ドイツの伝説的なコーチビルダーが製作した2ドアオープンSUV
先日、RMサザビーズのオンライン・オークションで、目を疑うような車両に出合いました。1995年式のランドローバー「レンジローバー」なのですが、カタログモデルには存在しない2ドアのオープンカー仕様だったのです!
【画像】「えっ…!」世界に1台だけ!? これがブルネイ国王が特注した「レンジローバー コンバーチブル クーペ」です(18枚)
最初は、アメリカのエンスージアストが好む単純な“ルーフカット”モデルかと思いきや、車両の紹介欄に「スタイリング・ガレージのハーンが手がけた」という興味深い一文を発見しました。
スタイリング・ガレージ(SGS)は、ドイツのハンブルク近郊レリンゲンに拠点を置いていた伝説的なコーチビルダー兼チューナーです。
1979年にペーター・エンゲルと造船技師出身のクリスチャン・ハーンによって設立されましたが、エンゲルは早期に離脱し、ハーンが事業を牽引しました。
当初は、ハンブルク郊外のピンネベルクにある小さな修理工場でしたが、ハーンが数台のメルセデスをリムジンに改造し始めたことから、運命が変わります。
事業は急速に成長し、1981年にはアブダビのハマド・ビン・ハムダン・アル・ナヒヤンの結婚式用に、虹のあらゆる色に塗装された「レインボー・シーク」ことメルセデス・ベンツ「Sクラス」を40台、リムジンに改造する大型契約を獲得しました。
SGSの顧客には、実に豪華な顔ぶれが並んでいました。中東の王族が半数以上を占め、残りはアメリカのセレブリティや日本のいわゆるバブル紳士、そして、アフリカ各地の指導者たちで構成されていました。あのサダム・フセインのためにアストンマーティン「ラゴンダ」を改造したという逸話まであります。
しかし、同社の栄光は長く続きませんでした。1986年に、150万ドイツマルク(当時のレードで約1億1625万円)の負債を抱えて破産。米ドル安によるドイツ製品の競争力低下、サウジアラビアの改造車輸入制限法、競合他社の増加などが重なった結果、といわれています。
それでもハーンはあきらめませんでした。1987年にはデザイン&テクニックを設立し、メルセデス・ベンツ車の改造と自動車メーカーからの受託業務を継続。ときには、SGSブランドも使用していました。
デザイン&テクニックは2007年まで営業を続け、現在ハーンはSGS Styling Garage Service UGという1980年代のカスタムカー修復業を営んでいます。そこでは、1980年代のSGS、AMG、ゲンバラ、ケーニッヒ・スペシャル、トラスコの車両などを手がけているそうです。
●超富裕層のオリジナル志向と職人ワザが生んだ奇跡の1台
話を「レンジローバー コンバーチブル クーペ」に戻しましょう。
RMサザビーズのオンライン・オークションに登場したワンオフ車両のベースとなったのは、アメリカ市場向け・標準ホイールベース仕様のP38A型「レンジローバー 4.0SE」です。SGSが多数の部品を再設計し、見事なコンバーチブルクーペに変身させました。
ルーフにはソフトトップを採用。2ドア化のためにフロントドアは数インチ延長され、オープンカーらしくサイドウインドウはフレームレスに変更されています。
特に注目すべきはリア周りの処理。テールゲートを備えたベースモデルと異なるデザインに仕立てられています。
内外装ともまるでメーカー純正のカタログモデルと見紛うほどの完成度で、相当な費用と技術が投入されたことがうかがえます。
この特別な「レンジローバー」を発注したのは、自動車愛好家として世界的に有名なブルネイのハサナル・ボルキア国王です。同国王はSGSに多数のメルセデス・ベンツを発注していた常連客でした。
1995年の製作時点では、デザイン&テクニックとして請け負ったと考えられます。国王にとって「アメリカで乗り回す『レンジローバー』なら、コンバーチブルクーペが理想的」だったのでしょう。カリフォルニアの青空の下を駆け抜ける姿を想像していたのかもしれません。
1995年6月、当該車両はビバリーヒルズホテルの地下にあるボルキア王室専用のガレージに納車されました。その後、1999年にカリフォルニアの個人オーナーが購入し、現在までの走行距離は1万6400マイル(約2万6393km)未満という極上のコンディションを保っています。
今回のオークションにおける予想落札価格は10万ドル~12万5000ドル(約1140万円~1800万円)でしたが、最終的には11万5500ドル(約1663万円)で落札されました。
30年前の車両としては決して安くはありませんが、「レンジローバー コンバーチブル クーペ」は超富裕層のオリジナル志向と職人ワザが生み出した奇跡の産物です。
ブルネイ国王の美意識と希少性への欲求が詰まった世界唯一の作品と考えれば、むしろお手頃だったといえるでしょう。(古賀貴司(自動車王国))
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