の販売台数ランキングを見てみると、トップからルノー・クリオ、トヨタ・カローラ、ルノー・メガーヌセダン、フィアット・エゲアセダン、そしてTogg T10Xとなっています。人気車種トップ4はすべてコンパクトセグメントの車種であり、やはり安価で小型なクルマが人気です。そして、これらの人気の内燃機関車と肩を並べるのがTogg T10Xなのです。

また、BYDのPHEVであるSEAL U DM-iの存在も気になります。やはりBEVだと充電インフラへの懸念がつきまとうものの、PHEVはさらに安価、かつ燃費性能で優れていることもあり、順調に販売台数が増加中です。

いずれにしても、このトルコ市場において人気であるコンパクトカーセグメントでEVを投入できるかこそが、さらなるEVシェアの拡大のためには不可欠なわけです。とくにBYDシーガルがどれほどの値段設定で発売されるのか。BYDのトルコ生産工場は2026年中の操業スタートであり、さらに欧州寄りに位置する東ヨーロッパのハンガリーにも車両生産工場を建設中です。このトルコやハンガリーで生産されるであろうシーガルのコスト競争力にはもっとも注目するべきかと感じます。

最後に、このグラフは自動車ブランド別の累計販売台数を示したものです。トップはルノー、その後にトヨタ、フィアット、フォルクスワーゲン、ヒョンデ、プジョーが接戦を演じています。そして、第9位にランクインしてきているのがBYDです。BYDは3月単体で2870台を発売。現地生産工場の稼働がスタートしてから、どれほどの販売台数を達成することができるのか、競合メーカーが戦々恐々するのも無理はないでしょう。

いずれにしても、BYDを筆頭として、さらに現地工場を建設するCheryなども含めて、中国勢が2025年シーズンにどれほど販売規模を伸ばしてくるのか。さらに国産メーカーとして急速にプレゼンスを高めてきているToggを含めて、既存の欧州メーカーやトヨタに対する中国勢と現地メーカーという三つ巴の戦いには俄然目が離せません。

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みんなのコメント

22件
  • とみやす
    果たしてトルコでどこまでEVが普及するのかは疑問だけど、新規参入が相次ぐプチブームという感じでしょうか?まあ内燃機関車で先進国の大手メーカーに追いつくのは至難ですからね。欧州では今大ブレーキなので同じ轍を踏む恐れも!
  • fxnhe501
    トルコはいろんなメーカーの工場が集中する、一大自動車生産拠点。乗用車ではトファースやオートサンと言ったメーカーが知られていたが、今はどちらもステランティスやフォードの工場になっている。Toggはトルコ独自の国産車を造るために立ち上げられた国策会社だ。

    要はタイやインドなどのようにこれからが伸び盛りの市場。そんなところがギリギリヨーロッパ圏の中にあったのが奇蹟なのである。そりゃ中国企業だって押しかけるよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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